農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

食欲の秋!

 今年の夏ほど「猛暑」、「酷暑」という言葉がピッタリくる夏はありませんでした。7月20日、東京大手町では、39.5度という観測史上最高の暑さを記録。日本が熱帯化しているような気がしました。「喉もと過ぎれば暑さ(熱さです!)を忘れる」と、ことわざにも言う通り、9月に入ると夜間の気温はぐっと下がって、本当に良く眠れるようになりました。体は夏の間の睡眠不足を取り戻そうとしているかのようです。朝までぐっすりです。読書の秋、体育の秋、食欲の秋。本当に秋があってよかったと思える季節です。

 その日は、家族でショッピングモールに出かける途中でした。秋風を切りながらドライブしていると、道の脇に「栗よりうまい十三里(じゅうさんり)」というキャッチフレーズと焼き芋の絵が描いてある看板が目に入りました。
 この道は何度も通っており、この看板も何度も目にしていたので、焼き芋の看板なのはわかっていたのですが、何で「栗よりサツマ芋の方がおいしいと言うのだろう」と、思っていました。妻は、「栗は確かにイガイガもあって剥くのがめんどうくさいし、サツマ芋に比べたら食感もパサパサしているからじゃない」と言いました。
 しかし、栗は栗なりに美味しいし、何か他に意味があるような気がして、気になっていたのでした。交差点で信号待ちのため停車したその時、気がつきました。「そうか。サツマ芋は栗(九里)より(四里)うまいから、九里と四里を足して十三里。それでサツマ芋のことを十三里というのか」。一人で有頂天になってはしゃいでいると、妻と娘は「またか」という顔をしていました。
 後で知ったのですが、サツマ芋の産地、埼玉県の川越(かわごえ)はちょうど、江戸、東京から十三里のところにあるそうで、そのこともキャッチフレーズに読み込まれているとの説もあるようです。

 このキャッチフレーズは、もともと江戸時代の焼き芋屋が考えたものだそうで、最初は栗に半里足りない「八里半」と書いて商売をしていたらしいのですが、だんだん焼き方が上達して味が良くなったのか、後に「栗よりうまい十三里」に出世したそうです。面白いですね。
 川越の芋の代表として知られていた紅赤(通称キントキ)は今では30農家ほどが栽培するだけになっていて、もっと栽培が簡単で収量の多い品種に変わってきているそうです。時代とともに、品種が変わっていくのは避けられない事かもしれませんが、日本人の言葉に対する感性と、江戸の風情を残す言葉が今も生き続けていることにはほっとしました。 (花ちゃん)

(2004.10.18)


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