農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

キーワードは「心」の通ったサービス


 4月から中学に通う娘のために新しい自転車を買い求めることになりました。近所のホームセンターをのぞいてみると、「入学おめでとう」と大きく書いた紙が貼ってあって、通学用に買い求める人たち向けのコーナーがありました。
 季節柄、新入生向けのコーナーは一番目立つ場所を割いてあります。我々以外にも親子連れが何組かいて、にぎわっていました。通学用だけあって、大きなかごがついており、ライトは自動点灯、さびにも強そうなしっかりした自転車で、他の自転車よりも立派に見えます。TVコマーシャルもやっている有名メーカーのブランド品で、値段は定番品の2倍ほどでした。身長と自転車のサイズの早見表が貼ってあって、娘の身長ならば26型か27型でいいらしいと分かりました。しかし、娘にきいてみると、「これ」という自転車がなかったようなので、一通り見て回って売り場を後にしました。

 次に訪れたのは商店街の自転車屋さんです。おじさんが一人でやっていて、4年前にやはり娘の自転車を買って以来のお付き合いです。狭い店先にはお客も姿が一人も無く、お世辞にも流行っているようには見えないのですが、店のドアを開けるとチャイムが鳴って、奥からおじさんが愛想のいい顔を出しました。
 通学用の自転車を探していると告げると、「お嬢ちゃんの背丈なら27型でちょうどいいね。荷台もあった方が何かと便利だね」と、組み立て中の自転車の中からピッタリのやつを見せてくれました。娘はひと目で気に入り、すぐに注文することに決まりました。メーカーから取り寄せて組み立てるので、納品までには2週間ぐらい掛かるのですが、待っている時間も楽しむことができそうです。
 驚いたことに、おじさんは4年前に買った自転車のモデルや色までも覚えていました。「パンクでも何でも故障した時は電話ください。すぐに修理しに行くから」とアフターサービスも万全です。年間に何百台、何千台も販売する量販店では決してできないサービスです。

 顧客のニーズを知り尽くして、そのニーズに最も適した商品を提案すること。その商売の基本中の基本を小さな自転車屋さんのおじさんが実践していることに、大いに感動を覚えました。感動したからこそ、ホームセンターよりも高い価格を払ってもなお、いい買い物をしたという満足感を感じられたのです。価格だけではない、こころの通ったサービスこそが、モノが売れない時代のキーワードなのです。(花ちゃん)

(2004.5.7)


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