農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 売れる米づくり戦略とJA全農の米事業改革

17年産の集荷・販売対策

生産者が安心して米づくりに取り組める米穀事業の展開をめざす


 米政策改革初年度の16年度は、(1)JA米による信頼の確立、(2)実需と結びつけた取引きの拡大、(3)契約観念をより徹底させた生産者との出荷確約契約の3つの柱に取り組んだ。
 なかでもJA米の取り組みでは、178万トンの集荷実績となり目標の100万トンを大幅に上回った。実需と結びつけた取引も増加したほか、出荷確約契約でも一定の成果を上げた。
 ただし、JAグループ全体の集荷率は49.5%にとどまり、価格の低下も続いている。こうした情勢のなか、生産者が安心して米生産に取り組めるよう需給と価格を安定させ、年間を通して安定的に消費者に供給していくことが一層求められているが、JAグループでは「集荷率を向上させ米流通の太宗を担う」ことで需給・価格の安定と安定供給の役割を果たさなければならないとしている。JA全農米穀部の中地次男事業対策課長に「17年産の集荷・販売対策」を聞いた。


◆生産者が安心できる米づくりをめざす

――最初に現在の米をめぐる情勢をお聞かせください。

 3月末現在の集荷実績は392万トンとなっていますが、この数字にはJA直売数量が一部しか含まれておりません。そこで全国本部では検査実績などから集荷状況を推定し、JA直売数量は57万トン程度をあるとみておりJAグループの集荷量としては432万トン、集荷率は49.5%と考えています。
 こうした「売れる米」づくりを背景としたJA直売の増加や、卸業者が産地を囲い込むといった多様な流通が拡大しています。ただ、一方で需要の減退、小売価格の低位固定化などによって、卸業者が15年産米を中心に大量に在庫を抱えているため、価格の低下、販売の低迷が続いている状況です。

16年産米の集荷実績


――厳しい状況ですが17年産の集荷・販売対策にはどう取り組みますか。

 16年産の取り組みをさらに強化することが基本ですが、17年産米の課題として4つの柱をあげています。
 1つは、JA米への取り組み強化・拡大や消費者から求められる安全・安心対策の強化など「信頼される米づくりによる競争力強化」です。2つめは生産者とJA、JAと連合会の間での出荷確約契約の拡大、JA直売のルールづくりなど「生産者・JAとの結びつきの強化」です。
 3つめが事前年間契約の拡大など「販売先との多様な方式による契約取引の拡大」。そして、4つめが「担い手への対応強化や買い取り販売実施による取扱数量の確保」です。


信頼される米づくりで競争力の強化を

◆JA米生産目標200万トン

――全国410JAを対象にした本紙のアンケート(4面〜5面)では、JA米の取り組みが16年産の58%から17年産では72%と拡大する結果となっています。本紙アンケート結果への評価とJA米の普及推進の方針をお聞かせください。

 16年産で計画を大きく上回ったことも驚きですが、17年産で取り組みJAがさらに拡大していることは、これまで行ってきたJA米確立のための取り組みが産地に急速に浸透しつつあることを実感させられ、JA米普及の速さに大変驚いています。しかし、このアンケート結果に満足することなく、JA米研修会の開催等を通じ、産地、生産者に対して品質管理の取り組みや栽培履歴記帳の徹底を行い、さらなるJA米生産の拡大を目指します。また、取引先、消費者へのJA米普及対策としては、JA米ホームページの開設を計画しています。
 さて、17年産米ではJA米を全国200万トンを目標としていますが、JA、県本部・県連段階では、栽培履歴記帳実績や種子の供給体制を十分に考えて、地域・銘柄別に目標数量を設定することにしています。
 また、JA米の要件である(1)銘柄が確認できた種子により生産された米、(2)国および登録検査機関で受検した米、(3)生産基準に基づき栽培履歴記帳が確認された米、について生産者、JAで改めて確認し周知徹底を行うことも重要であるため、栽培履歴記帳数量としては300万トンを目標としています。
 それからJA米と一般米とは区分して出荷契約を結び、検査から入庫、出庫まで、JA米の区分管理にJA・県段階で取り組むほか、JA米マークの使用やシール枚数についても適切に管理することとしています。

◆早期販売への取り組み

――「JA米」の販売対策はいかがですか。

 JA米に対する消費者の認知度を高めるため、消費者への精米販売に取り組みます。商標使用にあたっては「JA米商標使用許諾要領」にもとづいて、商標管理を厳格に行います。
 入札販売ではJA米上場を基本とします。また、出荷確約契約されたJA米については事前年間相対契約、または特定契約による早期販売に取り組む方針です。そのほか、JA米のうち生産・加工・流通の履歴情報の確認と第3者機関の認証が可能な「全農安心システム米」について産地と連携した年間契約を推進し、拡大を図ることにしています。

――安全・安心対策はいかがですか。

 「残留農薬等を対象に安全検査基準、検査手順、チェック体制について全中、県本部などとも連携してJAグループの指針を策定し消費者の求める安全・安心に応えることにしています。
 また、異品種の混入(コンタミ)防止では、JAは収穫・乾燥・調製の各段階における分別管理について、マニュアル等を作成し徹底を図るほか、全国本部では、カントリーエレベーター運営マニュアル作成の推進、施設運営の改善指導に取り組むほか、意図せずに異品種が混入した場合の許容限度を定めることについて国などと協議していきます。


生産者・JAとの結びつきを強化

◆出荷確約契約の充実に取り組む

――生産から販売まで生産者、JAとの結びつきを強化することも課題となっていますが何がポイントですか。

 販売を起点とした事業への転換のために、連合会はJAに取引先別の評価など需要情報を発信し、それに基づいて出荷契約前に県別銘柄別の集荷販売計画を、さらにJA段階での銘柄別・用途別生産販売計画を策定していくことにしています。
 こうした計画を確実に実現するために重視しているのが生産者との出荷確約契約の拡大です。
 これは計画流通制度の廃止にともなって16年産から導入した新たな契約方式のひとつですが、確実な集荷にもとづいた早期販売に取り組むこととし、その拡大を推進します。
 生産者へのメリット措置としては、仮渡金加算や奨励金の支出など生産者の了解のもとで実施するほか、販売面でも他の米に先駆けて需要者と事前年間契約を結ぶなどの取り組みを行います。
 また、JAと連合会との間でも、確実に需要のある米については出荷確約契約を結び、契約観念を徹底することも重要です。

◆多様な方式の契約を拡大

――そうした取り組みによって 「需要に見合った米づくり」を促進させていくわけですね。

 全国本部では米穀販売センターと県本部・県連等が連携し、量販店や外食なども含めて実需者との多様な取引契約を推進させていく方針です。
 その基本が先ほども触れた取引先と年間必要量を契約する事前年間契約です。目標は出荷確約契約にもとづいて早期販売するものも含めて180万トンとしています。また、産地と販売先などとの結びつきを明確にした特定契約も推進することにしています。

―― 一方でJA直売も増加していますが。

 「これについては今回、ガイドラインを設定しました。JA直売は地産地消を基本とし、連合会に売渡委託する米と明確に区分することや、販売先や数量、価格などについて事前に連合会と協議を行い計画や実績を報告することなどを決めました。


担い手対応と集荷数量の確保も課題

◆「担い手」対応を強化

――生産現場には地域水田農業ビジョンの策定、実践と担い手対応が求められています。米穀事業としてはどのように対応しますか。

 地域水田農業ビジョンで位置づけられた「担い手」について、JA施設の利用状況や集荷状況などを把握し情報交換を行うとともに、17年産では可能な県から担い手ごとの取扱数量目標の設定や販売具体策の策定に取り組みたいと考えています。この取り組みは18年度では全県を対象にする方針です。

◆集荷の基本手法の徹底が大切

――集荷率の向上が需給と米価の安定につながることからJAグループへの期待が高まっています。

 17年産米の取り扱いを始めるにあたって、現場で集荷の基本手法について改めて確認することが大切です。目標設定と進捗管理、役職員一体となった推進などですね。全国本部が作成する集荷推進点検表にもとづき、各段階で点検を行っていきます。
 生産販売計画の策定に始まる取り組み全体を通じて17年度のJAグループ全体の集荷目標数量は445万トンとしています。生産者が安心して米づくりに取り組めるようJAグループの着実な実践が求められていると考えています。

――ありがとうございました。

(2005.6.16)



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