農業協同組合新聞 JACOM
   

シリーズ JA米事業改革の現場から06年版(4)

環境にやさしい農業目指し『農薬節減米』を展開
JAの販売力を信頼し大規模生産者なども結集

現地レポート JAみな穂(富山県)


 JAみな穂(富山県)は今年3月1日、JAあさひ野(朝日町)とJA入善町が合併して誕生した。正組合員3719人、准組合員数2158人(17年度末現在)の規模。管内全域が黒部川の扇状地に位置し、ほとんどの農家が米専業で、古くから米づくりが盛んな土地柄だ。高品質で均一な米づくりをおこなうため、“土づくり”にも力を入れている。
 18年産のJA集荷分はすべてJA米であるが、栽培履歴等だけでなく誰が作ってどこに売れたかまで確認できる「全農安心システム米」にも取り組んでおり、将来的にはJA集荷分は全量「全農安心システム米」であることを目指し、卸や小売店の信頼をより一層勝ち取りたいと考えている。


高品質でバラツキのない米生産で消費者に安全・安心をアピール


◆旧JA単位で産地指定 生産量上回る注文で調整出庫

営農部 籠瀬茂春リーダー
営農部
籠瀬茂春リーダー

 管内の水田面積5080haのうち、18年産作付けは3600ha。作付けの95%は「コシヒカリ」で、他は「てんたかく」「新大正もち」などが作られている。JA集荷率は82%、自家消費が15%で、農家等からの直売やJA以外の集荷業者への売渡しは合わせて3%程度。JA集荷分は、加工米を除いて1万5770トンで、18年産はすべてJA米となった。
 JA集荷分の米は、地元の消費者に売る分を除いて全農県本部を通じた委託販売をおこなっている。地元では『つぶぞろい』『あいの風』のブランド名で、スーパーや小売店に並んでいる。しかし、このブランド名で売られるのはごく少量であり、地元の人にJAの活動や役割を理解してもらうことが主な狙いで、今のところ全国的な販売は考えていない。
 県本部には全国の卸から、「入善町のコシヒカリ」など旧JA単位での産地指定がある。近年は生産量を上回る注文があり、県本部で調整出荷をしなければならない状態だという。「管内の米は高品質で、品質にバラツキがないことが特徴です。起伏がほとんどなく、地形的な違いも少ないので同じ条件で米づくりができることが大きな要因だと思います」と、営農部販売施設部門の籠瀬茂春リーダーは消費者からJAみな穂の米が受け入れられている理由を推測する。管内の1等米比率は18年産で92%。JAでは95%を目指しているが、ここ数年やや目標を下回った数字が続いている。

「入善町のコシヒカリ」など旧JA単位で産地指定される
「入善町のコシヒカリ」など旧JA単位で産地指定される

◆『流水客土』で土壌改良し高品質の基礎つくる

JAみな穂・地図

 昭和50年代を中心に行われていた管内の土地改良事業で『流水客土』により土壌改良したことが、現在の高品質な米生産につながっている。
 具体的には管内のほぼ全域を占める黒部川扇状地は、水もちが悪く、多くの水が必要であった。その上、水温が低くイネの生育や稔りがよくなかった。土地改良事業で、冬の農閑期に上流の粘土質の赤土を水とともに水路に流し下流の水田に運び入れたことで、水もちをよくすると同時に水温も上げることができた。このことに加え、管内の農家のほとんどは米専門農家で、昔から米づくりをおこなっているので高い技術が全体的に確立されていたことなども、現在高品質な米が生産されている理由となっている。
 しかし、JAでは高品質な米生産をさらに継続するために、5年前から生産の基盤である“土づくり”にも力を入れている。集落単位で取り組むことが条件で、リン酸成分が混入された土壌改良材(「スーパー活源」「こめこめ大地」など)をほ場に投入した場合、10アールあたり200円をJAが助成している。年間5〜6集落で実施しており、最終的には全集落が実施する。
 また、環境に優しい農業を目指し農薬の使用回数を減らす取組みも積極的におこなっており、現在農薬成分数を50%以下にした『農薬節減米』を600haで栽培しており、今後さらに拡大を目指す。種籾の消毒についても、農薬を使用しない温湯消毒の実施を徹底している。この温湯消毒を育苗センターや担い手農家が実施する場合、1台約40万円の消毒器の購入についてその半分をJAが補助している。

◆JA米であり全農安心システム米であることが将来の標準

倉庫に積まれて出庫を待つ18年産米
倉庫に積まれて出庫を待つ18年産米

 JA米については、種子更新、履歴記帳などの3要件以外の要件は付け加えていない。しかし、安全・安心をさらに担保する取組みとしてJA米の一部を「全農安心システム米」として生産している。これは、米がいつどこに売られたのかなどまで追跡できることから、生産から販売までの全過程が明確になり、消費者に安心・安全をアピールできることが特徴だ。18年産では780トンと数量はまだわずかだが、将来的にはJA集荷分の全量がJA米でありさらに「全農安心システム米」としての販売を目指す。米づくりにこだわった産地の思いが伝わってくるようだ。

◆集落営農の法人化に1組織最高300万円助成

営農部に隣接しているJAみな穂営農センター
営農部に隣接しているJAみな穂営農センター

 管内には現在、50haを超える農地を集積しているような大規模な生産法人や担い手としての集落営農組織が17(入善町14、朝日町3)ある。また、入善町に限ってみると、認定農業者は84名(法人24)いる。一部の生産法人で契約栽培などに取り組んでいるところもあるが、JAの販売力を信頼して、一部契約栽培に取り組んでいる生産法人であってもJA出荷を実施している。一方、JAは全ての生産者がJAに結集することで販売力が発揮できるとの認識で、系統集荷、系統販売を今後も進める考えだ。
 19年から始まる経営所得安定対策については、大規模生産法人など以外は各集落で話し合いを進め集落営農を組織し、法人化を目指す考えだ。「ほとんどの生産者が米づくりのプロなので、1集落または数集落の単位であれば、十分にまとまれるのではないかと見ています」と、籠瀬リーダーは他地域で例があるようなJA出資の法人を立ち上げる必要はないと語る。集落営農の法人化に向けては、JAが1組織最高300万円の助成を行っている。

◆技術レベルを一定に保ち、落とさないことが重要

 県本部とJAの担当者は年1回、取引のある各地の卸を一緒に回り、卸を通じて小売店、消費者の情報を得るようにしている。しかし、なかなか情報が入ってこないのが現実だ。新規顧客の開拓などについては、特別な対応は今のところしていない。
 ときどき、消費者から直接JAへ手紙等で「美味しかった」など感想が寄せられてくることがあるというが、購入先などの状況が分からないので、なんとも答えようがないという。現在、JAが直接消費者と交流するイベントは企画されていないが、「どのような思いで、我々の作った米を買ったのか、本当に美味しかったかなど、直接話を聞いてみたいと思います」と、今後は籠瀬リーダーが消費者の反応をじかに確かめたいと語った。
 JAみな穂の米づくりの取組みは、自然条件、長い伝統などがあわさって質の高い米生産を可能にしている。JAの営農指導は、生産者の技術力アップではなく、いかに全体のレベルを一定に保ち、落とさないかが重要だという。他のJAに比べればうらやましいような話だが、高い技術の中で一定のレベルを保ち続けるためには、JAおよび生産者それぞれの努力が必要であると同時に、JA米であり「全農安心システム米」を目指すといった常に新しい課題に挑戦する姿勢が欠かせないと思われる。

(2006.12.22)


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