農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

カメラと笑顔


 2年前に買ったデジタルカメラを売って、最新型のデジタルカメラに買い換えた日、ふと初めてカメラを買ってもらった時のことを思い出しました。
 私が初めてカメラを買ってもらったのは、大学に合格したときでした。父と一緒にカメラ屋へ行き、一眼レフカメラを買ってもらったときには、本当にうれしくてたまりませんでした。
 当時のカメラは、(今でもマニュアルのカメラはそうですが)明るさや撮影対象に応じて絞りやシャッタースピードを選ばなければならず、誰にでも簡単に撮影ができるという代物ではありませんでした。

 絞りやシャッタースピードを気にしなくても写真が撮れるオートマチックのカメラが発売され、写真が少し身近なものになりました。初期のモデルはフィルムの自動装填機能がついていなかったので、カメラ屋さんはサービスでフィルムの交換を行っていました。カメラ屋さんの店頭で撮影の終わったフィルムを現像に出す。ついでに新しいフィルムを買うと、自分で装填できない場合にはカメラ屋さんがフィルムを装填してくれました。そのうち、フィルムの自動装填、自動巻上げも当たり前になり、こんな風景も姿を消しました。

 写真をさらに身近なものにしたのは、使い捨てカメラの登場でした。フィルム式のカメラよりも写真1枚あたりの単価は割高ですが、軽いし撮影も簡単。旅先でも容易に買えるとあって、大ヒットしました。精密機械ではないので、気を使わないで扱える。そんな気楽さが受け、若い女性を中心に大人気となったのです。写真の出来そのものよりも、友達と一緒に写真を撮るという行為を楽しむ。そんな新しい文化が生まれました。デジカメ全盛時代となった今でも、使い捨てカメラは生き残っています。

 最近のデジカメの進歩には目を見張るばかりです。画像のきめ細かさを示す解像度は、5年ほどの間に、どんどん精密になり、ついに1000万画素を超えるモデルも発売されました。フィルムを用いるカメラの場合は、現像してみるまで写真の出来栄えがわかりませんでした。しかし、デジカメは撮った写真を液晶画面ですぐに確認できるので、失敗写真に泣かされることも少なくなりました。撮影後すぐに出来を確認して、映りが悪ければ撮り直せばOK。失敗を気にしなくてもいい。それがデジカメの最大にメリットではないでしょうか。

 19世紀に誕生したカメラは、この30年間に目を見張る技術革新を経験し、いまや単なる映像を記録する道具から、人々の心を豊かにする道具へと進化を遂げました。私たちがカメラを構えるとき、その周りには常に笑顔があります。撮影された写真を見る人々の顔にも幸せそうな表情が溢れています。カメラというのは本当に面白い工業製品だと思います。写真を自由に撮れる世界。写真を撮りたいと思うような楽しい出来事で溢れている世界。私たちが暮らしているこの世界が、できるだけ多くの笑顔で満たされるよう、心から願いつつ、買ったばかりの最新型のデジカメで娘の笑顔を撮影しました。(花ちゃん)

(2006.7.12)



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