農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 JA全農畜産事業特集 国産畜産物の生産基盤と販売事業の強化

安全・安心な畜産物を提供する事業の強化

畜産生産部 室屋光彦部長


畜産生産部 室屋光彦部長
◆牛専用の飼料工場本格稼動へ

 ――今年度の取り組みの重点課題はなんでしょうか。

 室屋 まず初めに「安全・安心な畜産物を消費者に提供するための取り組みとして、17年度から牛用配合飼料の鶏豚用飼料との分離製造が施行され、全国で体制整備が終わりましたから、それへの対応を確実に行なうことです。
 そして、長年にわたって取り組んできていますが、家畜疾病について家畜衛生研究所のクリニックセンターの検査・指導体制を強化し、引き続き家畜衛生の強化と畜産物の安全性を確保していきます。具体的には、高病原性鳥インフルエンザ対策を含めた衛生管理として、養鶏農場の消毒や野鳥の鶏舎内への侵入防止などの防疫体制を周知徹底していきます。

 ――地域別飼料会社が整備されてきましたね。

 室屋 そうですね。実際に15年度は747万トンを供給しましたし、16年度は752万トン(シェア31%)を目標にしました。ただ、鶏インフルエンザや猛暑の影響により、727万トンにとどまりましたが、今年度は752万トン(同30%)の目標を掲げシェアを上げていく計画です。

 ――営業面を含めてかなり効率的になってきているわけですね。

 室屋 従来のくみあい飼料会社は製造することを一所懸命やっていた会社で、全農・経済連(県本部)・JAで推進していました。
 これが、地域別飼料会社になって、全農は原料を供給し、地域別飼料会社がどういう飼料を作るかを考え、自分で製造した飼料を直接生産者に対応して販売するようになったわけです。そういう意味では、事業を自らのものにすることで、目に見えない力になっていますね。

 ――地域ごとに特色を出しているわけですね。

 室屋 基本的なことは飼料畜産中央研究所で研究・開発していますし、ほとんどの原料はどこの会社であっても同じものを使っていますので、共通部分は同じです。
 しかし、最近は、畜産物に特徴を持たせるために、家畜の種類や飼い方だけではなく、飼料でも特徴を出そうという傾向があります。その代表的なものが、PHF・NON−GMOだといえますね。それ以外でも特徴ある畜産物を生産するための飼料という取り組みが各地域であります。
 そういう意味で、より地域に密着したきめ細かな営業による配合飼料・単味飼料のシェア拡大をはかっています。

◆シッカリした衛生対策で

 ――生産基盤対策の取り組み強化も大きな課題だと思いますが、生産者数は依然として減少傾向ですね。環境対策もありさらに減るのではという予測もありますね。

 室屋 戸数は間違いなく減ってきています。しかし、昨年11月に家畜排せつ物法が施行されましたが、それへの対応は想像していたよりも上手く進んだと私は見ています。まだ、簡易型で対応という生産者もいるので、恒久型に変えていく必要はありますが…。

 ――そういう意味ではそう悲観的に考えなくてもいいわけですか。

 室屋 輸入との関係はあると思いますが、品質や安全・安心面から国産品に対する評価は向上してくると思います。
 家畜疾病が世界的に広がっていることは脅威ではありますが、国内で発生させなければ、国産の有利性を活かすことができるわけです。そういう意味で、衛生対策は、生産者の方が日常的に徹底することが大事だといえますね。
 家畜の疾病は罹れば大きなダメージを受けますが、衛生対策をシッカリやって罹らなければ、生産性は上がりますしね。

◆ハイコープSPF豚100万頭体制実現

 ――ハイコープSPF肉豚の100万頭生産体制の進捗状況はどうですか。

 室屋 今年度が100万頭の最終目標年度ですので、絶対に達成します。

 ――16年度末ではどこまで達成されたのですか。

 室屋 84万2000頭で、今年度末で100万頭をちょっと超える予定です。

 ――牛の受精卵・ET妊娠牛を活用したETセンターの仕事も順調ですね。

 室屋 ETセンターが誕生して7年目を迎えましたが、黒毛和牛を中心とする受精卵は、当初の1800個程度から16年度には7250個を供給するまでになりました。今年度は8000個以上になると思いますね。
 また、受精卵を移植した妊娠牛の供給も、1154頭とフル生産の状況です。当初は受卵牛にセンターの牛を使うケースが大半でしたが、最近は牛を預かり受精卵移植し妊娠させ生産者に戻すケースが増え、1154頭の半分がこのケースです。これだけの規模で受精卵を供給するのは、アジアではこのセンターだけで、世界的に見ても有数の規模といえるではないでしょうか。

◆原料から製品まで全農だからできる飼料事業

 ――飼料原料ではNON−GMO・PHFとうもろこしとかは増えてきているのですか。

 室屋 平成3年から始めましたが、着実に伸びていますね。こうした原料への取り組みは安全・安心への意識の高い生協などが多いわけですから、1度取り組み始めたら継続されます。まだ、新たに取り組まれるところも出てくると思います。
 こういう仕事は、全農で施設を持ち、米国のCGB、全農グレイン、国内での全農サイロ、そして飼料工場がISO9001を取得して品質管理をキチンとしています。そういう意味で全農だからできる仕事だといえます。

(2005.8.26)



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