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コラム
砂時計

米国式経営に黄信号−自力で責任果たす時代に

 日米のバブル―――アメリカ式経営に黄信号がともっている。間のわるいことに、10年以上も前に、バブルがはじけたわが国経済が、なんとか再生のきっかけをつかむべく、年功序列制度にしろ慣れ親しんできた日本的経営に決別し、アメリカ式経営に移行しつつあるまさにその最中にである。
 昨年のニューヨークのワールド・トレード・センターへの攻撃は、外部の力による物理的な攻撃でしたが、今回は、自国の内部から爆発した。序章としては、エンロン社をめぐる経営者と監査法人への不信でしたが、一社だけの単発の爆発でなく、夏の夜空の打ち上げ花火の如くと言うよりむしろ、にきびの如く次々とふきでてきた。こうなると、世界に誇るアメリカ式経営には、構造問題があり、根がふかいと言う見方が強まり、アメリカ経済の見通しひいては日本経済への影響について不安感が強まっている。すなわち、日本が後を追っていたアメリカが、期待に反して、わが国のバブル崩壊への道筋を辿っているのではないかという見方である。
 わが国の場合、バブル期の経営者は、夏期休暇もとらず、闇雲に働き、株主への配当は低く抑え、内部留保に励み、資金コストも資本コストも、なぜかあまり考えず、山のような借金を恐れずに資産をふやし、ハイリスクーロ―リターンの海外投資にも全力投球をしてきた。これだけでも、やたらに数字をマニュアル化して経営するのが好きなアメリカ式とは違っていました。
 もっと違うと思うのは、経営者の報酬が、かの国と比べれば圧倒的に低かったし、また、自社の株価に対する経営者の関心が、当時は、今よりは大分薄かったように思います。日本の場合、特定少数の安定株主を確保してさえいれば、目先の株価の動きに神経質になる必要がそれほど無かったし、最初は間接金融が主体であったから債券市場に今ほど気を使わないですんだのでしょう。従って、株価維持のために、粉飾決算をするという動機もあまり無かったはずだし、仮にしたとしてもアメリカの機関投資家と違って、日本では、監査役や監査法人はともかく、永年の安定株主であり取引関係にもある金融機関の目はごまかせなかったのではないかと思います。もっとも、金融機関が共犯と言うことになれば、話はまったく逆になりますが。日本は、土地バブル、アメリカは、I/Tバブルともいわれますが、バブルの後に政府が打ち出した対策も含めて、日米を比較しながら見ているとお国柄の違いが如実に出て興味がつきません。
 いずれにせよ日本の経営が、アメリカを見習い株主/株価重視路線に切り替え中に、本家の方で株主や株価を欺く経営が次々と発覚してきたのは皮肉ですが、そもそもアメリカ式が万能薬ではないことは当然ともいえます。これは株式会社というシステムの制度疲労ではないかという指摘もありますが、株主と経営者の関係がいかにあるべきかについては、これからも試行錯誤が続くのでしょう。
 いずれにせよ、太平洋戦争後、57年という歳月が流れ世代も替わり戦場での恩讐は歴史の一部になりつつありますが、国民が受けたトラウマというか心の傷は、世代を超えてDNAに組みこまれたようなところがあります。普段は、アメリカの云うままに考え、行動する反面、時に、猛烈な反米感情がふきだす素地もあるように思います。これは、どちらも幼児的な行動パターンです。そろそろ自力で、日本のみならず、世界経済が円滑に機能し前進できるように責任を果たさなければならないことを、政府だけでなく国民各層がそれぞれの立場で認識しなければならない時期と思います。 (ジョージ)



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