農業協同組合新聞 JACOM
   

特集 全農特集・生産者と消費者を安心で結ぶ懸け橋に

担い手専任部署を設置し生産から販売までを支援

現地ルポ
JA全農茨城県本部・JA全農岡山県本部に聞く


  JA全農は「新生プラン」で「担い手への対応強化」を、経営理念にもとづく「全農の使命」の第一に掲げ、各県本部ごとに「担い手対応県域マスタープラン」を策定し、国のいう「担い手」よりも幅広い層を対象に、今年度中に全県本部に担い手専任部署を設置し、具体的な取組みを始めている。
 そのなかから、実需者ニーズに応えるなかで、担い手農家を含めた販売事業の中心的な役割を果たすようになった、茨城県本部のVF事業を中心とした取組み、担い手農家を訪問し、そこで出された意見や要望を一つひとつ具体化し、フレコン集荷やセンチピードグラスによる畦畔管理など、労力軽減対策をはじめとする生産・販売支援策を実現してきている岡山県本部の取組み(記事参照)を取材した。

現地ルポ(1) JA全農茨城県本部
販売事業の強化が最大の担い手支援
VF事業を強化することで担い手や多様な生産者を支援
茨城県本部
茨城県本部

◆規模拡大に伴い機能別のステーションを設置

県西VFステーション(パンフレットから)
県西VFステーション(パンフレットから)

 JA全農いばらぎ(当時は経済連)は平成8年に、量販店、生協、業務用など販売先のニーズに合わせた選別・包装加工等を行い出荷するVF(ベジタブル・フルーツ)事業をスタートさせた。
 今年度、県南ステーションが新たにオープンし、現在は「中央」、「県西」、「県南」の三つの地域ステーションと「青果集品」(生協から業務受託し、野菜等のパック詰めをする機能を持つセンター)、「平和島」(東京・大田区)合わせて、計5ステーションの体制となった。
 機能別に、中央は量販店、スーパー、および学校給食、県西は業務・加工用、県南は地元産を地元小売などに卸す地産地消型、青果集品は生協のセット商品、平和島は外食産業用、と効率的な運営をはかっている。外食産業用では、大手ファミリーレストランチェーンと提携し、サラダバーなどに使う野菜を生産者の写真付きで紹介し、顔の見える関係にも取り組んでいる。
 生産者は各センターに農産物を個別に持ち込むが、代金の精算等はJAを通じて行うので、JAの取扱量が増えたとか、JAと生産者との結びつきが強くなったという効果も現れ、JAからVF事業に期待する声が大きいと同時に、県本部のJA支援にもつながっている。
 また、各地域ステーションは管内JAと連携し、JAの集荷所などの施設をデポセンターとして利用。生産者はそれらの施設に農産物を直接持ち込むことができ、生産者の負担は軽減されている。

◆プロダクトアウトからマーケットインへ

 VF事業スタート時の平成8年度の取扱い額は9億円、10年度は45億円、17年度は102億円、今年度は目標としている115億円を達成できる見通しだ。このように11年間で取扱い額は約13倍になった。しかし、「単に取扱高を増やすことが目的ならば業者と変わらない。JAとして生産者との関わりを大切にし、生産から販売までをいかに支援できるか、この点を第一に考えていきたい」と、VF課の担当者は語る。
 当初から多様な生産者との取組みを中心に事業を始め、価格面などで顧客のニーズに対応できていたことが評価され、取扱高が増えてきた。規模拡大に伴い、従来の“プロダクトアウト”から、“マーケットイン”姿勢に変わってきた。顧客ニーズに対応するため、生産者との契約栽培をすすめ、安定的、継続的な供給ができるような産地体制とした。
 VF事業は県本部の販売事業の中で、中心的役割の一角を担っているが、県本部の園芸作物販売額の7分の1程度とまだ少ない。しかし、VF事業で蓄積したノウハウは市場出荷の部分にも生かされ、契約栽培など相対取引が増えてきているという。
 VF事業は大規模生産者も含め、多様な形態の生産者の販売事業の支援になっている。生産者の多くが全農に期待する役割として『販売力』を上げている中で、VF事業の強化は大きな担い手支援になっている。

VF事業の物流(パンフレットから)
VF事業の物流(パンフレットから)

◆推定販売額1500万円以上などが県の担い手対象

 県本部独自に定めた担い手の対象は、▽推定販売額1500万円以上、▽生産部会員、▽新規就農者および意欲的な兼業農家、としている。担い手対応の担当は、15年度に設置したアグリ開発課。
 アグリ開発課は、県本部の米、園芸、畜産など各部署の販売事業の支援など、組織を上げて取り組めるようコーディネーター役となって推進する役割を担っている。現在課員は9名、うち6名が農家回りを専門に行っている。6名は地区を分け、地元のJAとのつながりが薄い生産者を訪ね、JAにつなぐ役割を果たすなど、JAのサポートを行っている。
 「あくまでも主役は生産者、JA。我々は生産者やJAに対し、生産から販売までのサポート役に徹したい。組織の中で、我々が比較的自由に動けるのはみんなの協力があるからだと感謝しています」、県本部職員全員が担い手対応の活動を理解してくれていると、アグリ開発課の関課長は語る。
 また、既存の生産者を支援する他に、新規就農者支援の『ネオファーマーズ事業』にも力を入れている。「このままでは生産者は減る一方です。歯止めをかける対策を講じなければ、担い手対策はできたが担い手がいない、という事態にもなりかねない」と関課長。県農業の今後を見据えて、将来の生産者確保に全力で取組む構えだ。
 県本部は現在6社の生産法人に出資をしている。大規模経営には法人化を進めることなどにより堅実な経営基盤を構築し、小規模・兼業農家に対しては集落営農化を通じて安定経営の道を示す県本部の担い手対策は、県農業の新たな振興に向け、注目される。

(2006.11.21)


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