JACOM ---農業協同組合新聞/トップページへジャンプします

自著を語る 栃木県立栃木農業高等学校教諭 橋本 智
全国農業博物館資料館ガイド

  初めての農業分野博物館ガイドブック

  『全国農業博物館・資料館ガイド』

     橋本智 著 筑波書房、226ページ、定価\2100(税込)

(はしもと さとし)昭和42年生まれ。平成元年宇都宮大学農学部卒業、栃木県立佐野高等学校農業科教諭。平成8年より栃木県立栃木農業高等学校教諭、現在に至る。文部科学省検定教科書高校農業『農業経営』(実教出版) 編修協力者。


 今、若者の心に「科学離れ」が急速に進んでいる。小さい頃から科学の恩恵に浴してきたにもかかわらず、「理科が嫌い」という生徒の割合は年齢が上がるにつれて増加し、OECD(経済協力開発機構)の調査によれば「科学技術に関心のある一般市民の割合」は先進14カ国のうち日本は最低レベルであるという。
 このようなゆゆしき事態に対し、1994年に日本学術会議が国に次のような提言を行なったことは注目に値する。すなわち理工系離れを改善するには、体験的な学習を通して次代を担う青少年に科学技術の面白さや重要性を伝える博物館がぜひ必要である、また日本の科学技術の発展の跡を後世に伝える貴重な資料が急速に失われつつあり、これらの収集保存も急がなければならない、というものである。
 この提言は、実は農業においてもっとも必要なのではないだろうか。国民の心の中の「農離れ」の現状は、理工系離れの比ではない。多くの消費者にとって農産物とはスーパーで売られている「商品」の1つであり、そこに携わった生産者の姿も育種や農業技術の発展に尽くした先人たちのことも、全く「見えない人々」になっている。また多くの子供たちが農業体験に乏しく、農業の素晴らしさ・重要性を伝える機会も少ない。小中高校の普通教育では、このことに触れる時間はほとんど無いといっても過言ではないだろう。
 しかしながら、現在も全国には農業の科学・歴史・文化などを伝える、ユニークな「農業博物館」が数多く存在している。特に近年は自治体レベルで、地域社会を多様な面から支えている農業の重要性に注目し、子供たちや一般の消費者が農業を体験的・能動的に学ぶことのできる博物館・資料館を作ろうとする動きが出始めているようである。
 ちなみに現在日本には一般に広く公開している見学施設が約5,000館、日本博物館協会に加入している施設を挙げても3,000館を超える。本書はこれらの中から農業に関わる展示を行う100施設を抽出し、案内を試みたものである。リストアップに際し下記の点を考慮した。
 (1)主に農業生産に関係した資料を常設展示している施設であること。
 (2)農業の科学・歴史・文化などを伝えるユニークな内容であること。
 (3)観光・販売だけが目的の施設でないこと。
 (4)近代農業技術史上重要な人物の記念館や文化遺産(農業近代化遺産)も加えた。
 確かに今までも「博物館ガイド」は数多く刊行されている。しかし内容を見ると農業に関わる施設の紹介は全く無いか、あっても理工(自然科学)系か歴史系博物館の分類の中に僅かに紹介されているにすぎない。私見では、今までの博物館関係文献には「農業博物館」というジャンルは存在しないのである。また、試験研究機関や自治体で設立されたものが多く、いわゆる観光地ではないため自らはPRしていない所がほとんどである。こうしたことから宝の山も、残念ながら知る人ぞ知る博物館になっているのが現状である。同じく「農業近代化遺産」という言葉も今まで使った人はいないのではないかと思われる。
 本書はこうした全国の隠れた施設を掘りおこし、広く一般の方に紹介するために著したものである。掲載した100施設すべてについて詳細な案内地図を添付したほか、展示の概要や農業技術史上のトピック、住所・TEL・FAX・ホームページアドレス・設立主体・設立年・利用時間・利用条件・駐車場や食堂売店の有無・交通機関および所要時間などを網羅した。
 農業分野に絞った博物館ガイドブックの刊行は、おそらく本書が初めてではないだろうか。本書を読んだ方々が農業にさらなる関心を持ってもらえればと願っている。忌憚のないご意見・ご批判をお寄せいただければ幸いである。




農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
webmaster@jacom.or.jp