農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

バイオ燃料ブームと私たちの暮らし


 風が吹けば桶屋が儲かる。「バイオエタノールのせいでオレンジジュースが値上がりする」というニュースを聞いたとき、頭に浮かんだのはこの言葉でした。風が吹くと砂ぼこりが出て盲人がふえ、盲人は三味線をひくのでそれに張る猫の皮が必要で猫が減り、そのため鼠がふえて桶をかじるので桶屋が繁盛する。「そんな馬鹿な!」と言いたくなりますが、オレンジジュース値上がりのからくりはどうなっているのでしょうか。
 かんたんに言うと、「地球温暖化を防止するため二酸化炭素の排出量削減などの環境規制が強まる、そのためバイオエタノールの需要が高まり、原料であるサトウキビ値段が上がる、農家はオレンジからサトウキビに転作したためオレンジの生産量が減りオレンジジュースの値段が上がった」ということのようです。地球温暖化と代替燃料問題がオレンジジュースの値上がりにつながるとは想像もしませんでした。

 バイオエタノールというと新しい技術のように聞こえますが、サトウキビやトウモロコシなどを発酵させてエチルアルコールを作るということならば、原理はお酒の造り方と変わりません。ガソリンに混ぜて売っているのは、そのまま売ると薄めて飲んじゃう不届きものが出ることを心配しているのかなと勘繰ってしまいます。「お酒と一緒なら、お米や芋でも造れるだろうな」と友人と冗談交じりに話をしていると、JAみやぎ登米でバイオ燃料用の多収穫米の生産に乗り出すというはなし。コストが見合うかどうかが問題ですが、やっぱりお酒が造れる農作物なら何だって良いようです。
 現在、全世界の生産量の70%を生産しているブラジルとアメリカでは、サトウキビとトウモロコシが使われているため、砂糖や小麦粉、それらを使った製品、トウモロコシを餌としている鶏や牛が生産する卵や牛乳の価格も高騰していると伝えられています。

 バイオエタノールの原料となる植物は温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収します。もちろんバイオエタノールを燃料として使ったときには二酸化炭素がでるのですが、京都議定書では、もともと原料になる植物が大気から吸収したものを大気に戻しただけと考え、排出量をゼロと考えます。ブラジルの全耕地面積6000万ヘクタールのうちの約1割の600万ヘクタールを超える面積がサトウキビの栽培に用いられていますが、二酸化炭素の排出量削減目標達成のため、先進国がバイオエタノールをこぞって輸入すれば、バイオエタノールの価格、ひいては原料となる作物価格の高騰を招き、更なる転作を助長することになるかもしれません。そうなると、深刻な食糧問題へとつながる可能性もないとは言えません。
 65億の人間を食べさせながら、十分なバイオ燃料の生産が可能でしょうか。短期的な利益ばかりを追いかけていてはたいへんなことになるような気がします。私たちは今、暮らし方そのものを見直す転機にさしかかっているのかもしれません。(花ちゃん)

(2007.6.14)


社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。