農業協同組合新聞 JACOM
   

農業の新世紀を創る担い手たち
現地ルポ―輝く明日へ 個性豊かな農に生きる人々
JAが「司令塔」となった担い手づくりが最大課題
――JAグループの担い手育成対策――
冨士重夫 JA全中農政部長


1.「担い手」議論の見事な取りまとめ

ふじ しげお氏
ふじ しげお 
昭和28年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。52年全国農業協同組合中央会入会、平成5年農政部畜産園芸課長、10年農業基本対策部次長、13年食料農業対策部長、15年農政部長、現在に至る。
 「自信と誇りに満ちた活力ある社会を築き上げるという戦略の下、国民の信頼を得て農業の発展を図っていくためには勇気と誇りを持って、持続的に農業を行い得る『担い手』を育成・確保することが急務。
 その際、農村の現場に大きな混乱をもたらすことがないよう、たとえ小規模の農家であっても、いわゆる排除の論理ではなく、あらゆる農家の意欲と活力を引き出す形で担い手づくりを進めていくことが重要であるとの基本認識。」
 「本PTとしては、具体的にどのような担い手を対象にすれば望ましい農業構造の実現ができるのかという観点から、引き続き議論することとする。
 また、新たな米政策の中で、地域水田農業ビジョンの推進を通じ、担い手の育成に努力しているところであるが、本PTとしては、小規模な農家は政策の対象外となり、切り捨てられるという不安の声があるが、これらの農家すべてに対して、集落営農に参画することにより担い手を目指すことについて門戸を開けておくこと、その場合、現在実施中の米政策改革の実施状況を踏まえ、適切な要件を定めることとするとの考え方の下に、農林水産省及び農業団体に対して、農地制度の見直しや運用面での改善を行い、担い手の育成にさらに徹底的に取り組むべきことを要請する。」
 これが平成16年12月8日に取りまとめられた自民党経営対策PT(プロジェクトチーム)の途中経過報告の核心部分の文章である。まさに現段階での議論状況を見据え、的確な判断をくだした見事なとりまとめである。
 農水省は食料・農業・農村政策審議会の企画部会や、自民党農業基本政策小委員会などの議論において、新たな品目横断的経営所得安定対策の対象経営は、認定農業者である個人・法人と特定農業団体に限定するとし、さらにこのうえに経営規模要件を一律に課し、その水準は米政策における担い手経営安定対策の要件である都府県4ha、北海道10ha、集落営農20haを上回るものが適当であり、平成27年には都府県の2年3作経営で14ha、集落営農で40haを展望できる水準でなければならないといった基本的考え方に固執し、繰り返し、繰り返し主張していた。
 16年度からスタートした米の担い手経営安定対策の加入者は個別経営で約3万、集落営農で約200しかない実態や、田のある集落12万のうち水田面積10ha未満の集落が全体の約43%を占め、5万1000集落もある現実からみても、農水省の主張する考え方は実態をあえて無視し、何が何でも対象者を絞り込まなければならないという意図しか感じられないものである。
地域での徹底した担い手づくり対策が今年からの課題だ
地域での徹底した担い手づくり対策が
今年からの課題だ
 JAグループは、対象となる担い手は、一律の規模要件を設定するのではなく、「意欲ある者」や「育成すべき者」「法人化前の集落営農」や「受託組織」へ参画する者など、地域の実態に即した担い手としていく要件にすべきとの基本的考え方で主張を展開した。
 農水省が、担い手や経営所得安定対策は、産業政策としての農業という考え方で割り切る一方、農業・農村の多面的機能に着目した、新たな農村地域政策の構築が必要と言いながらいっこうに、その農村地域政策の具体的な内容を明示しないで、逃げ回り、農政転換の政策の全体像を見せない中で、この担い手要件だけに争点を絞り、ここだけ先にピン止めしておこうとする意図的な悪い思惑を持っているのでないかと感じ、JAグループは、現場実態に即した多様かつ幅広い担い手、地域が特定した担い手であるべきと、繰り返し、繰り返し主張し、反論してきた。
 そして冒頭にあるような自民党のとりまとめである。両者の言い分や意図を真摯に受け止め、現場が今、何に取り組み、どうなっているのかを見据え、政策に責任を持つ与党としての、現局面における見事な取りまとめであるので、冒頭にあえて核心部分を出したわけである。

2.担い手づくり取り組み方針

集落営農の組織化と農地利用集積が課題
集落営農の組織化と農地利用集積が課題
 食料・農業・農村基本計画の新たな策定に向け、JAグループとしての考え方をまとめた政策提案を決定した平成16年11月の全中理事会で、併せて、セットで政府や政党に要望するだけでなく、将来を考え、自ら取り組まなければならない事も決定した。それがJAグループ担い手対策の取り組み方針である。
 担い手の高齢化と減少はJAグループにとって極めて深刻な事態であり、特に水田農業における担い手づくりは喫緊の課題である。
 JAグループは平成16年5月に「地域水田農業ビジョン実践強化全国運動方針」を設定し、全力で取り組みをすすめているところであるが、今後、農地の利用集積の推進や、地域実態に即した担い手づくり対策の取り組みを、より一層推進して行くことが急務である。
 認定農業者の数は18万、うち稲作中心が5万5000程度。農業生産法人の数は約7000、うち米麦主体の法人は1500程度。約1万集落で集落営農の取り組みが行なわれているが、うち協業経営を行っていると見られる集落は約1700程度である。こうした担い手の現状をふまえ、JA自らが地域農業の司令塔として担い手づくりに取り組まなければ、組織の将来はないという危機意識が必要である。

◆担い手対策取り組み方針ポイントは7点。

法人化の支援や経営指導もポイント
法人化の支援や経営指導もポイント

(1)担い手づくり戦略の策定
 JAは育成すべき担い手の姿や、育成・支援の体制、担い手の組織化、JAの事業対応の具体策などに関する「担い手づくり戦略」を策定し、理事会で決定するなどJAとしての組織決定をはかる。
(2)担い手支援の体制整備
 JAにおける担い手専任担当部署の設置など体制を強化するとともに、担い手部会や協議会を設置し、担い手の組織化をすすめる。また行政、普及センター等の関係機関と連携して、担い手支援、農地対策における一体的な体制の確立をはかる。
(3)担い手への農地対策の強化
 JAは農地保有合理化事業や農作業受委託の調整に取り組み、水田営農実践組合等の合意形成に基づいて農地の利用調整をすすめる。
(4)集落営農の組織化
 JAは集落営農の組織化に向けた話し合いや運営管理において、農用地利用改善団体や特定農業法人・団体の制度も活用しながら支援を行なう。
(5)法人化支援対策
 JAは経営試算、税務対応、法人化手続きなどの法人化プロセスへの支援を行なう。また、担い手不在地域などにおけるJA出資法人づくりや、既存法人へのJAの出資などに積極的に取り組む。
(6)担い手の経営管理指導
 担い手への経営・税務管理や担い手の「メインバンク」として、JA・県段階での経営管理や資金対応をはかる体制づくりをすすめる。また経営継承対策、負債対策についても県・全国段階の再生スキームのもとで連携して取り組む。
(7)担い手への事業対応
 JAグループは販売・購買、利用事業や信用供与、資金対応などにおける担い手への弾力的な事業対応をすすめる。事業ごとの具体策についてはJAの「担い手づくり戦略」など、各段階で明確化して徹底をはかる。

3.中央会として指導の「基本方針」策定

JA段階での「担い手づくり戦略」の策定が基本
JA段階での「担い手づくり戦略」の策定が基本
 平成16年6月に可決・成立した改正農協法では、中央会相互間の連携の推進に資するため、全中が組合の組織、事業及び経営の指導に関する「基本方針」を定め、都道府県中央会と全中が共通の目的、方向をもって組合や連合会を指導し、一致して取り組みをすすめることができるよう、措置された。
 初めての「基本方針」は17年3月の全中総会で決定することになっているが、三本柱を考え検討をすすめている。一つは「経済事業改革」二つは「JA経営の改善対策」そして三つは「水田農業における担い手づくり対策」である。
 担い手基本方針は、県中・全中の共通認識のうえに立って、JAグループの全国運動の徹底した取り組みの決意を組織の内外に打ち出すとともに、その実効を期して取り組むものである。
 指導に関する「基本的方向」としては、地域・集落等が自らの課題として農業・農村の将来像を描くことを基本に、集落営農等を含む担い手づくりや農地利用について、合意形成をはかる地域の主体的な取り組みを促進するとともに、これを支える行政などの関係機関と連携した下で、担い手づくり対策とJAによる事業支援対策の強化に取り組むとする。
 「指導に関する実施方法」は、担い手取り組み方針の7つのポイントの内容を盛り込むことにしている。
 米政策改革の推進と徹底した地域における担い手づくり対策は、これからの農政転換における新しい品目横断的経営所得対策の対象要件を設定する場合の、宿題にもなっている。
 全中は平成17年1月早々にも、こうした担い手づくり対策の担当部署を明確にする組織機構の改定を実施する方向で検討をすすめている。
 そして3月の全中総会での担い手対策の「基本方針」決定を経て、都道府県中央会と一体となって徹底した取り組みを展開して行くことになる。まさに組織の将来の命運をかけて取り組む重要な課題である。

(2005.1.13)

社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。