農業協同組合新聞 JACOM
   


自著を語る 北出俊昭 明治大学教授
「転換期の米政策」
「転換期の米政策」
(筑波書房、2005年2月)

北出俊昭 明治大学教授 


 本書は米政策改革について、何か“黙っては見過ごすことはできない”気持ちから執筆したものである。その理由は、“この政策が日本の稲作の発展と国民食料の安定供給に本当に役立つのか”について不安を感じたからである。本書ではとくにWTO体制が発足した90年代中頃以降を根本的な政策転換期と認識し、次の2つのことを重視した。
 1つは、今回の米政策改革は、最近におけるめまぐるしい政策変更のあと実施されたが、その背景には一般経済政策の動向があると考えたことである。そしてその特徴として、(1)市場原理主義の強化、(2)財政負担の削減強化、(3)グローバルスタンダードの重視、(4)政治・経済に対する財界などの影響力強化、の4つを示し、これが背景にあるとする。これに規定されて米政策でも、(1)米の需給と価格の安定に対する政府の責任と役割の縮小、(2)財政負担の削減と生産者負担の強化、(3)選別的な担い手育成政策、(4)国際規律との調整の強調、の4つの特徴があるとしている。
 いま1つは、改革政策について可能なかぎり問題点と課題を明らかにし、相互の関連についても検討したことである。同時に、重要な政策については歴史的な経過も紹介した。
 こうした理由は、政策転換期は見方を変えれば新しい政策の確立期でもあるので、今後の政策検討にはその経過と内容を知ることが重要と思ったからである。
 この2つを基本に、4つの課題を取り上げ、改革政策の内容と今後の課題について検討しているが、とくに特徴的な点は次の通りである。
 「生産調整と米需給問題」では開始時からの生産調整の経過を述べ、現在限界感が広がっている要因を検討した。とくに食管法廃止後は米の需給と価格安定を最大の目標にしていながら、それが達成されず、生産調整の矛盾が深化していることを重視した。一方、米生産調整は水田利用問題でもあるので、耕地利用と耕作放棄地の実態と改善方向を明らかにし、MA米とFTA問題についても検討した。

◆「主役システム」でJAグループの負担増す

 「米価問題と所得政策」では、改めて価格・所得政策の役割とその充実強化の必要性について強調した。その上で、米価と生産費の関係について検討し、とくに農地流動化対策では小規模農家にみられる「小農原理」と大規模農家の所得確保が重要な問題であることを指摘した。また、アメリカ、EUの所得政策も検討し、「再生産保障と最低価格による無制限買入」および「国内制度とリンクした国境調整措置」を提起した。
 「米の流通と価格形成」では、最近、大手業者による流通支配が強まっており、今後は生産・出荷段階でも大手販売業者の影響力が一層強まる可能性があると考える。また、「完全自由化=民営化」されれば米価変動が激しくなる危険性があるが、米価形成センターと先物市場問題についても検討し、今後の対応策にもふれている。その上で、集荷円滑化対策の機能発揮について述べている。
 最後の「農協組織と米政策」では、まず生産調整推進体制と農協組織の関係および需給調整対策の取り組み経過を検討した。その結果、農協組織として米需給調整対策だけで毎年度百数十億円の負担をしていることが明らかとなった。「農業者・農業者団体が主役」となれば、これがさらに増加する可能性が強い。そのあと米政策改革に対する農協組織の取り組み内容と課題について検討しているが、米対策を円滑に進める上でも、最近における農協批判の検討が不可欠である。本書では、ICA100周年記念大会における宣言の観点からこれを検討し、農協組織の今後の課題についても述べた。
 本書は以上のような内容であるが、当然批判もあると思われる。しかし大切なことは、さまざまな意見を出しあい、あらゆる場で討議を深め、国民本位の米政策確立に向けて行動することである。従来の「日本型システム」は非効率で競争的でないとして、戦後体制の根本的な転換が図られており、米政策改革もその一環とすれば、国民レベルからの広範な討議と改革が必要なのである。そしてこの運動を進める上でも、農協組織の役割は重要なことを強調した。



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