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《書評》 今野 聰 (財)協同組合経営研究所元研究員

『むら表現 落ち穂拾い2』

            
楡 道彦・著 1,000円+税
            発行所:
北羽新報社印刷事業部
            発行日:2002年7月5日
むら表現 落ち穂拾い2

 裏表紙にあるが、楡ハルニエ道彦と読む。「表現」は「ことば」とふりがながある。「俚諺・俚語」が専門的な言い方らしい。著者の「表現」には、あとで触れる。要するに「村のことわざ」である。今回がパート2。前作を含めて426話を拾った。本名鈴木元彦。長く秋田県農業改良普及員だった。そこで「表現」という理由を冒頭文から引用する。
 「中央から地方を見下した、或いは地方から中央にへつらう匂い([俚]は[い・や・し・いと訓じます])が嫌いであることです」
 「その上で、『むらとむらびとたち』という年来のテーマを私の体験の中で拾い上げた数々の表現句が、わずか十数字でコントとして完成した比喩を持っていることを積極的に主張したいからです」
 今回は207話。引用すれば切りがないから、例えば最後426番を抜いてみる。
 「426 <馬の糞は古くなるほど効がね>」
はてな。分かり易いだろうか。「人間あまり年をとったのも自慢にならないと若者が年寄り相手にたたく陰口」という意味だとある。ここまでは秋田県仙北地方らしい。生活の知恵が生きいきとしている。以下は筆者の解説が冴える。
 「私が農業改良普及員になった昭和30年代半ば頃はまだ堆肥を多く施用するほどコメが穫れるという考えが生きていた。そのために堆厩肥の質(腐植度)にも目が行き届いていた」
 以下馬と牛の消化機能差を解説して、「馬糞は堆積されるとすぐ発酵して発熱するが牛糞は全く逆」と。つまり「表題句にはこの農業体験が背後にある」と締めくくる。
では現代の有機農業ではどうなるのだろうか。ほとんどこの種の研究も体験も生かされない。結果は畜産排泄物の公害、環境問題という難題になった。
 かくて、私にとっても著者は現場を学ぶ先生である。稲作の現場は机上の議論では収まらないからだ。特に日本海側と奥羽山脈側との違いが、寒暖の激しさを伴っている地域である。それを古老・篤農家から聴いて学び、現実の稲作営農に生かし、人々にも伝える。それが著者の仕事の特徴である。そうすれば当然、「むらの表現」に耳を傾けることになる。
 「いささか不謹慎な言い回しもあるが」という評もないではない。著者が「不謹慎」を敢えて中心に据えているからである。
 別の著作『「むら表現」秋田考』(無明舎出版、1992年)は民放ラジオで放送したものの収録というから参考になる。もっとも独自の「百姓歳時記」だから。一方柳田国男流の民俗学ばかりが流行している日本。これで果たして「満天」を取れるであろうか。

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