農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 JA全農米穀事業特集

JA全農の17年産米販売方針

売れる米づくり戦略を結集
競争力のさらなる強化を


 17年産米の販売が本格化するJAグループでは生産者、JAとの結びつきを強めるための出荷契約の積み上げに取り組んできたが、今後は卸、実需者との確実な取引拡大に向けて事業を展開する。一方、豊作基調のなか、産地JAにとっては需給安定のため集荷円滑化対策の準備も求められている。こうした課題にどう取り組むのかJA全農米穀部の今後の販売方針などを紹介する。

◆米の販売環境 ―需給緩和傾向

 16年産主食用米の販売計画は297万トンだったが、8月末現在の契約数量は296万トンと順調に販売が進みほぼ完了している。販売実績でみても、284万トンで9月以降の要販売数量は、昨年より16万トン少ない13万トンで古米持ち越しもなく17年産米の販売に取り組める見通しとなっている。(表1)
 卸の在庫は、15年産米の在庫処理などが進み昨年同時期より約8万トン少ない38万トン程度となっている(表2)。ただし、17年産米の作柄が9月15日現在で全国で102と公表されたように今年は豊作基調。また、米消費の減少も続いていることから米の需給は基本的には緩和していると見なければならない情勢だ。
 また、米穀機構(米穀安定供給確保支援機構)の調査では米卸の経営状況は厳しく同機構の加盟社の約4割で経常欠損という結果となっており、今後、より慎重な仕入れ対応をしてくることも予想されているという。
 さらに販売面では、改正食糧法の施行以降、JA直売の増加など販売手法が多様化している一方、大手商社の量販店、コンビニへの資本参加の拡大なども進み、これまで以上にバイイングパワーが強まって店頭小売価格設定への影響も懸念される。

表1 販売状況(全農分8月末現在)

表2 米穀販売業者(旧登録卸売業者)の月末在庫状況

◆JAグループの出荷契約 ―前年並みの452万トン見込み

 こうした状況のなかJA全農は、JAグループの17年産米集荷・販売対策の課題として次の4つを掲げて事業に取り組んできた。
 (1)JA米の取り組み拡大など「信頼される米づくりによる競争力の強化」、(2)生産者とJA、JAと連合会の間の出荷確約契約の拡大など「生産者・JAとの結びつきの強化」、(3)事前年間契約の拡大など「販売先との多様な多様な方式による契約取引の拡大」、(4)「担い手への対応強化や買い取り実施による取扱数量の確保」、である。
 このうち出荷契約の積み上げ状況では、連合会出荷米430万トン、JA直売22万トンでJAグループ全体で452万トンとほぼ前年並みの水準となっている。(表3)
 JA直売については▽地産地消を基本とし、連合会に売渡委託する米と明確に区分する、▽販売先や数量、価格などについて事前に連合会と協議し、計画や実績などを連合会に報告する、などのJA直売のガイドラインをすでに設定しており、今後、こうしたルールに基づいた販売に取り組むことになる。
 一方、信頼される米づくりの基盤となるJA米出荷契約見込みは、連合会出荷米のうち286万トンにのぼる見込みだ。17年産では目標数量を200万トンとしたが、それを大きく上る出荷契約実績となる見込み。

表3 平成17年産米出荷契約数量(一部推定)

◆多様な契約取引 ―事前年間、特定契約の拡大めざす

 米販売では大きく入札取引と相対取引に分かれるが、このうち入札取引では16年産ではコメ価格センターへの上場義務がなくなったことから、上場数量が45万トンと大幅に減少した。このことが適切な価格形成を妨げている要因であるとして、17年産では産地・銘柄別の販売数量計画の3分の1以上を上場しなければならないなどの見直しが行われた。見直されたのは、ほかに再上場、希望価格などの項目もある。(表4)
 一方、販売先との多様な方式による契約取引に向けて事前年間取引、特定契約など相対契約の拡大もJAグループは重視している。
 事前年間取引は一般米とJA米を区分して取引業者に提示。提示回数は原則として産地・銘柄ごとに年間3回とする方針で、第1回は10月に実施される。第2回は18年3月、第3回は18年5月に予定されている。
 数量はコメ価格センターへの上場予定量や政府米入札予定数量などを除くなどの条件から割り出し全国本部・県本部協議のうえで決めていく。
 一方、特定契約とは安定供給を目的に、産地、卸売業者、実需者との3者で契約を結ぶもの。実需者まで契約に参加することで、生産者に向けて、米の価格、品質、用途別のニーズなど市場動向をより確かに伝達できることも狙いとしている。
 対象数量は、コメ価格センターの上場義務数量が定められていることから、産地ごとの年間販売計画数量の50%程度までとしている。また、契約数量は産地銘柄、取引業者、実需者ごとに100トン以上としている。
 そのほかの契約としてはスポット取引も行い、入札残や事前年間取引残を対象に随時実施される。第1回事前年間取引以降は60kgあたり100円を時期別相対取引価格に加算する。
 また、精米販売では、JA米の販売に試験的に取り組む方針だ。
 これは、すでに触れたように17年産では目標を大きく上回るJA米が出荷される見込みであることから、JA米の差別化をはかり生産者への期待に応えるためにも、消費者にアピールして認知度を高める必要があるとの考えからだ。
 具体的には▽JA米の統一デザインによる精米販売、▽特定商品への「JA米マーク」の使用の2点。統一デザインは基本デザインを決め、これに独自ブランドも盛り込めるものにする方針。この米袋の使用要件については検討中だ。また、JA米マークの使用については、取引先から商品の差別化をはかるための使用依頼があったことから具体化した。使用許諾にあたってはJA全農との間で契約を締結することなど要件に従うことになっている。

◆基本要領の遵守、厳格に ―共同計算と販売対策費

 JAグループでは販売期間が長期間にわたる米の商品特性をふまえて、収益を公平に配分するためのシステムとして県域ごとに共同計算方式を採用してきた。
 ただし、秋田県本部などの不祥事を受け、共同計算運営の透明性を高めるなどの観点で全県本部共通に取り組む「米等県域共同計算実施基本要領」を9月1日に施行した。
 これをもとに各県で共同計算基本要領の制定を行うことになっており、9月中旬までにほぼ体制が整っている。
 基本要領のポイントは▽精算時期は原則、生産年の翌々年3月末まで、▽JA、生産者に共同計算結果を開示、▽期中(3月、6月、10月)においても収支・在庫状況をチェックする、▽県本部に監査委員会を設置、外部監査法人による会計調査を実施する、など。そのほか、共同計算の基本ルールの重要事項は県本部運営委員会で審議し、共同計算ルールを生産者に開示することも定めている。
 また、販売対策費についても「販売対策費基本要領」を9月1日に施行している。
 この要領では販売対策費の趣旨を▽共同計算にかかる流通コストを削減し生産者手取り確保を図る、▽適正な手続きでJA、生産者の事前承認のうえ支出、結果を開示、▽指標価格形成に影響を与えない、と定めている。
 そのうえで対策内容として年間を通じて計画的、安定的な取引に資する対策、販売先の協力で物流合理化に資する対策、早期取引、販売促進に資する対策などに限定。コメ価格センター取引を対象とする支出の禁止などを決めている。
 農水省はこれらの基本要領の内容が各県本部において確実に実施されているか、今後フォローする予定である。全農全国本部としても要領を逸脱する行為が生じないように全県本部に指導を徹底し、JAグループの米事業に対する信頼回復を図っていく。

◆区分管理の徹底を ―集荷円滑化対策の準備も課題

 17年産の第3回入札(9月22日)では全銘柄の平均指標価格は60kg1万5642円で16年産同時期よりも643円下回る結果となった。17年産は豊作基調のため出回りが増えるにしたがって価格がさらに下がる可能性もある。
 今後、産地での課題となるのが集荷円滑化対策の発動をにらんだ区分出荷の徹底だ。
 9月15日現在の全国作況が102と公表されたことを受けて、農水省は当面の需給見通しを発表した。それによると来年6月末の主食用需要量853万トンに対して現段階では45万トンの過剰が見込まれている。このうち豊作による過剰は15万トンで残り30万トンは作付け面積の増大などによるもの。ただし、民間の6月末現在の在庫量は産地段階まで含めて昨年より38万トン少ない175万トンとなっており、さらに政府備蓄米も84万トンで年内の買い入れを予定していることから、30万トンの過剰分は吸収できるとしている。
 そのため豊作による15万トンが集荷円滑化対策によって的確に区分出荷されれば需給はバランスするとみている。
 集荷円滑化対策は全国が作況が101以上となり、さらに県、地域作況でも101以上となった地域が発動対象となる。正式な決定は10月15日現在の作況発表によって決定される。
 今後の動向をふまえ、産地では区分出荷の管理などの準備をすすめるなど需給安定への取り組みが求められる。

集荷円滑化対策について

 

(2005.10.6)



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