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自著を語る 國学院大学名誉教授 三輪昌男
別のダボス―新自由主義グローバル化との闘い―
別のダボス
―新自由主義グローバル化との闘い―

フランソワ・ウタール/フランソワ・ポレ共編
三輪昌男訳
 

四六判238頁 定価1800円(税別) 柘植書房新社発行


NGOの新潮流 日本農業への援軍

 原書を入手し一読して、これは大変な本だ、ぜひ翻訳出版を、と思った。
 [意義1]は、世界NGO運動の新潮流の形成が示されていること。これまでの総結集の問題意識は「地球環境が壊されている」だった。それが「環境より先に社会が、人間が壊されている」に変わっている。具体的な表れの最重要の一つとして、各国間・各国内での「経済的不平等の拡大」が挙げられている。
 誰が壊しているのか。答えは「新自由主義グローバル化」を推進している人たち。
 [意義2]は、その「新自由主義」という言葉と内容に注目しようという気持ちを、強く起こさせてくれること。日本では、この言葉にあまりお目にかからない。当然に内容についての理解も乏しい。
 実は、米国のブッシュ現政権の政策、日本の「小泉構造改革」は新自由主義の典型なのだ。その風景が、この言葉と内容を理解すると、モヤが吹き飛ばされてはっきり見える。そして多くの人が、これは大変だ、と思うことになる。
 この本の「2章/新自由主義小史」を読むだけでもよい。筆者は『なぜ世界の半分が飢えるのか』などの著作で日本でも知られているスーザン・ジョージ。
 新自由主義の内容を私なりにごく簡単に説明しておこう。市場原理主義に基づき、「民営化・規制緩和」を徹底し、併せて「強きを助け弱きをくじく」手を打つ。それで最適の経済福祉がもたらされる、と唱える社会思想・政策思想。
 [意義3]は、日本農業にとっての新たな援軍の出現を教えてくれること。WTO現ラウンドの農業交渉で日本政府は「農業の多面的機能」を重視して、一定の条件下で農業を自由貿易の例外とすることを提案している。しかし、例外は原則に弱い。
 NGOの新潮流は、WTOの原則である「自由貿易主義」を全面否定し、公正な貿易の代案を提起しようとしている。日本農業にとっての援軍に違いない。
  

*  *  *

 世界的大企業のトップを中心にした、新自由主義グローバル化思想の持ち主たちの、年1回の「ダボス会議」。それに対抗しようと01年1月末に、122カ国からNGO2万人が集まった、ブラジルの「ボルトアレグレ」での集会。これらを知っている人は日本では珍しい(ポルトアレグレのその集会への日本からの参加者はゼロだった)。
 「どちらも知らなかった。まずい」という感想を持たれる1人でも多くの方が、読んでくださることを願っている。




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