農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 第50回JA全国女性大会特集号 農業の新世紀づくりのために

インタビュー 「農村女性の力に期待します」
JA女性組織の力は地域農業改革の中核
技術研修を女性にも 仕事の領域拡大求めて
宮田 勇 JA全中会長
インタビュアー:フレッシュミズ 守川千穂さん

 今年のJA全国女性大会を前に、フレッシュミズの守川千穂さんがJA全中の宮田勇会長にインタビューして「農村女性の力に期待します」をテーマに話を聞き、会長からJA女性組織にエールを贈ってもらった。冒頭には、会長のざっくばらんな家庭内の話も出て、話題はJAの販売力強化とか遊休農地の活用などにも及んだ。なお守川さんは先の「フレッシュミズの主張」全国コンクールで最優秀賞を受けている。

◆何でも話し合う夫婦

宮田 勇 JA全中会長
宮田 勇 JA全中会長

 守川 きょうは、会長インタビューということで、熊本のいなかから東京に出てきました。よろしくお願い申し上げます。

 宮田 私の家も北海道のいなかですよ。純農村地帯です。

 守川 私の嫁ぎ先は家族6人です。仕事は夫の両親と私たち夫婦計4人で米、麦、大豆、花苗を作っています。夫婦のモットーは「何でも話し合えるようにすること」です。

 宮田 それは一番大事なことです。

 守川 会長はご家庭で、奥様と、どんな感じで会話をされているのか、ちょっと聞いてみたくなりました。いかがですか。

 宮田 家族は、家内と息子夫婦、孫3人の計7人です。農業経営の中心は息子夫婦ですが、私のほうが、先輩ですし、時々は仕事を手伝っていますから、目についたことを息子に指摘したりすると、家内から「日ごろ家にいないで、よけいな口出しはやめなさい」などと小言をいわれます。まあまあ息子はうまくやっていますからね。
 作物は米を中心に転作の麦と大豆、小豆、それに季節の野菜も作っています。

 守川 「農村女性の力に期待する」というテーマに入りますが、女性も農業者として自立していかないといけない、変わらなければならないと考えております。JAのほうでは基本的にどうお考えですか。

◆女性も機械の操作を

フレッシュミズ 守川千穂さん
フレッシュミズ 守川千穂さん
 宮田 農家は一般企業と違って家族全体で農作業に携わっているのが特徴です。女性も仕事に携わらないと男性の力だけでは経営が成り立ちません。
 女性のそうした役割をJA経営においても最大限に認識し、女性と一緒になって仕事を進めていくために女性のJA経営参画が強く期待されています。
 一昨年のJA全国大会でも、女性組織をより強く大きくする活動の強化と、経営参画を支援し、参画を受け入れる体制を整えていこうという2点を前面に打ち出し、決議しました。
 女性たち、とくに活動の主体となるフレッシュミズのような若い方々に経営参画の意識を強く持ってもらって実践していただくことを期待しています。

 守川 現場からの私の提案ですが、農業人口が減少している今、男性がいないと作物の管理ができない状況は問題です。男性主体となっているトラクターやコンバインの操作、農薬散布などを女性でもできるように、JAが機械や技術の講習会をやってほしいと思います。

 宮田 夫がほかの仕事に手を取られている場合、妻がトラクターなどを運転し、それで仕事全体がうまくかみ合って進む場合も現実にありますね。またハウスの換気などもマスターすれば結構やれます。
 そういった面から、経営体の中枢を担うフレッシュミズたちを対象にした講習会を考える必要がありますね。JAで技術を教えられるように、その基本づくりを検討したいと思います。

◆婿さんが間に入って

 宮田 作物栽培の研修では夫婦同伴の参加を呼びかけることも多いのですが、確かにJAの技術指導には青年部などを対象とする傾向があり、女性の力に期待する面が欠けているかもしれませんね。
 自動車の運転に男女の技術差はないし、農機もほ場に合わせておけばよいのだから、効率的な経営を目指すには女性の技術習得も重要です。また仕事の領域を、より総合的に拡大したいフレッシュミズの気持ちや意識の高まりもよくわかります。

 守川 機械だけでなく、経営や生活の全般について、もっと勉強したいのです。若い時に疑問を抱いた事柄も、年輩になって、その生活に慣れてしまうと、それが普通だと思い、問題意識がなくなりますから、早いうちに研修会などにどんどん参加したほうがよいと思います。

 宮田 農家の姑は自分の経験を嫁に教えます。それは良い面もあるのですが、家風とか何とかいわれると、嫁には疑問が湧きます。そういう話を家庭内できちんとできる雰囲気をつくるのは婿つまり息子の役目です。うちは2人目の孫が乳離れした時、息子を中心に姑と嫁がよく話し合い、役割分担の変更などもスムースにいきました。
 昔と違うのだから、嫁もはっきりとものをいい、理解を深め合う積極性を持つことが大事でしようね。そういう時代だと思います。陰でしゃべると、つむじを曲げられたりします。
 もう一つ、嫁のほうはフレッシュミズの組織の中で、どうしたら自分の意見を経営や生活に反映できるか、先輩たちの意見を聞いて勉強することですね。グループの話し合いはプラスになります。それを家庭内で活かしていけば良いと思います。

◆家族協定の見直しを

 守川 確かにJA鹿本女性部にフレッシュミズができて、みんなも私と同じような思いをしてきたことがわかり、それが力にもなっています。
 我が家では夫と父が家族経営協定を結んでいましたが、私が嫁いでから、これを見直し、家族全体の協定にしました。私はハウスを受け持ちたかったのですが、子どもが小さいので難しく結局、JAの直売所「ふれあい市場」への出荷代金を私個人の取り分としました。
 農家の嫁は小遣いに不自由するというマイナスイメージがありますが、収入があると働く意欲がまた違ってきますね。
 鹿本町全体でも協定見直しの運動が起こり、私たちのグループは寸劇などもやりました。

 宮田 収入による意欲は、作物の品質向上につながるし、また子どもの物を買ってやれるといった張り合いもできます。
 昔の農家は家父長が高齢になっても財布を握っているため息子が50歳を越えても経営の実権を持てないといったのが実情でしたが、今では、家族が平等な立場で、家族の役割を明確にし、働きやすい環境が整えられるようJAグループとしても家族経営協定の締結を勧めています。

 守川 次に、農産物価格の問題ですが、私たちの草花部会は、JAがホームセンターなどと直接契約して売り先を持ち、価格が安定していますが、ほかの作物ではJA直売を増やす話し合いもしています。
 ところが他県の仲間は、それをうらやましがり、JAへの全量出荷で価格は低迷したままだなどというのです。全国のJAはもっと売り先や直売を広げられないのですか。どうですか。

◆経営参画の後が大事

 宮田 私の地元のJA女性部はAコープに「もぎたてコーナー」を設け、手芸品まで品ぞろえするという売り方で好評を呼び、隣の江別市内からも売場を設けたいと注文がきて直売拠点を広げています。既成ルートによる大量販売も大切ですが、JAはもっと積極的に特色のある売り方や直売拠点の拡大など、有利販売を工夫して、生産者の手取りを多くしていくことを考える必要があると思います。

 守川 女性としても、例えばトマトを売るだけでなく、ケチャップにして付加価値をつけるなど女性特有の工夫を活かすようにしたいと思います。

 宮田 フレッシュミズは経営の中核として地域農業の今後をストレートに考える年代です。だからJA経営に参画した後は女性たちの意見をまとめ、それをJAに反映させて変革を進めてほしいと思います。というのはJAの役員たちには経験主義も見られますから、参画した後が大事なんですよ。

 守川 話題は変わりますが、農地を持たない人から「私も野菜を作って直売したいな」という声を聞いたりします。農業に参入したい人が増えていますが、どうお考えですか。

◆JAに働きかけて

 宮田 高齢化が進んで不耕作地が増えていますから、それを町の人たちに貸せばよいと思います。市民農園とか、いろいろな形があります。家庭菜園が広がれば、それによって農業への関心や理解が広がります。
 女性部としては、余っている農地のことを話し合い、それをまとめてJAに借り上げさせるように働きかけて下さい。

 守川 最後に、農村女性、JA女性組織へのメッセージをお願いしたいと思います。

 宮田 農業は女性と男性が協力してこそ最大の効果があがります。個々の経営体と、地域の農業が発展するかどうかは女性の力にかかっています。
 とくにフレッシュミズは、どうしたら今よりも良くなるかという気持ちを絶えず持って農業に携わっている年代です。それだけに地域農業の活性化や改革に関心を持ち、それに取り組む実践力があります。私はそこに期待しています。
 また3人寄れば文殊の知恵といわれる通り、一人で考えるよりも、みんなで考えるほうが良いのですから、グループ化が大切です。そのほうが力もぐんと大きくなります。
 そういう女性グループの力がなければ、地域は高齢化が進む中で大変なことになります。地域の中核として自信を持って大いにがんばって下さい。JAグループも、それを支援します。

インタビューを終えて

 「フレッシュミズの主張」全国コンクールでは大会場で作品を発表した守川さんだが、全中会長との対話では緊張した。しかし会長の家庭の話がざっくばらんで、すぐに硬さはほぐれた。「暖かみを感じた」と守川さんは会長の印象を語る。「話しやすかった」ともいう。そのせいか、途中から、質問や提起が時に単刀直入となった。現場の人特有の具体的な話法だった。会長は、それに真正面から「答えてくれたと思う」と守川さん。「女性の自立や、またフレッシュミズを応援して下さる言葉が多かったのも大変心強かった」ともいう。守川さんからは「フレッシュミズとJA青年部の組織合同」という大胆な発想も飛び出したのだが、行数の都合で本文では割愛させていただいた。しかし会長の助言に沿って「帰ったら早速、青年部と話し合って、目的を同じくする行事や活動は今後、共催で一緒にやっていきたい」と語る。また農業簿記のパソコン化など当面の課題も挙げた。(編集部)

(2005.1.18)


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