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シリーズ 消費最前線 ―― 全農直販グループの販売戦略 ―― 最終回

提案型営業で 国産農畜産物の売場確保を
JA全農・大消費地販売推進部 河村郁生部長に聞く

 デフレの進行やライフスタイルの変化による消費者の購買行動の変化などを背景に、価格競争による生き残りをかけた熾烈な戦いを展開する食品流通業界のなかで、国産農畜産物の売り場を確保するために奮闘している全農直販グループ10社の販売戦略を取材し、4回にわたって連載してきたが、シリーズ最終回は、JA全農大消費地販売推進部(販推部)の河村郁生部長に、直販事業を取り巻く状況とそれに対する対応策を聞いた。 

トレサビリティーの時代に

JA全農・大消費地販売
推進部 河村郁生部長

――これまでの取材で関係者の方々からは食品流通をめぐる動きとして、牛丼やハンバーガーの思い切った値下げや輸入農産物増大にに象徴される「価格競争の激化」と、量販店のみならず生協ですら再編が迫られているほどの「厳しい生存競争」などが指摘されたほか、意外性のある商品が好まれるなど消費者のライフスタイルの変化がもたらす商品ニーズの変化、さらには富士山型から鉛筆・茶筒型へと形容される「商品のライフサイクルの短期化」といった動きがあることも分かりました。
 そのほかどのような状況と課題が生まれているのか、お聞かせいただけますか。

 河村 まず付け加えたいのがJAS法改正などによる「表示への関心の高まりと品質対策」ですね。
 ここのところ安心・安全ニーズ対策が非常に大きくクローズアップされ、がぜん熱気をおびてきています。現在、関係役員をはじめとして販推部関係者がメンバーになっている農水省や公的機関などの審議会、検討会は21もあるんです。それは直接JAS法に関わるものから有機農産物、外食産業、フードシステム、原料問題など多岐にわたり、そのほとんどが、品目横断型で、農業全体あるいは食料としての国産農畜産物をどうするかという立場でのものです。
 また、品質事故は一発で命とりになります。HACCPやIS0も大事ですが、これからは栽培・飼育工程と使用資材・飼料はもとより、処理加工から流通・消費に至る一連の履歴を遡及・開示できる、いわゆる「トレサビリティー」の世界だと思います。これはユーザが求めてきていることです。

提案型営業で伸びている直販事業

 河村 このように、消費・流通サイドから安全や安心の科学的根拠を示せる国産物への期待が高まっている一方、反面で価格面での厳しさも増大していることも認識しなければなりません。
 量販店などユーザはあくまで事業ですから、当然、売上増と利益確保を最大目標とします。さらに、同じ商品であっても、個々の経営政策や商品政策に沿った、他とは一味違う具体的な提案を期待しています。そのために、チームマーチャンダイジング(MD)などによる提案型営業が求められています。

 ――直販事業としては、チームMDをはじめユーザニーズに応える事業を展開してきていると思いますが…。

 河村 ここ数年、事業拡大に直結するようかなり意識的にそういう活動をしてきました。その結果、全農全国本部の販売事業に占める直販比率は、11年度の9.9%から12年度には12.6%、金額ベースで3000億円近くになっています。
 取引先は400社近くに及びますが、そのなかでも重点的に取組んでいる30社では、9年度を100とすると、11年度125、12年度134と着実に増えています。

商品・仕組みに消費者に訴える「物語性」を

JA全農グループは今年3月に
千葉・幕張メッセで開催された
「FOODEX JAPAN2001」に出展した

――そうしたなかで、これからどのような事業展開を考えているのでしょうか。

 河村 いままでの段階からもう一歩でも二歩でも前進して、ユーザニーズ、消費者の動きをキッチリととらまえて、国産物の売場をどう確保し常置していくかだと考えています。一律一価で全国のどこかで買ってくださいということはなかなか通用しません。いろいろな業態の商品政策、経営方針を十分把握して、それにあうような国産物の提案をしていかないと、売場は確保できません。
 そのためには、売場の意向や実態を日常的につかむとともに、産地と緊密な連携のもとに一体となった提案をしていく必要があります。

 ――提案型営業をするときのポイントは何ですか。

 河村 どの業態のトップにお会いしても、必ず異口同音にいわれることは、先程述べたトレサビリティ、すなわち「商品の履歴」を明確にすることに加え、「国産物に何か物語が欲しい」ということです。この品物はどういういわれがあり、どういう地域特性をもち、どういう作り方をされたのか、そしてどんなキャッチフレーズがあるのか。つまり、消費者に訴えるものが何かを、具体的に分るように提供してくれ、ということです。それを個々の取引先のポリシーやニーズに合致した内容でどう応えるかが、売場を確保する前提条件だといえます。

 ――それが、輸入物と対抗する手段でもあるわけですね。そのためには、いま何をしなければならないでしょうか。

 河村 輸入物と対抗するにはコストダウンは大きな課題ですが、一方でこうしたユーザーニーズをふまえた「物語性」とか「地域性」をよく認識して提案していかないと売場を失いかねません。われわれは直販事業強化のため(1)総合販促、(2)商品開発、(3)品質管理、を3本柱とする取り組み方向を打ち出し中期構想でも随所に折り込んで事業を展開しているところです。
 今後は、さらにブランド管理・品質チェック機能、人材(営業マン)育成機能、関連会社の再編や物流拠点の再整備、独自の検査認証を活用したシステム的な循環型農業の導入等に関わる制度・体制を確立するとともに、エリア別営業機能を強化していきます。

地域特性にあわせた品目横断的なエリア別営業を強化

 ――エリア別営業機能の強化とはどういうことですか。

 河村 ユーザーは生協の地域事業連合化のように、県域を超えたブロック単位の事業体が流通の主役になりつつあります。
 こうした動きに対応したエリアごとの体制強化が課題であり、現在、首都圏、中京圏、近畿圏、東北圏で「直販代表者会議」を設置して活動していますが、今後これをさらに充実・発展させ、状況に応じ県本部への参加も呼びかけていきたいと思っています。

 ――最後に全国のJAの皆さんに一言お願いします。
 
 河村 全農は「もっと近くに。」をキャッチフレーズに限りなく生産者や消費者に接近した事業に積極的に取り組むことにしています。
 直販事業の側面からみるとJAは、それぞれの立地・特性を活かした「地産地消」を具体的に実践していただきたいと思います。
 また、大消費地向け販売をめざすにも、品物に対する絶対的な自信と訴えるものを持ってニーズに対応することだと思います。そのときに産地とユーザをつなぐジョイントベンチャーがわれわれの基本機能と考えます。
 いまの時代、「お願い」だけではお客さんは絶対に買ってくれません。輸入物と対抗するには、国産物の位置を理解してもらう商品提案やサービスの提供が重要な要素です。したがって、ユーザの意向を聞いて、作る立場からも訴えるものを持ちつつ、「売れるものづくり」を着実に実践していくことが、生き残りのカギを握っていると考えます。


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