農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
砂時計
イラク問題

 大半の日本人は、“アリババと40人の盗賊”は知っていてもイラクで何が起こっても自分とは関係ないとしばらく前までは思っていたのではないでしょうか。それが、今から13年前の“湾岸戦争”では、巨額の軍事費をわが国は分担しました。今回は、資金だけでなく、自衛隊を派遣する仕儀となった。外交問題はたいていの場合、政府の方針と世論が食い違うことは、遠くは100年前の日露戦争の講和条約の時の日比谷の焼き討ち騒動、そこまでいかなくても43年前に樺美智子さんが亡くなった日米安保反対のデモなど事例は数多い。果たしてどちらが正しかったのか、今もってヒトにより評価は違うのでやっかいです。そうではあっても、結論を先延ばしせずに、今判断し、決めてゆかねばならない問題はあるのだと思います。
 わが国では、気の進まない問題には、“善処する”とか、“慎重”に判断するとかあいまいな事を言って、結論を先送りする手を使いますが、このやりかたは国際的には通用しない。“武士道の国”が、“ずるい”とか、ひどいのになると“卑怯”という汚名を蒙りかねない。今回の自衛隊の派遣についても、法律を作るところからはじめて時間をかけて、ようやく派遣命令までこぎつけたわけだが、毎日新聞が先月実施した世論調査によると、賛成が35%に対し、反対が54%だったと発表されています。私は賛成派です。もちろん誰だって戦争には反対だし、こちらは戦争をする気はなくても、テロで殺される危険のあるところへ自衛隊を送りこむことはしたくないに決まっています。したくないことはしないで済むならこんな結構なことはありませんが、個人でも国家でもそうはいきません。
 先日、南米で誘拐され、殺害された被害者はリスクの高い地域へ“社命”で派遣されていたのです。問題があるときは火の粉をかぶらないように、“触らぬ神に祟りなし”と隠れていて、問題が解決してから駆けつけて石油など“いいとこ取り”をする国であってはならないと思います。また、“金”を出せばいいんでしょうという対応では、もはやすまされなくなっていることも認識するべきです。国会の審議で、“派遣”はアメリカへの追従にすぎないなどと野党は批判しているが、そういう考え方自体が自らを卑しめる心根だと思いました。事態を改善するために何ができるかを議論してほしかった。また、まるで呪文のように国連の名前をだすが、国連の実態を知った上で言っているのか、仮に国連が決定したらわが国は、どんなことでもこれに従えば良いと主張しているのか。それとも、その時には今度は“平和憲法”を隠れ蓑にして、“できません”とか“するべきではない”と主張するつもりなのか。結局、何もしないための口実を探しているだけのようです。
 ドイツやフランスなど他国の動向をきょろきょろ右顧左眄するのもどうかと思います。彼らは、歴史的にも中近東地域と深い関わりを持ち、今回もアメリカとの諸々の駆け引きのなかで自国の国益を追求しているだけなのです。所詮、わが国とは立場が違うのです。したがって、わが国も、主体的に考えなければならない。経済的には、アメリカについで、世界第2位の大国であるわが国には、世界の平和に貢献する責任があり、その責任を果たすために行動する義務があります。その上でこそ、米国に注文をつける発言権が生まれるのだと考えます。 (譲二) (2004.1.20)


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