農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 JA共済事業の社会貢献活動

交通事故被害者支援の大きな期待乗せて

JA共済の介助犬CM第2弾
「共生」の理念を強くアピール


 盲導犬に比べて知名度のまだ低い介助犬の活躍ぶりをアピールするテレビCM第2弾の撮影が9月12日都内で行なわれた。JA共済の「社会貢献」CMで、第1弾はすでに5月から放映され、話題を集めている。主演≠ヘ前作に引き続いてのエリス号。今や介助を実演するPR犬としては大スター級となったラブラドールレトリバー7歳の大型犬だ。

介助犬

◆さまざまな介助動作

 CMは、交通事故などで手足が不自由になった車イスの主人を助ける介助犬のさまざまな行動を描いて、その育成・普及事業の重要性を広く訴えようというねらい。
 この日は、屋内で主人に代わって介助動作を果たす動きを世田谷区内のスタジオでなどで撮影。取材にきたマスコミの記者たちも、難しい作業を指示どおりこなすエリスの“名優”ぶりに目を見張っていた。
 立ち上がって前足でボタンを押し、エレベーターを呼ぶ▽床に落ちているキーホルダーをくわえて拾う▽居室では、離れた所で鳴っている携帯電話をくわえ、車イスの主人に渡す▽サッシ戸の引き手のひもを引いて戸を開ける▽タンスの引き出しを開ける、などのシーンが次々に収録された。
 屋外では、車イスを引っ張って移動を助ける、などの場面を世田谷公園で撮った。少し進みづらい所で車イスを引っ張るエリスの姿が頼もしい。撮影が難航してリハーサルのくり返しもあった。炎天下なので、そうした場合、エリスを木陰で休ませるなど、スタッフは気を遣った。
 エリスは介助犬育成団体である社会福祉法人「全国介助犬協会」(理事長、二瓶隆一日本リハビリテーション専門学校校長、医学博士)が育てた犬だ。撮影で車イスの主人役に扮したのは、同協会の訓練士佐々木靖幸さん。

◆よろこびを共に

 役目を果たして主人役の佐々木さんに頭をなでてもらい、餌をもらって、うれしそうな様子を見せるエリス。そして主人の笑顔。それはライフパートナーとして互いに心を通わせ会う感動的場面でもある。
 そうした主人役と犬の表情に重ねて「よろこびを、共に」や「JA共済は、介助犬の育成と普及を支援しています」などの字幕やナレーションが入る仕上がりとなる。
 JA共済連広報部広報グループの丸山淳課長は「第1弾よりも、さらにテーマを端的に絞って訴求力を高め、身体障がい者と介助犬が共に生きる喜びを強調したい」と、第2弾をつくるスポンサーの制作コンセプトを語った。「共生」の理念が基本とのことだ。
 第1弾は「介助犬」編と「教習所」編の2編を制作したが、今回は介助犬がこなす日常の活躍をクローズアップしたいという。
 制作は東北新社。演出の小関亜紀ディレクターは、今回の仕事で介助犬を初めて見て「感動した。介助犬を育成する環境がかなり整ってきていて、障がい者の方々の夢が広がっていく感じがする。介助犬の育成と普及が、もっと広がるようにとの思いをこめて撮っている」と語った。
 第2弾CMは、30秒と15秒の2編を制作。10月上旬から放映の予定。
 なお、第1弾は、朝日放送系列「にっぽん菜発見〜そうだ、自然に帰ろう〜(日曜日午前9時30分から10時まで)で放映中。

不足する介助犬 急がれる育成

◆認知度高めるテレビCM

 盲導犬の話はテレビドラマになったりもした。これに続く話題として介助犬に向けるマスコミの関心が高まっている。JA共済のCMが起爆剤になっているともいえそうだ。今後、認知度の高まってくることが期待される。この日のマスコミ取材に対しては、全国介助犬協会の職員たちが訓練法などを説明した。話題のポイントを要約してみると……。
 犬は人間の言葉の意味がわからなくても、音として主人の指図を聞き分けることができるという。
 このため指示は、とくに動詞の場合、日本語よりも単純な英語がよいとのことだ。日本語では「開けろ」「引け」「引っ張れ」「行け」「歩け」などさまざまな言葉遣いがあるが、英語ならオープンとかゴーなど色々な言い回しがないからだ。エリス号も英語の指示で動いている。
 日本語は、お年寄りと子どもの言葉遣いが違っていたりして、犬が混乱するという。こぼれ話としては、米国の犬に、日本人が命令しても従わない話が出た。同じ英語でも、しつけをしてきた米国人と日本人の発音が違うからだ。

◆被害者の自立と社会参加促す

 介助犬に適しているのは大型犬だ。小型犬では車イスが引っ張れない。種類はラブラドールレトリバーかゴールデンリバーがよい。エリスはラブラドールレトリバーだ。ほえたり、うなったりはしない。人を威嚇するような犬は介助犬に適していない。
 訓練は、人を恐がったりせず人なっこいなどの適性を判断した上で1歳になったころから始めるのがよい。
 今、全国に29頭の介助犬がいるが、うち7頭は全国介助犬協会が育成した。エリス号はその中の1頭だ。最初は障がい者の介助犬だったが、今は“退職”して広報犬として活躍中だ。
 介助犬を必要としている障がい者は約1万5000人と推定され、障がい者は大半が交通事故の被害者。それに対して29頭では圧倒的な不足だ。
 また育成には、障がい者個々の障害や、その程度に合わせたオーダーメードの難しさもある。しかし障がい者にも貴重なパートナーである犬の世話をする責任がある。その世話ができるという前提のもと、連れ立って外出する。それが社会復帰に向けた障がい者の自立を促すことにつながる。
 育成団体は21あるが、新しくできた団体が多く、実際に介助犬を世に送り出すのは、これからというところが多い。

◆主人との合同訓練も

 各団体に複数の訓練士がいるが、公的な資格制度はなく、また介助犬の訓練基準なども各団体の任意となっている。訓練士もまた大きく不足している現状だ。
 介助犬認定は厚労省指定の4団体が実施している。平成14年に「身体障害者補助犬法」が施行され、盲導犬とともに介助犬と聴導犬が法的に位置づけられた。
 また全国介助犬協会は16年に社会福祉法人化され、障がい者個々の障害に合わせて訓練された介助犬を育成し、障がい者の社会復帰を支援するため希望をする障がい者に無償で提供している。
 「補助犬法」によって補助犬育成補助事業が実施されたが、その対象として同協会が育成した認定介助犬第1号はココア号(ゴールデンレトリバー13年生まれ)という。これは昨年、横浜市の川本昌代さんに提供された。
 川本さんは「介助犬を希望して4年目にやっと念願がかなった」と大喜びだった。協会で訓練されたあと昨年3月にココアは川本さんとの合同訓練に入り、同年8月中旬に認定された。
 希望者は多いが、認定犬の誕生までには、幾多のプロセスがあるという例だ。

介助犬

力強い支援続ける多彩なJA共済連の活動

 JA共済連は、自動車共済、自賠責共済の普及に努めてきた。このため社会貢献活動の一つとして交通安全運動や交通事故被害者の支援に協力し、多様な活動を展開。また事故被害者のための総合型施設であるリハビリテーションセンターも2ヵ所開設している。
 こうした交通事故被害者への支援として、介助犬を必要とする人の原因疾患が大半は交通事故による脊椎損傷であることから、介助犬普及の重要性に着目した。身体障害者補助犬法の施行などが背景にある。
 JA共済連は15年に、日本でただ一つの介助犬に関する学術団体であるNPO法人の日本介助犬アカデミー(高橋哲也理事長)に2000万円の研究支援をした。
 さらに介助犬育成事業が切実に求められているという介助犬アカデミーの提起で、16年には全国介助犬協会の設立を支援する基金1億円を拠出し、それまでNPO法人として活動していた協会を3月に社会福祉法人にする運びとなった。
 また同年10月には、再び介助犬アカデミーと介助犬協会に2000万円ずつの拠出をし、社会貢献活動の中に介助犬支援をきちんと位置づけ、そのフォローを続けてきている。

◆イベントも開く

 しかし補助犬法が施行されて2年を経たものの、まだ一般には十分に理解されていない状況があるところから、昨年11月には「がんばれ介助犬!支援フォーラム2004」という育成支援のイベントを開いた。
 JA共済連、介助犬協会、介助犬アカデミーの共催で東京・品川の大崎ゲートシティのホールに親子連れなど約500人が集まり、モデルとなった介助犬が様々な働きを見せるなどして会場を盛り上げた。
 今年は内閣府主催の「第29回交通安全フェアー」(9月17日、18日東京ドームシティプリズムホール)でも介助犬のステージを提供するなど、広く一般へ理解を呼びかける場を設けている。
 一方では、JA共済のテレビCMで介助犬の活躍をアピール。第2弾の制作に入り、10月からの放映が、さらに関心を呼ぶものと期待を高めている。


(2005.9.28)



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