農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

「公平」なサービスとは?


 北海道の空の玄関、新千歳空港から札幌へ向かうのに、私はいつもJR北海道の快速エアポートを使います。この快速電車は通常の運賃のほかに300円支払うと、指定席に座ることができます。
 座席こそ特急電車のそれに比べると質素ですが、パソコン用の電源が座席ごとに用意されており、なかなか行き届いた車両です。新千歳空港駅の改札を抜け、地下ホーム行きエスカレーターを降りると、すぐのところに指定席車両が停まっており、ホームを歩かずに乗り込めます。札幌駅に到着した際も、階段に一番近いところにこの車両が着くように停車します。
 私の友人たちも、「300円でこれだけのサービスが受けられるのだったら安い!」と、新千歳空港から札幌への移動の際には指定席を利用しています。

 これと対照的なのが、JR東日本の管轄する常磐線の特急フレッシュひたちです。この電車は11両ないしは14両編成と長いのですが、階段に近い真ん中あたりに自由席車両を集めてあり、指定席は両端に配置してあります。1両が20メートルくらいですから14両で280メートルあります。ホーム行きのエスカレーターは5両目の自由席の前に出ますから、指定席が14号車に当たろうものなら180メートルほども歩かないとたどり着けません。しかも、目的地に着いたときにも改札まで100メートル近く歩かされるのです。高い指定料金を払っているのに、釈然としないものがあります。どうしてこんなことが起こるのでしょう。それは顧客サービスに対するJR北海道とJR東日本の考え方の違いを反映しているといえるでしょう。

 北海道は観光や出張で利用する顧客が多く、JR北海道の姿勢からはゲストをもてなすという精神が強く感じられます。それに指定席料金を払ってくれた顧客を払った金額に見合う扱いをしようとしています。それに対して利用者のほとんどが通勤客であるJR東日本にはもてなしの心はあまり感じられない。大量の乗客を時間通りに運ぶことにエネルギーの大部分が注がれているのでしょう。フレッシュひたちの車両編成も、指定席を買ってくれた顧客へのサービスという観点よりも、ホームでの人の流れ、導線をスムーズにすることに重きをおいて考えられているのだと思います。やっぱり都会は世知辛いですね。

 顧客との末永い関係を築くためには、顧客を平等に扱うのではなく公平に扱うというのがセオリーになっています。したがって、多くの企業は上得意へのサービスを強化して囲い込もうとしています。一般には上位20%の顧客が売り上げの80%をつくりだすといわれているからです。世の中が得意客の囲い込みを強化している中、JAもこれまでどおりではいられないはずです。農家の声に耳を傾け、公平なサービスとは何かを考え直すときだと思います。(花ちゃん)

(2006.10.20)



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