農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

もっと語ろう 子育ての素晴らしさ


 少子化の傾向に歯止めがかかりません。厚生労働省は、日本人女性が産む子どもの平均数を示す2005年の合計特殊出生率が1.25で過去最低を更新したと発表しました。単純に男女の数が同じとみなして計算すると、1世代の男女8人から5人の子供しか生まれないという計算になります。この5人の子供たちは将来8人の老人を支えていくことになるのですから、この国はいったいどうなってゆくのだろうと不安になります。私の暮らす地域では毎年いくつかの町内会が集まって運動会をやっているのですが、その目玉種目である年齢別リレーでは若い世代のランナーを探すのに四苦八苦しています。いつまでこの競技を続けられるか状況は深刻です。

 少子化問題を取り上げたテレビ番組も増えてきました。「自分らしく生きたい」、「年に1回は海外旅行に行きたい」、「子供は教育にお金がかかる」など子供をもたない理由を語る若い夫婦をテレビで見るたびに、イソップ物語のありとキリギリスという物語を思い出します。人生を春夏秋冬にたとえると、20代−40代は「夏」。子育てや仕事に一番汗を流すべき時期だという価値観はすでに古いのでしょうか。やがて来る人生の秋と冬を幸せに過ごすためには、「夏」をいかに過ごすかにかかっています。子育てと自分を大切にすることは決して両立できないことではないはずです。そのためには、日本の社会全体が社会として次の世代を育てることの大切さを共有し、それをサポートする仕組みを持つ必要があるのではないかと思うのです。

 欧米では1970年代に日本よりも急速な少子化を経験しています。しかし、1980年代に入るとスウェーデン、デンマークで、1990年代にはフランスやイタリアでも出生率が上昇に転じました。これは託児所の整備、企業の支援制度や男女の育児分担、子育て世代への財政的支援・税制優遇などに取り組んだ成果とされています。例えば、フランスでは3人の子どもを9年間養育した男女に年金額を10%加算するなどし、出生率を94年の1.65から02年に1.88に回復させました。次世代を育てることが社会の責任だという立場が明確で、なかなかいい仕組みだと思います。

 私の周りにいる多くの夫婦は子育てを楽しんでいます。彼らは、子供を育てているというより親のほうが育てられていると感じる、といいます。子育てをしながらあたかも自分自身の成長の軌跡を追体験するこの感覚は、子供を持たなければ経験できないことかもしれません。また、子供を通じて地域のコミュニティとの関わりが深まります。しかし、何よりも子供といると理屈を抜きに楽しい。仕事で疲れていても、子供の顔をみると疲れを忘れます。ともすると子育ての大変さにばかり目を向けがちですが、子育てのすばらしさをもっと語って若い世代に伝えてゆくことも、出生率回復につながると思います。 (花ちゃん)

(2006.6.9)



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