農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 生産者と消費者の架け橋を築くJA青年部の役割

自ら実践する
元気な活動の展開を
JA全国農協青年組織協議会
藤木眞也会長に聞く


 JA全青協は2月14、15日に第52回JA全国青年大会を開催した。農政の大転換期にあって、地域の農業を振興する担い手として青年農業者への期待は大きい。藤木会長にJA全青協の今後の活動と各地のJA青年部への期待などを聞いた。



◆農政転換 −現場からの組織討議で一定の成果

藤木眞也会長

 ――今年度は新基本計画の具体化、WTO農業交渉などJA全青協にとって課題の多い年度でした。

  「品目横断的政策の担い手要件など新基本計画の具体化に向けては、会長就任直後に検討委員会を立ち上げて組織討議を重ね、JA全青協としての要請をまとめました。自民党の小委員会ヒアリングにも出席し、私たちの考えも訴えましたが、最終的に要請事項は盛り込んでもらったと考えています。
 とくに、すべての人に担い手になる受験資格を与えるという考え方は、私たちもまずはみんなが担い手になれる条件をつくり、そこから先は担い手になれた人を支援していくべきと考えていたので納得できます。また、これまで政策に協力的してきた農業者を優先すべきとの主張もしていました。転作などに協力しない人がいると地域農業を振興しようにも支障がある。農業情勢が厳しいなかで、現場にいなければ分からないことを伝えられたし、今後、担い手となっていくべき年齢層の組織の意見を汲んでもらえたのは大きかったと思っています」

◆WTO農業交渉 −自らの問題として捉えてアピールを

 ――昨年末には会長をはじめ多くの青年部代表がWTO香港閣僚会議のJAグループ交渉団に加わりました。この問題については今後どう取り組んでいきますか。

 「専門的な議論も多く情勢もどんどん変化するので非常に難しい問題だと改めて感じましたが、参加したメンバーには得るものがあったと思っています。ただ、今後輸出国の攻勢は間違いなく強まってくる。日本はどう乗り切るのか、です。
 しかし、問題は日本では農家レベルのWTO交渉に対する意識が薄いこと。全青協はフランスの青年農業者組織と交流がありますが、彼らはWTO交渉を完全に自分のこととして捉えている。一農業経営者として自覚と認識があって日本とは数段も違うと感じました。
 日本では政府が決めてから反対する。それに合意したJAグループを批判する。そうではなくてやはり政策論争のなかで自分たちの意見をぶつけていくという流れに青年部から変えていかなくてはならない。今年の大会終了後にWTO農業交渉に関するアピール行動をしましたが、それは盟友たち自身にもっと関心を持ってもらうためでもあったわけです」

◆担い手育成 −集落をもり立て地域農業を リードする意識を

 ――ところで、担い手問題では、集落営農か、個別経営か、という対立した問題が現場にあるようです。農協の青年組織としてはどう考えますか。

  「青年部はたしかに地域農業の担い手になっていくべき人の組織でしょう。ただ、農業というのは一人でがんばってもなかなかうまい具合にいかない。自分が伸びていこうとするなら、周りも潤ってから初めて自分に回ってくると思う。ですから、できれば地域の担い手として、もうひとつスケールを大きく考えて、地域を引っ張っていくという認識を持ってもらいたいと思います。
 今は、集落をもり立てていく時であり、今後、集落営農といっても、いずれ限界が来ないとも限りません。その時に自分たちが農業を担っていくことになるわけで、短期的に考えず当面はワンクッションを置くぐらいの気持ちで、いずれ自分の経営につなげていくと考えることが、農村社会に混乱を与えることなく地域農業を持続していくことになると思いますね」

◆JA改革 −全力で担い手支援を

 ――農政転換にあたってJAに対する期待をお聞かせください。

  「農業者もJAも今回の改革は、ピンチだという人とチャンスと捉える人がいると思います。私は今回は大きなチャンスだと考えるべきだと思うし、ここでJAが担い手となっていく農業者の育成をとことん行っていけば、将来ともJAとの関係を強めることになる。
 今は銀行でも農業者に資金を貸しますし、経営規模が大きくなればなるほど生産資材価格などに対して農業者はアンテナをいくつも張ってシビアに考えています。JAも自分たちの提供する生産資材などが不人気であればそれはなぜかということをもっと考るべきだと思います。そこには価格だけではなく質の問題もあるわけですよ。JAも合併で規模が大きくなり現場との距離が生まれていますが、農家にメリットを与えて初めて存在意義があるということを忘れないでほしいですね」

◆青年部活動 −自主的な組織と自覚する

 ―― 一方、次世代への農業理解の役割を果たすために青年部は率先して食農教育に取り組んでいますね。どう評価していますか。

 
「食育基本法が施行されて取り組みやすい環境はできたと思います。ただ、今のやり方では成果は出ないと思いますね。田植えをしてもらい、稲刈りをしてもらうだけでは、子どもたちは楽しいとは思うかもしれないが、米って意外に簡単にできるんだと思いかねません。
 農産物を作るには、時間というものが大変なウエートを占めます。草取りもなにもしないでは米は穫れないわけで、その作業も体験してもらわなければ食の大切さは伝わらないのではないか。
 農業体験では、米は比較的つくりやすいからみんな選んでいると思いますが、失敗することも大切です。苦労して収穫したときの喜びは何倍にもなる。青年部によっては活動がどうも消化行事のようになりつつあるところもあって、今よりも踏み込んだ食農教育を考えていかなければならないと思いますね。能力、労力、学校の理解などが必要ですが、少なくとも農家の人たちがいて初めて農産物が穫れる、その人たちに託します、という気持ちを持ってもらえるようにする必要があると考えています」
 「綱領にあるようにJA青年部は自主的な組織です。それなのにJAからの助成金が減ったので活動ができないという声も聞きますがそれは違うと。自分たちの会費で運営してそこにJAの助成金が入って活動を充実させていくということでしょう。
 自分たちの組織なんだという意識を持ち、活動についても全青協が何か指示を出すのではなく、自分たちのやりたいことを単組から声を上げて自主的な活動として広げることが大事だと考えています。生産者だから気がつくこともある。それは自分たちにしか分からないことで、そこから声を上げて活動につなげていくことが今こそ求められているのだと思います」

(2006.2.24)



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