農業協同組合新聞 JACOM
   


《書評》
  「チャンメロの山里から 雪国おたり村の人生劇場」
山岸昭枝著
  頒 価:1000円(送料別)
発行所:社団法人農協協会
発行日:2005年12月1日
チャンメロの山里から 雪国おたり村の人生劇場


著者インタビュー
自立する信州・小谷村の
多彩な人間模様を描く


 ――執筆された動機は?

 山岸 昨年6月「村の息吹を伝えてほしい」という週刊『全国商工新聞』からの依頼で、8月から1年間連載させていただきました。北アルプス山麓の人口3800人という豪雪の村を舞台に、地元の人と、よそから来た人たちが混じり合って、貧しくとも楽しく、真剣に協力しながら生きていく姿を描いてきました。

 ――都会の読者が多い新聞だと思いますが、とくにアピールしたかったことはなんでしょうか。

 山岸 東京から来訪する人は「時が止まったみたい」と言いますが、山里の時間は自然とともに循環しながら、休みなく動いています。その速さは四季の移り変わりといっしょでゆったりです。自然は美しく、ときには厳しく、危険を伴うこともありますが、人間も動物も本来は山や森や原野の中で生きてきたので、大昔にもどったように感じるのでしょう。
 都会では(消費者も)生活の便利さ、快適さだけを求めているようですが、万物のいのちを育む土の大切さ、山国の自然の厳しさを知ることも必要だ、ということを伝えたかったですね。

 ――山岸夫妻は横浜の団地住まいだったそうですね。山里暮らしのよさを教えて下さい。

 山岸 人それぞれでしょうが…横浜の狭い団地から20年前に移ってきて心地よかったのは、雪山や森などの自然を含めて家の内外の空間の広さでした。憲法に保障されたはずの「基本的人権」はまずこれだ、と思ったものです。
 水のおいしさと食べ物の新鮮さも格別ですね。夫の豊吉(注・全農映顧問)ががんばって、ニワトリ(烏骨鶏ら)200羽と、その堆肥だけで水田20アール、傾斜畑40アールの有機栽培をやっています。豊かな山菜、山野草、キノコ類、木の実など、自然の恵みもいっぱいですからね。
 これらについては、前作『たべもの日誌』(B6判・120頁・頒価300円)を参照下さい。

 ――小谷村は、平成大合併の流れに抗して、自立していくことになったそうですが…。

 山岸 1998年の冬期オリンピックで、主会場となった白馬村との合併を、行政当局者たちは既定の路線のように、任意合併協議会で進めていました。しかし、最終的に小谷の人々は6割が反対して自立を決めました。レディース・ミーティングなどで会合を重ねた女性の意向が大きかったですね。この経緯は「地域資源を活かした小さな村の自律」と題して、本で取り上げています。

 ――村の自立で、大切だと思っていらっしゃることは?

 山岸 古い建造物を生かし、看板広告・自動販売機などを減らして、山里らしいもの…例えば古道を復活させ、道祖神や庚申塚、馬頭観音などを残し、伝統文化と新しい手づくり文化を融合させた、個性ある村づくりでしょうね。小谷村は、超高層ビル群とは対照的な、豊かな自然と個性ある村だと思います。村人たちは、いんごっこじ(頑固)なところもありますが、実に多彩で人情深いですよ。
 観光面でも、これからはスキーに頼るだけでなく、一泊朝食付きの宿に、イギリスのカントリー・パブのような食堂があったり、子どもの頃から食農体験のできる農家民宿も必要でしょう。

 ――その子どものことですが、村での教育について、考えておられる点をお聞かせ下さい。

山岸昭枝さん
山岸昭枝さん

 山岸 活字離れはどこでも心配ですね。この本にある「本と親しむ会」のような活動で、子どもたちに夢を持たせることがますます大事です。
 IT企業で成功した若者が勝ち組ともてはやされ、拝金主義がはびこりそうな一方で、まじめな若者たちの雇用機会が減っています。若者の夢がそんな世情の中で挫折すれば、犯罪に走るか心の病が増えるばかりです。
 先日、村のイベントで「馬と歩こう塩の道」があり、3人の幼児を連れたお母さんも参加しました。4歳のリンタロー君は、ちょこまかと走り回って、木曽馬のケンタに葛の葉をやったりしながら、ついに7キロを歩き通しました。
 動物とのふれあいや野菜を育てたり、どろんこになって芋掘りをするなどの、子育ての場が切に望まれます。生命産業である農林業や村は、健全な教育の舞台であることを、都会人ももっと理解を深めてほしいですね。
(注・この本は書店には出ません。申し込みは、〒399-9422 長野県小谷村黒川「山岸昭枝図書頒布会」TEL・FAX 0261-82-2715までお願いします)

(2005.12.2)

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