農業協同組合新聞 JACOM
   

特集 全農特集・生産者と消費者を安心で結ぶ懸け橋に

座談会 その2


地域農業のビジョンづくりから消費者との懸け橋を築く


菊地氏・鯨井氏・田中氏
菊地氏・鯨井氏・田中氏

◆地域水田農業ビジョンが改革の原動力

 菊池 では、具体的にどうバランスのとれた担い手対応をするのかということですが、私が思うのは、JA段階で地域農業ビジョンをきちんと作ることが、担い手対応と担い手からはずれた生産者の救済につながるのではないか。その策定と説明をすることが地域農業、あるいは農村の活性化にも結びついていくと考えています。したがって、そのための合意形成、話し合いという作業が重要だと考えます。とくに大事なのは、国の政策を尊重しながら、ここの農村、農業を将来どうするのかというビジョンが必要なんですね。
 そこで大事になるのがトップのメッセージだろうと思います。鯨井組合長も田中社長も、今のお話で非常に明確なメッセージを発信されていることが分かりましたが、この部分が欠けていると、現場まで浸透しないような感じがします。いわゆる農政の転換を機会に、地域農業の活性化と農村内での信頼関係を作り上げていくのが、私は地域の農業協同組合だと思っています。
 農産物価格が低迷している時代を迎えているんですが、こういう機会をチャンスと捉えて活性化に結びつけていく、そういう肯定的な考え方も必要ではないかと思います。

◆生産者と職員の関係づくりこそ

 小池 では目に見える全農改革をどうすれが実現できるか提言も含めてお話いただけますか。

 田中 結局は、どこの地域でも生産者と農協、あるいは全農県本部との人のつながりが大事になると思いますね。
 私の会社にも単協や県本部の職員の方が来ますが、そのときに言っているのは、たとえば同じ成分の肥料が農協なら1000円、商系業者なら900円だったとすると、これぐらいの差なら、農協とは経済事業だけでなくいろいろな関わりがあるから購入しましょうということになりますよと。ただ、その差が200円も300円もということになるとそれはやはり無理がある。
 ですから、必ずしも高いから買わないということではなく、限度があるということと、その理由は最終的には人と人との付き合いだということです。やはり農協の職員がいかにコミュニケーションをとれるか、それによって多少高くても買うと思いますね。

 菊池 私は良好な人間関係は5%の価格に値するということを言っているのです。田中さんが言われたように、1000円の資材で100円も200円も農協のほうが高ければそれはもう許容範囲を超えてしまうでしょう。しかし、差が50円程度であれば農協には他のサービスもあるから買おうということになるのではないでしょうか。
 これは販売事業でも言えることで、組合員のみなさんと良好な人間関係をつくるということがまず第一だと思います。
 価格の問題は、勝ったり負けたりの繰り返しですが、JAグループでは、品質的に間違いのないものをより安く取扱いしようというのが基本姿勢です。
 全農では、仕入の問題、物流コスト、組織運営コストなどの実態を検証しながら信頼される価格づくりに向けて努力していく考えです。

◆産地の特性活かした販売事業を

 小池 購買事業についていろいろご指摘いただきましたが、担い手対応としてはやはり販売事業が大事だと思います。価格は市場で決まるとはいえ、きちんと売り切る、あるいはどこに売ったのかを見えるようにするなど、担い手を中心とした施策にマッチしたような販売事業改革ができないと、担い手の期待に応える全農にはならないのではないかと考えています。難しい課題ですが、お考えをお聞かせいただければと思います。

 鯨井 たとえば、大型店舗向けに商品を小分けにして流通させるという機能は、やはり全農がやるべきだと思います。農家段階でこれは市場出荷、これは直売所出荷などと分けて袋に詰めていたんではね。農家はいいものを安全で安心なものをきちんと作ればいい、売るのは農協や全農だということだと思います。たとえば、埼玉県なら県域で大型店舗用に区分けして出荷するラインを持つ。実際、埼玉県本部にはありますが、量販店に営業をかけるには安定して供給できる量が必要ですよね。安定的に供給するのがブランドです。それには一元化した量を持っていることが必要で、まとめられるのは全農の県本部ということになると思います。
 組合員はどこまでやるか、農協はどこまでやるか、そして全農はどこまでやるのかということをきちんと考えるべきだろうということです。

 小池 グリーンちゅうずでは、米でも9品種ほど作付けされているということですが、それは農作業の分散や低コスト化という視点だけはなく、売り先まで意識して品種を選定されているわけですか。

 田中 最近では、播種時期からすでに実需者と結びついた契約もあります。麦・大豆はほとんど農協出荷ですが、米については農協には4割強ですね。カントリーエレベーターに出荷するような品種はやはり農協が推進している銘柄を作付けしていますが、それだけでは作業の平準化もできないので、実需者と結びついた米づくりも必要になってくるわけです。農協出荷が4割強で、3割程度が小作料も含めて個人のエンドユーザーに販売し、残りが卸などを通じた販売ですね。そういうなかで、全農の販売事業には買い取りということにも期待がありますね。
 それから、われわれのような生産者からすると、手数料について説明が大切だと思いますね。今、それをだいぶ下げようとしているわけですが、その説明もないのでかなり手数料がとられているというイメージは根強いものがありますよ。
 これだけ手数料をいただきますよ、ということをもっと農家レベルに向けてPRすることが大事だと思います。

 鯨井 農協には、全農といういい連合会があるからおれたちは一生懸命作ればいいんだ、というように農家が思えばみんなが全農に頼りますよ。

菊地氏・鯨井氏・田中氏

◆担い手の強化を支えるのはリーダーの熱意

 小池 これまでの指摘、提言を受けて菊池常務からお願いします。

 菊池 鯨井組合長が指摘された収穫まではできても、そのあとの選別、小分け、包装作業の問題が、とくに高齢者になると本当に大変ですよね。そこで農協のなかにそういう包装・加工センターをつくるとか、生産履歴記帳にしてもきちんとデータ化したり、あるいは農薬の残留分析も行うなどの情報センターもブランド化にとっては必要で、こういう施設の整備も地域農業ビジョンができあがっていくことにつながると思います。
 それから集落営農組織には、担い手要件をクリアするために経理の一元化が求めれていますが、これはあくまで手段であって、やはり経営という視点からみると、とくに米価も厳しいなか、米、麦、大豆以外に何を作るかということも非常に大事な課題だと思います。ここをきちんと農協が提案できるかどうか、とくに園芸作物をどう取り入れていくのかということが、今後大規模化した集落営農組織や法人には大切になってくると思います。
 その場合には、農協グループに加えて、行政や普及センター、試験場、あるいは卸売市場も加わって考えなければいけないと思います。そういう形で新しい作物の振興を図っていくことが大事だと思います。
 最後になりますが、今回の最大の課題としている担い手対応だけは、どこの県域もみなスタートラインは同じなんですね。そのなかで少し対応差が出はじめてきているように思いますが、JAのトップや担当者の熱意以上の担い手対応というのはありえない。これは今日お二人の話を聞いてつくづく感じることです。リーダーの熱意以上の事業展開はありえない。それを肝に命じて取り組まなければいけないと感じています。

 小池 ありがとうございました。

(2006.11.20)


社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。