農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

身をもって農を知る経験を


 小中学生の学力低下が問題になっています。その原因は「ゆとり教育」にあるとも言われています。「鉄は熱いうちに打て」という言葉の通り、人生の中で一番知識の吸収に適した時期にあたる貴重な学習時間と学習内容を削って生まれたゆとりの時間は、学力の低下と引き換えに何を子供たちに伝えようとしているのでしょう。
 マニュアル世代の先生たちには、何をやってもいいという自由さがかえって負担になっているようにさえ思えます。マニュアルから脱却し自分で考えることこそ、「ゆとり教育」が目指していたことだったはずなのに。
 自分自身の小学生時代を振り返って見ると、土曜日も授業を受けていたにもかかわらず、自分が自由に使える時間は無限にありました。学校が終わるといつもの広場に集合して日暮れまで遊んでいましたし、夏休みは裏山で虫取りをしたり、崖のぼりをしたり、川で魚やエビを捕って過ごしていました。そうやって自然の中で遊ぶうちに自分で考える習慣が身についたように思います。

◆自然の中で身につく考える力

 自然は常に変化しています。今日晴れたかと思えば、明日は雨が降ることもあります。風も吹けば、霙も降るという具合に、刻々と変化し続けています。そんな中で暮らしているうちに、環境の変化に対応する力や先を読む力が自然と身についてくるのでしょう。考えてみれば、農業はめまぐるしく変化する自然の中で行う営みです。虫も飛んでくれば病気も発生します。年中同じ温度にコントロールされた都会に住んでいたのでは、農業の大変さに想いの及ぶわけもありません。
 最近、注目されている「食育」は単に栄養学的な食の自己管理能力の向上を目指すだけでなく、生産者と消費者の溝を埋めて、失われた食の安全への信頼を回復する狙いもあります。知らないことが誤解を招いていることもあるのです。例えば、自分が大切に育てた植物を害虫や病気にやられた経験を持っている消費者は、比較的農薬使用に理解を示します。アブラムシを手で取り除くことが不可能であることも知っています。リスクを理解した上で安全に使おうという考え方が理解できます。しかし、実際に植物を育てる体験したことのない人たちにとっては、想像すらできないのです。
 日本という高温多湿の厳しい自然条件下で、農家の皆さんがいかに苦労して農作物を育てているか身をもって知ることで、農業に対する消費者の理解を深めることこそ急務です。今後の「食育」の取り組みに期待しています。
(花ちゃん)

(2004.3.23)


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