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コラム
砂時計

コンプライアンス・その2

 昨年11月にも、取り上げたテーマですが、今回もう一度取り上げさせてもらいます。消費者に安心してもらうためには、食品添加物にしろ、農薬にしろ監視体制を強化して、違反者に対しては、罰則を強化することは必要だと思います。ただし、同時に、生産者やメーカーにとっても、納得性のある一貫した法令にして欲しいこと、また、法令の改正を末端まで浸透させるために、行政当局は説明責任を十分に果たして欲しいことを、前回はお願いしました。矛盾したり、現実的ではないシステムは、いくらつくっても、正直者が損をする結果になったり、ひいては、コンプライアンス軽視の風潮を招きかねないからです。
 たとえば、特定農薬について、農薬取締法改正案のその後の波紋を見ていると心配したとおり、数々の混乱を生産現場に与えており、行政側の事前の研究不足を露呈しているのは残念なことです。
 それはそれとして、今回は、企業が組織そのものを壊滅させるかもしれないリスクを犯してまで、何故、法令に違反する行動をするのか考えてみたい。
 まず、最初のケースとしては、組織内の個人が、個人的な利益のために組織の名前を利用して犯す犯罪です。このケースは、企業も被害者になるわけですから、従来から、企業も組織防衛のために監視体制を作っているが根絶はできないでいます。もっとも、これは、今、問題になっているケースではありません。
 昨今、問題になっているケースでは、企業自身が(全体かその一部かは別にして)犯す犯罪です。もっとも、企業が丸ごと計画的に犯罪行為に走るケースはまったく無いとは断言できませんが、多くの場合は、組織の一部が組織の利益のためにと思って行う犯罪行為です。
 これが、間違った判断であることは、火を見るよりあきらかな時でも、不思議なことにその時、渦中にいるものには分からない。しかも、一度成功すると、その手法が組織のなかに定着し、体内のガン細胞のように組織を拡大していく。企業の枠をこえて業界の慣習にまで成長してしまえば、この慣習に手を染めないものはもはや“馬鹿者”以外のなにものでもない。こうなっても、組織が肥大化してしまっていると、組織のトップはまだ気がつかないことがあります。
 だから、犯罪が発覚して、引責辞任をさせられても、本人は罪の意識がないので意外にさばさばした顔をしている人をみかけるし、周囲もお気の毒だと同情したりする。肝心のガン細胞の組織は、一時休眠して再起をうかがう。この連鎖を断ち切らなければなりません。そのために、組織のトップがしなければならないことは、辞任することではないと思います。トップの責任は、何が起こったのか、何故起こったのか、どこの組織のどの部署が関与したのかを組織内で徹底的に洗い出し、社内処分を含めて、それを内外に公表することに尽きると思います。
 世間によくあるのは、司直が捜査中ですからという理由でコメントをしない。捜査が終わると、世間にご迷惑をかけたことを深々と頭を下げてお詫びするとともに、最小限の社内処分を“静かに”行い、今後は、再発防止に万全を尽くしますと“決意表明”をして幕引きになることが多い。この“中抜き”処理では、再発防止はできないと思います。結局、企業は“人なり”で、問題を組織にではなく、個人にもどす必要もあります。自分自身の人生ばかりか家族を含めて、経済的にもまた社会的にも大きく傷つく結果になることが明確になれば、誰が会社のために“犯罪者”になるリスクを犯すでしょうか。 (ジョージ)(2003.2.13)


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