農業協同組合新聞 JACOM
   

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シリーズ 「個配事業」の創造と21世紀的可能性−東京マイコープ
第7回 最終回
「一層の改革で展望を」

今野 聰 (財)協同組合経営研究所 元研究員


◆大会論議は「信頼回復」から

本年6月開催の総代会 増田レイ理事長のあいさつ
本年6月開催の総代会 増田レイ理事長のあいさつ

 東京マイコープの第10回総代会は今年6月都内飯田橋で開かれた。そこでは例年の如く活発な論議が交わされた。特に今年は特異な経過があった。さる3月24日、総代の請求により、臨時総代会が開催されたことだった。そこで(1)一般医薬品(大衆薬)の斡旋販売を速やかに中止すること、(2)産直肉100%の偽り発生問題について組合員参加の調査委員会を設置して、徹底的に真相を明らかにする。以上を賛成多数で可決したのだった。
 それを踏まえ、4月上〜中旬にかけて、2003年度第1回総代会議(JA全農でいう地区別総代会議)が開かれた。ここでは、年次総代会議案書(第2次案)の討論が中心であった。討論は、実に興味深かかった。例えば方針書に外国語が多すぎるという批判等、はっとする発言だ。焦点の産直牛肉問題は「組合員参加の調査委員会の立ち上げを早急にすすめる」と理事会決定が報告された。それがそっくり第10回総代会にも持ち越された感じだった。ここではこれ以上深入りしない。基調は「組合員とともに食の安全運動をすすめ、産直事業の再構築と信頼回復にとりくみます」とあるからだ。

◆東京地区激戦から越えた視点で

 本題は原案通り決議された総括と新年度方針の内側である。この方針策定の責任者、渡邊進一郎専務理事に、総代会前に聴いていたが、その要旨が興味深い。
・ 新たなビジョン作りは、今年度総代会に、案のまま発表する予定で、更に検討する。
・ 生協間で競争しあいながら、生協全体でシェアをあげることになろう。2010年辺りまでは都内で新たな連帯合併はないのではないか。
・ 事業区域の県域制限の撤廃を視野に入れることになろう。道州制の動きもあることだし。
市町村の合併など急激に進んでいるから。
・ 男女共同参画社会と生協の経営は関係ある。ようやっと、経営と所有の分離時代になり、
女性理事長普通の時代という趨勢ではないか。
・コープかながわ、コープこうべのノウハウからはこれから多く学んでいきたい。ただし首都圏と関西・近畿圏の生協運動の違いがある。そこは注意したい。
・ かつて1996年、友誼生協間で都内単協連帯が実現したとき、下馬生協の店舗事業込みでの合併を決断した。ここから次の時代が始まったことを忘れない。
・ 首都圏の他事業連合(コープネット、ユーコープ)には店舗事業が大きくある。一方我々の改革店舗1号店は、2003年度中に実現したい。スクラップアンドビルドであっても、ペガサス方式(チェーンストア理論)ではない。だから地域密着は当然の方針だ。個配組合員が利用することも可能にしたい。
・ 国産の自給率拡大より、自給力拡大こそ中心にすべきだ。アジアとの併行連帯を求め、経済圏別自立も必要である。中国とは対等関係が最も良い。キューバと事業連合規模で連帯しているが、やや遠い。でも国際産直の意味は常に考えるべきことだろう。

◆冒険と挑戦のDNAで

・ 結局、日本型市民社会の形成に参加することと、アジア全体を見る姿勢を2つとも大事にしたい。
以上である。いずれ大いに論ずべきことだ。
 他に個別事業課題で例えば、(1)無店舗注文案内のライフステージ別3媒体([YUMYUM(ヤムヤム)!!]、[マイキッチン]、[Kinari(キナリ)])のあり方、(2)新しいビジョン自体の持つ意味、(3)農業政策と産直が持つ積極的な展望、(4)福祉事業など。
 かつて1980年代、東京マイコープの前身は「原型からの産直」と言った。生産を人より大事にした。またあらゆる意味で「惣菜」型加工品は避けられた。今日個配商品メニューはバラエティ化した。そっくり店舗商品化が可能なものも多い。全国農協との協同組合間提携も多く進んだ。新潟県JAささかみ、JAちばみどり(海上)などだ。だからこそ今後に注目したい。ここしばらく東京地区が全国の台風の目になり、下山氏がいう「首都圏コープのDNAは冒険と挑戦」という大胆不敵な意味において。 (2003.11.12)



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