農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

田舎ののんびりこそ癒し


 最近、近くのスポーツ・ジムのプールに通い始めました。寒いのが苦手な私にとって、冬場の温水プールはまさに天国です。泳ぐのが苦手な人もアクアビクス(水中で行うエアロビ)や水中ウォーキングで楽しめます。多くの熟年の女性が元気いっぱい水遊びを楽しんでいます。それに比べると、熟年の男性の姿はあまり見られません。どうも高度成長期を仕事一筋に生きてきた男性は遊ぶのが苦手のようです。
 荘子に「無用の用」という言葉がありますが、遊びはまさにこの無用の用の最たるものではないでしょうか。遊びはお金を使うばかりで稼いではくれません。お金を稼ぐようになると、それはもう遊びではなくなるからです。
 亡くなった私の大先輩は音楽家だったのですが、素人の私達がうらやましいと常々こぼしていました。音符を五線紙に書くたびに、1円2円と勘定してしまうそうで、こうなると音楽を楽しむ境地ではない。だから先輩は、ほとんど無報酬でアマチュアの指導にあたっていました。先輩にとってその時間は、何事にも代えがたい貴重な時間だったことは間違いありません。
 自動車を動かしているのはガソリンですが、潤滑油がなくなるとエンジンが焼け付いてダメになってしまいます。「遊び」は人間が生きていく上での潤滑油なのかもしれません。
 今の時代は「ドッグイヤー」とも称されるほど時間の流れが速くなっています。犬の一年は人間の7年に当たるといいますが、「ドッグイヤー」というのは7倍も速く時間が流れていることを喩えたものです。アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひくと言った時代もありましたが、今は世界のどこかで起こった出来事は、私達の日々の暮らしにすぐに響いてきます。
 インターネットの発達によって、我々が見たり聞いたりする情報量は加速度的に増えています。うかうかしていると情報の波に飲み込まれてしまいそうです。このような時代だからこそ、遊びの持つ意味はますます大きくなってきているのです。
 グリーンツーリズムが注目されている理由もここにあると思います。そんなに急がなくてもいいじゃないか、たまにはのんびりしようよ、という訳です。車で移動していると見過ごしてしまうような道端の小さな花も、のんびり歩いていると目に留まります。春風が頬をなでると、思わず自転車をこぐ足にも力が入ります。都会で暮らす我々には、田舎の自然やのんびりした時間の流れこそが、疲れた心を癒してくれるビタミンなのです。中途半端に都市化するよりも、田舎らしい田舎を追求する事もまた、立派な村おこしだと思います。(花ちゃん)
(2004.3.4)


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