農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
砂時計

外国人農業研修生

 昔から輸入品を“舶来品“として珍重し、また、最近では、外国の”ブランド品“に対する過剰なまでの信仰があります。他方で、食料の分野では、国産品に対する嗜好が強い。
 しかし、消費者の国産品志向は、“愛国心”からではありません。ましてや、“攘夷”のような排外思想からでもなく、国の“食料安保”を自覚したものでもない。それは、国産の方が、日本人の口に合っていること、また昨今では安心・安全の点で、輸入品よりも国産品を信頼しているという理由からです。この点を、生産者側は、しっかりと認識するべきであり、消費者の行動が今のまま続くと楽観するのは危険です。
 なぜなら、外国の生産者も、日本の消費者の気に入るような品質を供給する体制を整えるべく、官民あげて日夜必死の努力をかさねているからです。同じ種子を使い、栽培技術も日本から導入し“品質管理”を徹底すれば“国産品”と同等以上の品質ができない理由はないはずです。国産品との違いは、“価格”が安いことだけということになった時に、いくら“原産地”を表示しようと中長期的に、消費者はどちらを選択するでしょうか。
 わが国は世界経済の有力な一員であり、もはや“鎖国”に戻ることなどありえないし、関税などの国境措置で輸入品の流れを止めることも年々むずかしくなっています。戦術で一時しのぎをしても戦略を間違えると戦争は負けです。わが国では、国内の農業・農民を護ろうとする気持ちが強すぎて、逆に、農業・農民の自立を妨げ、弱体化させてきたようなことはないでしょうか。このふたつは、別々の問題として、後者は“所得補償”で護るのが世界の潮流ですし、わが国でも検討が始まっています。
 他方で、農業をひとつの産業としてみた場合、一番弱い部分は、やはり“労働資源”ではないでしょうか。他の産業なら零細としかいいようのない家族労働が主体でしかも高齢化し、さらに後継者難だからです。ここに突破口をつくらないと産業としての農業は育ちにくいことは明らかです。他方で、中国など近隣諸国には、この労働資源がありあまっています。この二つを結びつける努力を急がないといけないのではないでしょうか。すでに、日本から“資本”と“技術”が国外に流れて現地で豊富な労働力を活用し、日本市場のニーズにあわせた生産が農業でもはじまっています。
 まだ、試行錯誤はあるにせよ、チャレンジを続ける限り成功するのは時間の問題です。ですから、わが国の農業の活性化のためには、逆に、若い活力ある外国の労働力を日本で活用できる本格的なシステムを国としてつくるべきだとおもいます。高齢化して労働力不足の農家にとっても、また、規模拡大を図る意欲的な農家にとっても需要があると聞きます。すでに、海外研修生・実習生として、農業関連でも3000人弱を全国で受け入れていますが、この流れをもっと本格的なものにするべきです。勿論、いろいろな問題が付随的に起こるでしょうが、問題はひとつひとつ解決していかなければなりません。目的(戦略)のために対策(戦術)を考えるべき時期だと思います。
 先に、栃木県で中国からの農業研修生を、‘残業’などささいとしか思えない‘違反’を理由にして、中国に送り返してしまった入国管理局のやりかたはそれなりの根拠は当然あるのでしょうが、“木をみて森を見ず”であり、わが国の農業の活路を阻む動きと断ずるのは言い過ぎでしょうか。(譲二) (2003.6.18)

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