農業協同組合新聞 JACOM
   

シリーズ 韓国の米問題

過剰基調に転換しつつある時期

北出俊昭 前明治大学教授


 国際化が進展するにしたがい、韓国においても農業・農政の改革が進んでいる。ここでは昨年9月に行った実態調査に基づき、4回にわたり韓国の米政策を中心に現状と今後の課題について検討したい。

◆米需給の動向と課題

(1)需給動向の特徴
 2001年度〜05年度における韓国の米需給動向を示すと、表―1の通りである。この表から、1.供給の大部分を占めている生産は05年度には増加しているが傾向的には減少している、2.同様に需要の大部分を占めている主食用も減少している、3.この結果、前年度繰越も含めたトータルでみると供給量計は需要量計をかなり上回って推移している、の3点が特徴として指摘できる。
 韓国における米需給の経過をみると、60年代から70年代にかけて不足基調となったため、ジャポニカ系の「一般米」に加え、74年から多収穫品種のインディカ系の「統一米」が導入された。その結果、70年代後半には米需給は改善した。その後80年代に入り再度不足に陥るなど、韓国の米需給は必ずしも安定したとはいえなかった。しかし、それでも以前に比較して米需給は安定するようになったため、「統一米」は78年をピークに減少し、93年からは全く生産されなくなり、現在に至っている。
 こうした経過をみれば、現在、韓国の米需給は不安定な不足基調から過剰基調に転換しつつある時期、と特徴づけることができる。表―1で生産だけでほぼ需要をカバーしており、在庫率(需要量に対する前年度繰越量の割合)も年度により異なるが20%前後に達しているのは、そのことを示している。

米の需給動向

(2)需給対策の課題
 では米需給の今後の課題は何か。その検討のために掲げたのが、作付面積、10a当たり収量および1人当たり年間消費量の動向を示した表―2である。
 この表で90年までは作付面積、10a当たり収量ともに増加しているが、それは「一般米」に加えて多収穫品種の「統一米」が導入されたためである。85年、90年の10a当たり収量が著しく高くなっているのもそのためである。95年以降は「一般米」のみであるが、10a当たり収量の増加に応じて作付面積が減少し、生産量の増加は抑制されている。その理由は米消費量が減少したためであることは、1人当たり年間消費量をみれば明らかで、70年の136.4kgから05年には80.7kgと、実に40%以上も低下しているのである。
 韓国でも国民の所得が増加するとともに、ソウルに人口が集中しマンションに住む住民が多くなると、米消費の減少が促進される傾向にある。今後もそれが継続すると予測されているので、これからの米需給対策では過剰米対策が重要になるといわれているのである。
 このため、03年産〜05年産に米の生産調整が実施された。しかし、06年産から中断されている。その理由として、米は過剰基調にあるとはいうもののまだそれほど深刻でないことと同時に、農業所得確保上いまなお米は重要な役割を果たしていること、また、米に代わる適当な農産物がみあたらないこと、さらに兼業機会も少なく生産調整による所得減は農家所得減に直結すること、などが指摘されている。これはわが国と同じような理由である。
 しかし、今後はMA米輸入が確実に増加することもあり、米需給不均衡拡大に対する対策が検討されるようになっている。具体的には、米については今後とも1人当たり消費量が年間2kg程度ずつ減少すると予測されるとして、野菜・果実など他作物への転換を強めること、高品質米の生産増加を図ること、などである。こうした観点から、韓国農村経済研究院は2012年を展望し、何も対策を講じなければ10a当たり収量は519kgになるが、高品質米生産により497kgに抑制できると試算しているのは興味あることである。

米の作付面積
(2007.3.27)


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