農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 生産者と消費者の架け橋を築く女性たちの役割

 ルポ・JAファーマーズマーケット(3)

もっと活かそう食と農「提案」の場

JAはだの(神奈川県)
じばさんず


◆食べてくれる人がいる限り生産を続ける

JAはだの
 生産者の一人、市内戸川地区でイチゴを中心に大根、白菜、ブロッコリーなどを生産している久保寺則子さん(60)に話を聞いた。
 「じばさんずに出荷する前は、自宅に野菜などを置いて無人販売をしていました。今は出荷を考えながらイチゴ、野菜などを生産しています。私は栄養士の資格を持っているので、野菜の中にどんな栄養が含まれているか、どのような食べ方をすれば美味しいかなどを書いて商品と一緒に袋に入れ無人販売所に並べていました。これが結構評判が良く、近所の人から食べ方などについてよく質問されるようになった。知り合いもでき、歳をとっても社会に役立つとはこんなことかと思い嬉しくなったことを覚えています。いま、じばさんずでも同じように、その野菜に含まれている栄養などを書いて入れている。売り場に立っているとお客さんが時々声をかけてくれるようになりました」。久保寺さんは食べてくれる人がいる限り、生産は続けたい、じばさんずで買い物するお客さんの顔を見るのが好きだともいう。以前はイチゴの専業農家として市場出荷もしていたが、現在は自分ひとりで生産しているため生産量が少なく市場出荷が難しくなり、じばさんずとの関わりが自然と強まった。

じばさんず正面入り口
じばさんず正面入り口

◆販売なくして生産なしを実感

 また、「うちの組合長が良く言っている"販売なくして生産なし"という言葉の意味が、実感としてわ分かってきました。買ってくれる人がいるから、生産にも力を入れることができる。まず、販売ありきです。そのためには、じばさんずの販売力を強化し、生産者が安心して生産できるよう売ってもらわなくてはならないと思います」と、自分の出荷した野菜等が売れると、それ以上に高品質のものを作ろうと意欲が出ると語った。
 しかし、他の生産者が低い価格を設定した場合、価格競争に負け自分の生産物が売れないのは悔しいともいい、JAには商品の価格調整など生産者間の無用な競争を避けるような指導力を発揮してもらいたいと思っている。

双方の思いを伝え、架け橋機能の強化めざす

◆生産者と消費者双方の満足がJAの役目

みかん、葉物野菜が並べられた店内
みかん、葉物野菜が並べられた店内
 じばさんず担当のJAはだの営農経済部営農課の小川ゆみ子さんは、「生産者が付ける価格の問題を含め、解決しなければならない問題は数多くあります。しかし、全体としては消費者に向けて、いかにじばさんずをアピールするかという問題の方が大きいと思います。消費者に認知してもらい、リピーターとして日常的に足を向けてもらえるような取り組みが大切だと考えています。
 1月末か2月にはオープン以来の来場者が100万人になる見込みなので“100万人達成イベント”を計画したり、午後3時以降買い物した人に1000円1ポイントとして20ポイントでお米1kgプレゼントするなどの取り組みを行っています。また、市の広報誌で季節に合わせたじばさんずの目玉を紹介したりしていますが、独自の媒体を発行するまでには至っていません。しかし、じばさんずには生産者と消費者をつなぐ架け橋の役割を果たすことが求められており、今後は双方の思いが伝わるような活動を考えていきたいと思います」と語り、JAが指導力を発揮して生産者と消費者双方の交流・理解が深まるような取り組みを進めることが必要と強調した。
 「じばさんず」は14年11月にオープンした。JAはだのの経営で、営農経済部が担当している。「じばさんず」とは地場産のものとの意味で、地元秦野市産の農産物を中心に、産地間提携している他JAのファーマーズマーケットの特産品などを扱っている。市中心部の西北、国道246号線沿いの本所の敷地内に広い駐車場を確保している。交通量の多い国道沿いということで、車の出入りに多少の難があるものの、平日の午後でもかなりの車が駐車していた。
 夕食の食材を買いに来たという市内の主婦は、「新鮮なものが手に入るので週に3〜4回来ます。スーパーと同じ役割は期待しておらず、ここでは安全で新鮮なものを求めています」と話してくれた。「じばさんず」とスーパーを使い分けて、豊かな食生活をめざすライフスタイルが地域に定着してきているのではないだろうか。
 また、利便性を高めるため品揃えの充実を図る必要がある。小川さんは、「加工食品をもっと多く揃え土日や休日に国道を走る観光客もターゲットにしたい」とも語った。

(2006.1.25)



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