農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 カントリーエレベーター品質事故防止強化月間スタート

カントリーエレベーター品質事故防止強化月間(9月1日〜10月31日)スタート

CEを「売れる米づくり」の拠点に

現地ルポ JAいわて花巻


 今年も出来秋を迎え、米づくりの生産・販売の拠点であるカントリーエレベーター(CE)が活躍する時期がやってきた。年間を通して食味や品質が均質な米を安定的に供給することを求めている実需者のニーズや、収穫したときの品質を保って販売して欲しいという生産者の希望に応えるために、品質事故の防止はCEの責務だといえる。このたび、利用組合と協力し合って品質事故を起こさないために計画的な荷受けを実践しているJAいわて花巻を取材した。

中央CEの外観
中央CEの外観

◆生産者の意向を集約して ビジョン策定し農水大臣賞受賞

 岩手県のほぼ中央部に位置し、北から南に縦走する北上川を中心に北西部の奥羽山系、東部の北上山地に挟まれた北上盆地にある花巻市・石鳥谷町・東和町・大迫町の1市3町がJAいわて花巻の管内だ。
 この地域は、耕地面積の83%・1万3298ヘクタールが水田という全国有数の稲作地帯だが、野菜・果樹・花きなどの栽培も盛んな岩手県を代表する農業地帯である。
 JAでは米政策改革へ対応するために、155の農家組合を単位として、全集落で農家意向にもとづく集落農業ビジョンを策定。それを集約して「花巻地方水田農業ビジョン」を策定し実践している。生産者の意向をボトムアップする形でビジョンを策定したことと、売れる米づくりをはじめ、実需者との商品開発、産地サポーターの形成、需要創造作目の雑穀・ネギ・アスパラガス・麦などを意欲的に栽培、供給に努力し、面積も急速に拡大していることが高く評価され、7月19日に開催された第1回地域水田農業ビジョン大賞で農林水産大臣賞を受賞した。

◆問われる産地の「売れる総合力」

 管内の米の生産量は、2万1623トンで県内生産の約17%にあたり、JAの販売額の6割強を占めている(16年度)。
 これから「花巻米」産地として確立していくためには、「売れる米づくりの総合力」が問われるとJAは考えている。その総合力とは、(1)実需先との安定的な取引関係の有無(結びつき)、(2)消費者の安心と信頼に結びつく商品管理システム(安全・安心)、(3)良食味・高品質、加えて安定的な供給(産地の信頼)の3つだ。そして、この総合力を評価されて得た販売実績が「作る権利」を得る条件だとしている。
 そしてそれを実現するための販売戦略の拠点としてCEを位置づけている。とくに、花巻米の販売先として、外食産業やCVSや大手量販店の惣菜関係の需要が多く、大きなロットを年間を通して均質で安定的に供給することが求められている。そういう意味で、CE施設を活用して「金太郎飴のように、品質も量も安定的に供給することが基本スタンス」(阿部勝昭営農推進部米穀販売課長)だ。
 最近は、CEのビンを指定した契約が多くなっているという。JAはCEでの荷受ごとにサンプルをとって、食味や品質分析を行ない、そのデータを生産者に返しているが、そのデータを取引先にも提示している。そのデータに基づいてビンを指定することで、品質分析された均質な米が、年間を通して供給されるという安心感が実需者にあるということだろう。

計画的な刈取り・荷受けで
品質事故を防止

オペレーター室
オペレーター室

◆利用組合が支えるCEの運営

 JA管内で作付けされている米のほぼ90%は「ひとめぼれ」で、「あきたこまち」が7%と、1品種に集中している。そしてその98%がJA米だ。1品種に作付けが集中していると、収穫時期も集中し、結果として過剰荷受となり、事故を起こす原因となりかねない。
 CEを指導する米穀販売課の畠山譲さんも「一番怖いのは、荷受の量と水分」だという。過剰荷受による事故を起こさないために取られているのが、計画刈り取り・計画荷受けだ。
 JAには、CEが5施設(今年度からは6施設)とライスセンター(RC)が2施設ある。そのうち花巻地域にある中央、西南CE(今年度から東部CEが加わる)と矢沢RCは、サテライト方式を取り入れ、利用組合方式で運営され、JA総販売量の約40%(利用率75%)をカバーしている。
 利用組合には7つの支部があり、各支部は集落利用組合で構成されている。そして集落利用組合には複数の刈取り班がある。
 JAは生産者から提出された利用申し込みをもとに、支部ごとの刈取り・荷受計画を策定し、利用組合と協議して決定する。それに基づいて各支部が集落ごとの計画をつくる。荷受が混雑する土日は面積割り当てした搬入チケットを出し、チケットがなければ荷受けしないことにしている。これを「食券方式」とJAでは呼んでいる。
 コンタミ問題も最近の大きな課題だが、幸いにも作付けの9割がひとめぼれなので、異品種の混入問題はほとんどない。ただ、減農薬米など栽培方法の異なる米があるので、それらは荷受け計画の段階で荷受け日を分けることで混入を防いでいる。中央CEでは、「減農ひとめ」という立て札を立てた荷受ホッパーがあり、荷受け段階からコンタミを防止する対策が取られている。
 もちろんいくら計画を立てても、雨が降ったり、天候などの影響で予定通りに稼動できないこともある。そういうときには、随時、利用組合と協議して調整される。
 品質事故を防ぎ、計画を確実に実行するには「利用組合がなければできない」と畠山さん。利用組合方式で運営することの利点はもう一つある。それはJA職員がCEのオペレーターの場合、CEのいろいろな問題をJAトップに直接伝えることは難しいが、生産者である利用組合長ならば、JAトップと対等に話ができることだ。

◆RC・農家の乾燥機を 有効活用するサテライト方式

 品質事故防止と同時に稼働率向上のために取り組まれているのが以下の2種類のサテライト方式だ。一つは、個人所有の乾燥機を利用したもの。大型農家には乾燥機を持っている人が多いが、この人たちを取り込まないと施設の稼働率は上がらない。そこで、乾燥機を持っている生産者には、自分で半乾燥してCEに搬入するという、既存乾燥機を有効に活用した荷受けを実施している。そのことで、生産者にとっては、乾燥仕上がり時間が短縮でき刈り取りに余裕ができる。ほぼ1晩で半乾燥できるので、早朝に搬入でき、日中は刈り取りに専念できるなどのメリットがある。
 もう一つは、既存RCの有効利用だ。RCで半乾燥した米をCEに搬入することで、均一な品質なものをバラで受け入れることができる。また、従来はRCの利用料金がCEより高かったが、このRCを利用したサテライト方式にしたことで、この米もCE米と位置づけ、利用料金もCEと同額とし、既存施設を有効に活用できるようになった。

◆CE米出荷によるメリット精算の実施

 利用率向上のためのサテライト方式以外にも(1)利用に対する奨励措置として、利用数量に応じた助成(1〜4円/kg)、(2)役職員の率先利用、(3)個体出荷とCE米との格差精算、(4)全職員による荷受応援体制等、を実施している。「全職員が応援し、CEの現場で利用者とふれあうことにより、信頼関係も深まる」と畠山さんは強調する。

◆CEは食品工場という意識を徹底

 水分や穀温などの管理について畠山さんは「全国CE協議会のマニュアルどおり手抜きせずキチンとやっていますし、それが大事」という。また、年1回担当部課長により、全てのCE・RCを巡回指導点検表に基づき、巡回点検を実施している。改善が必要な事項については的確に処理しているという。また、CEは「食品工場である」ということを徹底し、施設内清掃などもキチンと実施している。だから「突然、来客があってもあわてることはありませんよ」と自信を持っていう。
 冒頭に触れた水田農業ビジョンの策定過程に象徴されるように、組合員・生産者に依拠した運営管理が、CEでも貫かれているのが、JAいわて花巻の大きな特徴といえるだろう。花巻地域の利用組合は販売先にもJA担当者と一緒に回るという。CEを拠点とした「売れる米づくり」に生産者とJAが一体となって取り組んでいる好事例といえる。だからこそ品質事故を起こさないために、計画的な刈取り・荷受けが実現できているという印象を強く持った。

(2005.9.1)



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