JACOM ---農業協同組合新聞/トップページへジャンプします

コラム
消費者の目

市民農園耕し野菜消費倍増

 近くの農協が運営している市民農園を利用するようになって4年目の夏が過ぎようとしています。
 楽農館と呼ばれるクラブハウスを中心に、1区画20平米ほどに区切られた畑が扇状に配置されており、さらにそれを取り囲むようにりんご、柿、梅などの果樹が植えられています。
 クラブハウスを背にして扇の真中から左側が無農薬区、右側が低農薬区に分けられていて、利用者は申し込む際に希望を出すことができます。水道は園内に十分配置されており、堆肥はいつでも好きなだけ使えるようになっています。私の畑は扇の一番右端で、外側から2番目に位置しています。

 一年目の春、初めて自分の畑に行ってみると、そこは雑草が生い茂っていました。途方に暮れていると指導員の方がこれからやるべきことを教えてくれました。手で地上の雑草をあらかた引き抜いたあと、まんのうで耕しながらユウガオの根と小石を取ります。取っても取っても出てくるので、やりきれない思いでしたが、週末を2回、4日間かけてやっと取り終わりました。次に、石灰を撒き、堆肥をいれて耕しました。近くの農家さんはトラクターを使い畑一枚をあっという間に終わらせるのですが、手作業ではそうはいきません。青々と茂った畑を夢見つつ、黙々と耕すのみです。こうして、やはり週末を2回、4日間を費やしてどうにか使いものになる畑が出来上がりました。
 不思議なものでこうして苦労をして耕した畑にはとても愛着を感じるようになっていました。この気持ちは年を重ねるごとに強くなり、他の区画への配置替えはよっぽどのことが無い限り考えられません。農家の方が田畑を大切にする理由が少しだけわかったような気がしました。

 栽培講習会で栽培の基礎を教えてもらいながら、見様見真似で夏野菜の植付けをしました。慣れない手つきでマルチをし、ホーラーで植え穴をあけ、トマト、きゅうり、ナス、ピーマンを植えつけました。まだ空いているスペースに何か植えようということになり、苗の販売コーナーで見つけたズッキーニを2本植えました。ところがこれが私の想像を遥かに超えた巨大な植物に育ち、あっという間に周りの作物に覆い被さってしまいました。しかし、きゅうりのお化けのような実がなったのをスライスしてフライパンで炒めると、その味は格別ですっかり虜になってしまいました。

 こちらの市民農園は農協の直売所に隣接しており、当初市民農園を始めると直売所の売上が落ちるのではないかという人もいたそうです。ところがそんな心配は杞憂に終わりました。直売所の売上は下がるどころか以前よりも上がったのです。実際、我が家の野菜の消費量は市民農園を利用する前に比べて倍増しており、自分の畑で賄いきれない分やイチゴなどプロの味にかなわないものについては水遣りのついでに直売所で購入しています。これからの農業を支えるキーワードのひとつが農家と消費者の交流であることは間違いありません。 (花ちゃん)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
webmaster@jacom.or.jp