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自著を語る  農政ジャーナリスト 宮崎隆典
ステビアパワー革命

 ステビアパワー革命

    宮崎隆典著 佐藤直彦 編
     四六判 219頁 定価\1600+税 ダイヤモンド社

(みやざき・たかのり) 1943年熊本県生まれ。早稲田大学政経学部卒業。読売新聞社入社、婦人部などに20年勤務の後、1989年よりフリーライター。農業、食料、環境問題を中心に執筆活動を続ける。現在、「土日農業研究会」代表。


高い抗酸化力と細胞活性力 日持ちと収量が驚異のアップ
−新時代の農業を切り開く資材・ステビア抽出液

◆5年間の実地取材の結果をまとめる

 1995年から筑波山麓に約1haの田畑を借り仲間と週末農業をしている。そこへ飛び込んできたのが、話題のEM菌や木酢液などに負けない効力をもつという新しい農業資材「ステビア抽出液」の情報だった。
 早速、米とメロン(宮城県中田町)を取材。これを試食し、米のうまさとメロンのなかなか軟らかくならない日持ちの良さに驚かされた。続いて取材したミカン(熊本県田浦町)の通常品より2〜3倍の収量アップという桁外れの効果に度肝を抜かれてしまった。

 次の課題はステビア抽出液がなぜそうした効果を発揮するのか、その科学的根拠を突き止めることだ。抽出液の成分や働きのメカニズムを研究中の東北大学農学部で取材、その確かさに確信をもった。その上で、できるだけ多くの栽培事例を集めることとし、野菜、 果物、畜産物へ対象を広げて取材、それぞれでステビアが驚異的な効力を発揮している事実をつかんだ。

 5年間にわたるそれらの取材をまとめたのが本書である。タイトルに革命という言葉を使ったが、以下に挙げる代表的な驚異の事例によって、革命の意味が理解していただけるだろう。

◆果実は味も抜群、連年豊作

 ステビアは、南米パラグアイ原産のキク科の多年草である。農水省が天然甘味料の材料として1971年に輸入、日本でも栽培されている。葉から採取されている甘味では砂糖の300 倍の甘さでノンカロリーとされ、清涼飲料やキャンディなどに広く使われている。
 農業資材としてのステビアは乾燥葉茎を煮出して抽出液や粉末としたもので、農業ベンチャー「JBB」(浦和市)が10数年前に開発・普及に乗り出した。

 抽出液を収穫前に数回、葉面散布すると1作、2作、3作目と次第に強い効果が現れる。
 まず日持ち。メロン、イチゴ、桃などで顕著で、1週間やそこらでは身がグシャッとならず、メロンは常温下でも1カ月ぐらい平気でもつ。ロスがないと小売店でモテモテだ。
 おいしくなければ何にもならないが、味がまたバツグン。甘味があり風味も豊かで、通常品との違いは一目瞭然。これは小松菜や枝豆などの野菜でも同じだ。
 次に収量増はミカンで顕著。田浦町のTさんはステビア施用6年目で、高価格の人気品種デコポンで通常品の3倍の収量を上げている。しかも豊作と不作が年ごとに入れ替わる隔年結果が普通なのに、毎年豊作の連年結果なのだという。

 畜産はどうか。宮城県三本木町の養鶏業者は鶏の餌にステビア抽出液を混ぜ、殻の固い、黄身を箸で持ち上げられるほど張りのある卵を生産、鶏自体の死弊率もほぼゼロに抑制。同県桃生町の養豚業者は豚を同様に飼育し数段の肉質アップを成し遂げているという。

 以上の効果は、東北大学農学部水産科学研究室の研究により、例えば日持ちのアップは、ステ菜抽出液が高濃度に含有するカリウム無機塩類の「抗酸化力」のせいであることが学問的に突き止められている。
 同研究室では魚油を使い、ステビアの強力な抗酸化力を証明したが、それらの研究についても分かりやすく記述したつもりだ。農家の実践同様、そこらの研究プロセスもエキサイティングだ。



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