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シリーズ 食糧法改正とJAグループの米改革
15年産の集荷販売対策
JAグループの付加価値向上と優位性の確保めざす


久寝正則 JA全農米穀販売部長に聞く

 米政策大綱を受けた改正食糧法は16年度から施行されるため、15年は新しい政策への移行期間となる。こうした移行期間の集荷・販売対策のポイントは何か、JA全農米穀販売部の久寝正則部長に聞いた。

◆取り組むべきことから改革に着手する年

 ――米政策改革にともない、JAグループの米穀事業も改革に向い動き出すわけですが、15年産の集荷・販売対策の考え方についてお聞かせください。

久寝正則氏

 「JAグループでは昨年の“米政策の見直し”の検討過程から『JAグループ米事業改革』の検討をすすめてきました。米政策改革について、流通制度面から見れば、計画流通制度が廃止され、(1)計画内外の区分がなくなること、(2)計画出荷米のガイドラインがなくなること、があげられます。すなわち、(1)について言えば、JAグループの取り扱う米を市場のなかで明確に特徴づける必要があります。また(2)について言えば、自らガイドライン(集荷計画)を作る必要があるわけで、そのためには、販売計画で裏打ちされた集荷計画とする必要があるわけです。このため、(1)安心・安全を核としたJA米の確立、(2)販売を起点とした事業方式への転換および(3)全国一律の事業方式から地域の実態に応じた事業方式への転換、とした事業改革の方向を確認しました。
 こうしたなかで15年産の集荷・販売対策は米事業改革をすすめるにあたっての移行期間となることから米事業改革で掲げた事項のうち、15年産からでも取り組むべき事項と従来から取り組んできた集荷・販売対策で充実・強化すべき事項について提起していきたいと考えています」

 ――では、販売対策の具体策についてお聞かせください。

 「JAグループではこれまで生産したものを集荷・販売するという方式で事業を営んできましたが、販売動向に基づき多様な需要に対応し、生産するという事業方式に転換する必要があります。そのためにはまず、JAグループとしての販売力を強化していかなければならないと考えています。
 しかしながら、需要情報の把握と伝達、JAグループによる販売計画の策定については米政策改革大綱にもとづき設立される『第三者機関的組織』における需要予測の分析・検討の具体的な手法との関連もありますし、大消費地における販売体制の確立についてはJAと連合会の機能分担や地域の実態に応じた事業方式などを整理する必要もありますので、改めて提起したいと思います。
 ただ、現時点での方向としては、まず米の需要情報の把握と伝達です。需要情報の収集についてはJAグループの各段階での販売主体が販売推進活動を通じて積極的に行うことにしています。このうち全農全国本部、県本部・県連は(1)産地銘柄別需要、(2)用途別需要、(3)価格帯別需要、(4)卸・実需者の評価などの情報を把握し、JAグループとしてこれらの情報の蓄積・共有化に努めることにしています。
 一方、JAは生産者に対してJAだよりやホームページによるタイムリーな情報伝達に努めるほか、生産者がEメールを活用して必要な情報を交換できる仕組みを構築することにしています。
 次に販売計画の策定のため、当面、主要銘柄の流通実態の把握・分析を行い、共通認識の醸成に努め、主要銘柄の流通実態や14年産までの販売実績、在庫状況をふまえ銘柄別の販売計画を策定することにしています。
 とくに需要情報の把握や販売計画の策定にあたっては、量的に大きなシェアを占める大消費地の動向を的確につかんでおくことがポイントになります。このため、合意が得られる県本部・県連から自県産米中心の販売推進を行うとともに、全国本部との情報の共有化を図り、全国本部で情報の把握・分析に取り組み、県本部・県連と一体となった販売推進に取り組みます。さらに県本部・県連と全国本部が一体となり、販売先ごとの戦略を共有化するなど効果的な販売活動も行っていくことにしています」

◆生産者が判断する契約方式に選択肢導入

 ――集荷は「販売を起点にした集荷」とされていますが、具体的な取り組みについてお話いただけますか。

 「販売を起点とした集荷方式への転換にも15年産で可能なことから取り組みます。
 具体的にはまず出荷契約の推進です。15年産は計画流通制度と稲作経営安定対策(稲経)が継続していますから、出荷契約、計画出荷米の申出と稲経数量契約をセットで締結すること、また、16年産から計画流通制度が廃止されることから、出荷契約に対する契約観念が一層強くなっていくことを生産者に周知徹底することが必要です。
 その一方、多様な生産者に対応し生産者の判断で選択できるよう契約選択肢の拡大にも取り組み、15年産ではつぎの3つの方式のなかから地域の実情に合わせて決めることにしています。
 ひとつは出荷確約契約で、契約した数量は必ず出荷する契約方式です。もうひとつは、出荷見込契約で、契約した数量を集荷する意思がある生産者との契約方式です。これは現行方式ということになります。さらにスポット契約という選択肢です。これは出来秋の価格条件などを判断してから出荷する生産者との契約です。
 こうした選択肢の拡大に応じて、庭先集荷、CE荷受けや検査などのサービス面での優遇措置についても検討することにしています。
 次に仮渡金ですが、15年度については平年作においても相当量の持越在庫が見通されていることから、販売が難航すると想定される銘柄については、販売残を見込んだ仮渡金水準や時期別仮渡金などの検討を行ったうえで設定することとしています。
 また、出荷契約方式の選択や品質によって仮渡金に格差を設けることに取り組みます。格差の水準としては、契約方式による出来秋の出荷推進のコスト軽減分や品質による差別化商品としての販売価格差の範囲内で設定することにしています。
 そのほか、需要を反映した契約栽培や特色ある生産に対応し限定的に買い取り販売にも取り組むことも考えています。
 これらは各県ごとにこれまでの取り組み経過があり、地域の実情に即して実施していくことになりますが、16年度からはこうした取り組みが必要になってくることを念頭において、15年度の取り組みをすすめることが重要だと考えています」

◆「JA米」の確立に向け生産履歴記帳運動を促進

 ――「JA米」の確立もJAグループの大きな事業の柱になるわけですね。

 「安心・安全を核とした『JA米』の確立は16年産からの取り扱いを前提に、15年産では年次別数量目標を設定するとともに、栽培履歴の記帳を生産者に推進していきます。
 『JA米』の定義ですが、これはJAと出荷契約を締結した生産者が生産・出荷した米で、(1)種子、(2)農産物検査、(3)栽培履歴記帳、などについて条件を付して取り組んでいきます。
 また、この取り組みを広範なものとし、信頼性を確保していく観点から全国本部は『JA米取扱基本要領』を設定することにしています。
 また、JA米の取り組みを推進するには、トレーサビリティ・システムへの対応も必要になります。15年産対策では国や流通業者と連携を図り、トレーサビリティ・システム構築の検討を行うとともに、栽培履歴の記帳はこのシステムのスタートとなるわけですから、全生産者への記帳推進を行います。さらに全国本部としては『全農安心システム米』の拡大を強力に推進していくことにしています」

◆多様な需要に対応した米の販路の拡大も課題

 ――これまでお話いただいた16年産へつなぐ取り組みのほかに、従来からの取り組みの強化についてもお聞かせください。

 「ひとつは集荷数量の確保に向けて、役職員一丸となった集荷推進です。具体的には出荷契約の積み上げ、稲経の加入促進、出来秋時の集荷促進などです。
 また、フットワークを駆使した着実な集荷も課題で、庭先集荷の強化・充実と経費の削減や、大規模農家や生産法人に対応した専任部署の設置や情報交換により、担い手層のニーズを把握して、保管・輸送・代金決済などの部分業務委託といった機敏な対応も強化しなければなりません。
 多様な需要に対応した販売方式の検討も課題です。とくに主食用では業務用需要への対応など、品質、用途、価格帯別の販売の拡大に取り組みます。
 また、共同計算方式は今後ともJAグループ米穀事業の基本ですが、引き続き透明性を高めていくこととします。しかしながら、一律的な運営や精算時期に対して改善が求められていることから、共同計算の区分単位を出荷契約方式・品質別などで細分化するほか、地域の実情に応じて精算額に格差を設定することや、また生産者の了解のもとで複数年共計による早期精算の実施にも取り組みます。
 そのほか、販売対策費・運賃などの流通コストの削減、JAグループにおける検査体制の確立と信頼性の確保も15年産集荷・販売対策の課題です」

 ――米の消費拡大と新たな販売事業についての方針もお願いします。

 「JAグループは引き続きさまざまな米の消費拡大運動に取り組みますが、全農としては関連会社や取引先で構成されている『米消費拡大推進協議会』を通じて米・ごはんの食の重要性についての啓発、情報発信を行います。また、『全農安心システム米』や米粉入り国産原料パン、米加工品などの販路拡大もしていきますし、消費者に接近した事業として『全農ぴゅあ弁当』の拡販やおにぎり店舗も展開していきます」

 ――ありがとうございました。 (2003.3.28)

 




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