農業協同組合新聞 JACOM
   

特集  「第24回JA全国大会」記念特集 食と農を結ぶ活力あるJAづくりのために

シリーズ どっこい生きてるニッポンの農人(6)−3

第24回JA全国大会決議を先行する地域

東京大学名誉教授 今村 奈良臣



◆第24回大会の先取り

今村 奈良臣東京大学名誉教授
今村 奈良臣
東京大学名誉教授

 入善町そしてJAみな穂の活動と実践をつぶさに見て痛感したことを、一言で表現すれば第24回JA全国大会議案の内容を先取りして実践していることである。とりわけ、その第1の課題である「担い手づくり・支援を軸とした地域農業の振興と安全・安心な農畜産物の提供」、第2の「安心して暮らせる豊かな地域社会の実現と地域への貢献」という2つの基本課題を着実に実現しつつあることである。地域農業を支え、次代を担う一騎当千の青年たち、着実に地域農業の再編成を進める集落営農、次代の子どもたちの食育、農育を推進している玉女の会、女性のエネルギーで新しい方向を切り拓く女性農業機械士会アムロン。別掲の現地リポートを読んでいただければ、そのたくましくかつ躍動する息吹が伝わってくると思う。

◆第2回地域水田農業ビジョン大賞

 入善町とJAみな穂は、第2回水田農業ビジョン大賞・農林水産大臣賞を去る7月に受賞する栄誉に輝いた。私は審査委員長として現地審査に訪れたが、その計画、実践など活動の姿を審査員一同とともに高く評価した。しかし、今回改めて個人の立場で再訪し現地調査を通じてみて、その活動と実践ははるかに奥深くかつ拡がりと展望をもったものであることを痛感した。
次代を担う梁山泊
 別稿レポートにあるように10代から30代に至る青年達16人が集まってくれた。法人の経営者あり、個別経営者あり、水稲、大豆、花卉、野菜、畜産の生産者ありと実に多彩であるばかりでなく、当日来られなかった青年達は集まった2倍いるとのことであった。JA青年部に結集する青年達は、他のJAでは益々減少し、有名無実になりつつあるところも多いが、この入善町では意気盛んなものがあった。私は、まさに梁山泊という言葉がふさわしいと痛感した。このような意気盛んな多様な人材が集団としているならば、彼らを慕って、今の中学生、高校生が集まってくるだろう、教えを乞うために自らの意志で集まってくるだろうと思った。
 老中青の結合こそが地域農業の活力の源泉であると考えているが、その推進力は青年にある――このことを改めて教えられた。

◆新しい時代の土地結合・機械結合

 入善町では役場とJAみな穂が緊密な連携のもとに、いわばワンフロアー化とでも言うべき姿で、農地の利用権設定や効率的農業実現のための団地化の推進など実に多面的な活動を推進し、さらに経営安定対策にふさわしい経営体の育成につとめている。もちろんこうした路線はトップ・ダウン方式ではなく、集落の現場からの推進構想を支援、誘導するというボトム・アップ方式で推進している。そういう意味では21世紀にふさわしい土地結合の望ましい姿を実現しようという路線であると評価できよう。
 また、梁山泊に結集した青年達は、もし農繁期にグループの誰かが急病になったり、急用ができたり(矢木龍一JA全青協会長のような事例)、機械が突如故障した場合などには、トラクターやコンバインがたちどころに集まって作業をこなす――そういう現代版「ゆい」、つまり新しい時代にふさわしい真の協同の精神にみなぎっている。言い換えれば、新しい時代の機械結合である。すばらしいことだと思う。
 さらに「女性農業機械士会アムロン」のメンバーは、大型免許を持ち、各経営体、集落営農を支えているのである。

◆子どもの食育、農育

 他方、女性の高齢者を主として組織している「玉女の会」は学校給食に野菜を供給しているだけでなく、子どもたちに野菜づくりなどを通して農育もすすめている。玉女の会の由来は、玉ネギとエダマメの2字から命名したという。玉女の会に寄せられた小学生のお礼を込めた作文を紹介する余裕はないが、会長の柳原悦子さんのファイルを見ていて、心がじわじわと暖まる思いがした。
 富山はかつての米騒動発祥の地、女性パワーがすごいところではなかろうか。その女性たち、母親たちのパワーが、梁山泊に結集した青年達を育ててきたのではないかと皆さんと一献傾けながら考えた。

(2006.10.12)


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