農業協同組合新聞 JACOM
 
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コラム
消費者の目

大切な第三者の目


 もっと歌を楽しみたくて、発声法のトレーニングを始めました。学生時代、多少歌っていたので声を出すことには自信があったのですが、齢を重ねるごとに思うように声が出なくなってきました。OB合唱団で2年に1回演奏会を行うので、たまに集まって練習するのですが、1時間も歌い続けると声が枯れてしまいます。
 こうなると、感情をこめるどころではなくなってしまいます。お客さんに申し訳ないし、歌っていて自分自身も楽しくないのです。よく「声は腹から出す」と言われますが、腹筋をはじめとして様々な筋力が衰えてきたのが原因のようでした。
 そこで、2週間に1回ボイストレーニングに通って、正しい声の出し方を勉強することにしました。

 レッスンを始めるまでは少し不安でしたが、これがなかなか興味深いことがわかりました。
 初めてのレッスンで先生から声の出る仕組みや体の使い方などを教えてもらいました。横隔膜を意識して息をおなかに入れ、おなかで支えながらその空気を吐く。その際、体はまっすぐに保ち、のどを開いて空気の通り道を作ります。肺の中の空気がちょうどのど仏の後ろくらいのところにある声帯という器官を震わせると音が出ます。この音を、頭蓋骨の中にある空洞に響かせることで美しい声になります。したがって、口腔の中にできるだけ空間をつくるように喉の奥を上に引っ張り上げ、のど仏を下に下げます。
 私が、目を白黒させながら先生の指示と格闘していると、「肩の力を抜くように」と先生の指示が追い討ちをかけます。「まるでゴルフのスイングの練習をしているようだ」と思い、うれしくなりました。

 ゴルフをなさる方はお分かりになるかもしれませんが、体の動きを人に伝えるというのは本当に難しいものです。ボールをひっぱたく棒(クラブ)の持ち方(グリップ)から始まって、足の開き方、構え方。構えたらクラブを振り上げますが、その振り上げ方(テークバック)、振り上げたクラブを振り下ろすおろし方、ボールをひっぱたく時のひっぱたき方などなど、それぞれに正しい動きがあり、しかもそれらがすべて連動しているのです。あちらを直せばこちらが悪くなるという具合で、ゴルフのスイングを覚えるのは想像以上に難しいことです。
 体の様々な部位が連動して初めて良い結果がでるという点で、発声とゴルフのスイングはよく似ていると思ったのはこのような理由からでした。

 ゴルフのスイングを覚えるにしても、正しい発声法を覚えるにしても、専門家のトレーニングを受けることは非常に有効な手段です。人間は自分自身のことはなかなか見えないものです。見えていない動きを修正することは難しいのです。時には間違った体の使い方を覚えてしまうことだってあります。
 専門家のアドバイスを受けるのは、自身ではなかなか見えない自分の間違った体の動きを矯正してもらうためには重要で、厳しい競争に身をおく一流のスポーツ選手の中には、自分専属のコーチやトレーナーを雇っている人もいます。ビジネスの世界でもコンサルタントを入れて自社のビジネスのやり方を第三者の目で再評価し、改善してゆく手法は一般的に行われています。さて、農業の世界ではどうでしょうか。(花ちゃん)

(2006.4.28)



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