農業協同組合新聞 JACOM
   

シリーズ 全農マークは信頼の証

第2回 (株)フレッセイ
「全農安心システム」を核に「安全」を目に見える形にする
子どもたちが「パクパク食べても安心な肉」を売りたい

 消費の最前線にいる食品スーパーなどの商品政策担当者に、現在の消費動向とそれに対する商品政策、全農商品の位置づけ、これから国内生産者に期待することなどを取材するシリーズの第2回は、グループ総年商が3兆4288億円とイオンやイトーヨーカー堂に比肩する規模をもつCGCグループの中核企業として、群馬県で地域密着型食品スーパーを展開し、着実に業績を伸ばしている(株)フレッセイに、食肉の商品政策を聞いた。

◆見えないものを見えるように

堀川博史 商品一部畜産・惣菜チーフマネジャー
堀川博史
商品一部畜産・惣菜チーフマネジャー

 これからの食品スーパーの課題は「安全をどう見える形にするか。そこにコストをかける時代」だと、(株)フレッセイで畜産・惣菜を担当する堀川博史チーフマネジャー。例えば、中国製の洋服は、どんな生地でどのような縫製をしたものかは日本の消費者がみればすべて分かる。だが、人の口に入る食品の場合、味や価格は分かるが、衛生状態とか残留農薬の有無は目に見えない。消費者の安全への関心は高まっているが、「この食品は安全です」といっても、それが「見えないのでなかなかお金を出しにくい」。だが「安全でない方がいい」という消費者はいない。だから「見えないものを見える形にすれば支持してもらえるようになる」。そのためには、2割くらいの範囲なら価格が高くても許容範囲といえるが、「むしろ2割までの範囲で何ができるのか。そこまで目いっぱいやりたい」という。
 そうした考えから導入されたのが、7月に前橋にオープンしたクラシード若宮店で販売されている「全農安心システム」認証の「宗谷黒牛」だ。宗谷黒牛は頭数に限りがあるため、フレッセイの全店43店舗で展開することはできないが、同じ「全農安心システム」認証の牛肉が隣県の栃木県にあり、と場も埼玉県なので「一気に全店に拡大していきたい」という。

◆地域活性化をめざす若宮店

高級感あふれる若宮店
 高級感あふれる若宮店。平台も見やすく取りやすいように傾斜している。
 (株)フレッセイは、昭和33年(1958年)に北関東で初めてスーパーマーケットをオープンするなど地元に密着した事業を展開する食品スーパーだ。群馬県内では、地元スーパーはもちろん最近は食料品分野にも進出するホームセンターなど、低価格路線を推進する競合店が増え厳しい環境にある。しかし、▽お客様ニーズに対応した、地域に密着した店舗ネットワークの確立▽生鮮部門を中心とした、鮮度・味・健康・価格・環境にこだわった「優良商品」の販売▽お客様の立場に立ったサービスを提供できるよう従業員の意識改革を図るTQM活動の推進を基本的なコンセプトに「豊かな地域社会づくりに貢献できる生活提案型の店舗や商品、サービスの提供」(植木敏夫会長)をすることで、顧客の支持を得て、着実に業績を伸ばしている。
 「宗谷黒牛」を販売しているクラシード若宮店は、店内は女性の目線と品物を取りやすく配慮された低めの棚や広い通路で圧迫感がなく、床まで茶系に統一され落ち着いた雰囲気で、高級食料店という感じだ。また、平台も四方から中央に向かって傾斜を持たせ、商品が見やすく取りやすくなっているのも珍しい。
 若宮店の立地は、前橋の旧市街の一番外側にあたり、周囲には県立図書館や県民会館、FM放送局があるというどちらかといえば文教地域といえる。前橋も多くの地方都市と同様に、郊外に大型店が進出し中心街は廃れてきているといえる。「かつては中心街はデパートや商店街だった。いまはディスカウントブームでそういうお店が少なくなった。しかし、そういうものを求めているお客様はいるはずだが、いまはわざわざ東京まで行っている。それなら、地元密着型スーパーであるわれわれがそういう店を出して、お客様の要望に応え、地域を活性化しようではないか」というのが、出店の基本的な考え方だという。

◆自分の子どもに食べさせられるものを生産して欲しい

「宗谷黒牛」(全農安心システム)を核に品揃えされる若宮店食肉売り場
 「宗谷黒牛」(全農安心システム)を核に品揃えされる若宮店食肉売り場

 フレッセイは群馬県内40店舗、栃木県2店舗、埼玉県1店舗を展開しているが、食品スーパーである以上「より良い商品を、より安く提供する」ことが求められる。そして「より良い」と「より安く」のどちらにウェイトをおくのか、そのバランスをどうとるのか、そこにその企業の姿勢が表れるが、フレッセイは「より良い」にウェイトをおいているといえる。
 「より良い商品」とは何か。堀川さんは「食品の安全性」であり、「安全とは健康」だと考える。「今日明日の健康を左右するのは、微生物や菌など衛生面です。食べ続けるときの健康は、薬や残留農薬の問題です。そういう意味で本当に健康に良い食肉を販売すること」だと。それを実現するために生産者は、ワクチン以外は抗生物質や合成抗菌剤などを使わない「無薬」飼育をし「自分の子どもにたくさん食べさせられる」ものをつくって欲しいという。もう一つは、と場から小売店に来るまでの衛生管理の徹底だ。堀川さんは、食肉の格付けが歩留等級や肉質等級しかなく、安全等級や衛生度規格がないこと、と場やカット場、メーカーなどの一つひとつがブラックボックスになっていて小売や消費者には見えないのはおかしいと考えている。
 そう考えるようになったのは、あるとき自動販売機で缶ジュースを買って飲んだときに、その缶に製造場所や製造日が年月日から何時何分まで記載されているのを見て、「店舗で数万〜数十万円も出して仕入れている牛肉や豚肉は、どこの誰がいつ生産したのかという情報が、お店や販売担当者にないままに販売されている。人間が生きていくための基本である食品がこれでいいのだろうか」と思ったこと。そして子どもが生まれて、奥さんの食への関心が高まるのを見ていて「地域密着型スーパーとして、地域の子どもたちがパクパク食べて安心な肉を売りたい」と思ったことだ。

◆「安心」は結果としてお客様からいただく言葉

ゆったりと買い物ができる広々とした店内。
ゆったりと買い物ができる広々とした店内。

 そして「自信をもって、安全で美味しい肉ですと売るためには、トレーサビリティが必要だと考えました」という。それはBSE発生以前だったので、理解してくれる人はごく一部の人だけだった。堀川さんが考えるトレーサビリティは「生産者のモノづくりに賛同して、こういう価格で販売したいといい、生産者もどういう考えの小売でどんな形で販売されているのかを知る。生産者と小売の向く方向が同じでないといけない。その情報の相互間の流れだと思う。それが生産者と小売の信頼関係になる」というものだ。
 そのことを実現していることと、「小売がいくら“この肉は安全です”といっても、セールストークと思われてしまう」ので第3者の認証が必要だということから「全農安心システム」を導入したのだという。だが、全農安心システムだけですべての食肉を品揃えすることは難しい。これを核にしながら、冒頭にも書いたように「安全が見えるかどうか」で選択する。「同じ品質で国産と輸入があれば、国産を選ぶ」が、国産だからとか、群馬県産ということだけでは選ばない。堀川さんが考えるような安全性の根拠も示さず「国産だから安全安心」とか「地元産だから美味しい」という安易なイメージでは判断しないということだ。
 「安全・安心」が四文字熟語のようにいわれることにも違和感があるという。「私たちは食品を販売している企業ですから、本当に安全なものを正しく正直に販売し続けることに徹することです。“安心”はその結果としてお客様からいただく言葉で、小売やメーカーがいうことではない」からだ。
 最近は、群馬県内にも堀川さんがいうような「無薬」で飼育する若い生産者が出てきて「地元で売りたい」と相談に来るという。そうしたものを「安心飼育」と名づけて売っていると話すときの堀川さんの顔は本当に嬉しそうだ。
 「全農安心システム」を核に、安全性を基本にした品揃えで食肉売り場を充実させていくフレッセイは、確実に地元の消費者の支持を広げていくだろう。

(2004.10.14)

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