農業協同組合新聞 JACOM
   

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シリーズ・生協21世紀の挑戦

デポー事業で先駆性を発揮
生活クラブ生協・神奈川(下)

今野 聰 (財)協同組合経営研究所元研究員
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デポー綱島・正面
デポー綱島・正面
デポー綱島・店内
デポー綱島・店内

 生活クラブ生協・神奈川の2003年度供給実績を見る。班・個配事業172億円、デポー事業43億円、合計214億円(前年比100.6%)である。全国の地域生協の中では中規模と言って良い。
 事業のうち「デポー事業」が言葉からして聞き慣れない。1982年度採用というから年季が経つ。この年10月すすき野で第1号店がオープンした。すでにコンビニは華々しく、かながわ生協のKM店(小型店)も出店ラッシュだった。
 デポー事業は80年代後半、出店難、マネージメント不足などで、経営で苦労した。それを克服し、やっと91年度、独立生協法人コミュニテイ生協となった。その後も生協全体の停滞期に当たるが、昨年12月、事業が上昇気流に乗るなか、共同購入事業本体と合併した。
 さて、この業態を敢えて取り出して、論ずるのはやや難しい。デポーとはフランス語で「荷さばき所」。「店舗ではなく、組合員が使いこなす生活用具であり、地域密着型の共同購入方式」と説明される。半径700メートル位の小範囲で(その後1kmに変更)、現在県内17カ所がある。1カ所当たり年供給高が2億円程度。
 取材したデポーつなしま(計画:組合員914人、供給2.3億円)の例はこうだ。東横線綱島駅から5分ほどで、隣がイトーヨーカ堂店舗。
 周辺は店舗群だから繁華街である。普通のコンビニと店規模は変わりない。借り店舗で家賃高だと店責任者がいう。だから2200万円が月損益分岐点になる。
 今年7月リニューアル目標で、冷蔵庫などを新設する計画だという。明らかに生鮮強化路線である。入り口から左回りに地場野菜、牛乳、肉類。正面奥に鮮魚。対面がイベント空間。囲んで乾物、化粧品。右に廻って米、米加工品。
 奥の窓越しに組合員が会議している様子が見える。すべて組合員のワーカーズコレクティブ(ワーコレ。パートとは違う組合員の自主運営・自主管理労働)が働き方(ワーク)を切り盛りする。陳列などは地域変化があるが、県内全てワーコレのマネージであり、ワークである。ここにポイントがある。だからコープかながわの小型店ともまるで違う。どっちが良いか、今日コンビニ店飽和時代だから、大いに注目されるところだ。

◆分権は組合員参加そのもの

 生協全体に触れよう。何しろ、歴史的に神戸市と並んで生協運動先進地である神奈川県のことだ。ここは小売り流通でも最大の激戦地である。県央から津久井郡まで出店競争だ。
 2003年12月スタートの新地域生協設立戦略を、井上雅喜専務から聞いた。すべてはすでに決まった路線という感じなのだ。つまり(1)新しい5つの地域法人生協は、6万組合員の地域密着イメージにピッタリであり、(2)三角錐体(組合員数・供給高・出資金)としての31年間のなかで、今の辛さを克服できるのは、組合員の主権・分権の徹底以外にはないという。
 JR淵野辺駅前から10分ぐらいのところにある相模センター。ここの保育所のことも聞く。自前センターの3階全スペースを使って設置した意味は、正に地域とつながる力の発揮だった。それをまだ活かしきっていないという。少子化問題が国民的課題になった今、最大の目玉になりそうである。だが打開策も複雑なようだ。
 別の日、岸田仁常務に主として地産地消方式として、地場野菜販売事業をめぐって聞いた。この事業は、1975年からスタートしたから相当古い。当時、当然デポー事業はなかった。
 今や県下全域に17のデポーがある。しかも野菜は、豚肉・米など主要な「消費材」と違い、播種から収穫まで生協で言う「組合員参加型」そのものである。 
 現在はこうだ。全農首都圏青果センターと提携した連合会の農産物事業部分と、県内の公設市場の活用、それに生産者直接契約を応用しなければならない。県産野菜として、既存産地以外に、あらたな野菜産地との提携も課題である。
 県内産地提携は意欲的である。昨年12月のさがみ生協設立総会でも地元農協との連携について発言があった。生活クラブ生協・東京では、今年10月オープンを目指し、第1号デポーが登場するという。一方神奈川県は、農地が浸蝕される現実だが、的を絞れば、農協との協同が可能のはずだ。
 今回はふれる余裕がないが、この生協には、県内生活者ネット運動、福祉クラブ生協活動などがある。相互浸透が図られれば、21世紀の可能性は深まる。 (2004.7.13)


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