農業協同組合新聞 JACOM
   

特集  農業倉庫火災盗難予防月間スタート(18年12月15日〜19年2月15日)
     その2

保管管理の徹底で実需者から信頼される産地に

現地ルポ JAいわて中央(岩手県)

倉庫には「日本一のヒメノモチ」の看板が誇らしげにかかっている。
倉庫には「日本一のヒメノモチ」の看板が誇らしげにかかっている。

◆「売り切れる米づくり」めざし管内全域で特栽米に挑戦

JAいわて中央地図

 岩手県の盛岡市と花巻市の間に位置し、管内の中央部を南北に北上川が流れ、西に奥羽山系、東に北上山系が連なる平野部にJAいわて中央がある。平成11年に紫波町・矢巾町・盛岡市都南町の3JAが合併して誕生した同JAの販売事業の約6割を米穀が占めている。米の生産量は約2万3000トン。そのうち約1万1000トンがヒメノモチを中心とするモチ米で、その生産量はJAとしては日本一だ。うるち米はひとめぼれが85%を占め、残りはあきたこまちだ。
 岩手県は全国有数な畜産県ということもあって、畜産堆肥の使用量が全国トップレベルにある。JAいわて中央管内でも肉牛や肉豚の飼育が盛んで、畜産堆肥を米麦や野菜・果樹の肥料として活用し、早くから減農薬・減化学肥料(減減)栽培に取り組んできている。
 米の場合、17年産米から「売り切れる産地」づくりをめざして、従来から進めてきた減農薬・減化学肥料栽培をさらに進め、管内全域が特別栽培(特栽)米に移行することにした。また、生産者全員が栽培日誌を記帳するなど、「安全・安心・顔が見える生産」づくりに取り組んでいる。その結果、18年産米では、うるち米の8割が特栽米になったという。もちろん特栽米以外米を含めて販売される米はすべて「JA米」だ。

◆毎日作業終了後に在庫量を確認し誤出庫を防ぐ
平成9年に建設された越場農業倉庫(通称:西部集約倉庫)。1棟2倉庫で合わせて4600トン収容できる。向かって右にモチ米、左にうるち米が。
平成9年に建設された越場農業倉庫(通称:西部集約倉庫)。1棟2倉庫で合わせて4600トン収容できる。向かって右にモチ米、左にうるち米が。

 こうした米を受け入れ保管するのは、農業倉庫27倉所と2基のカントリーエレベーター(CE)だ。農業倉庫のうち低温倉庫が16、準低温倉庫が4で、この20倉所の収容能力は3万2000トンある。JA管内流通量を十分カバーでき余裕があるのではないかと思ったが、同JA営農販売部米穀課の川村昭彦さんは「あまり余裕はありませんよ」という。
 なぜか。うるち米2品種、モチ米3品種があり、それぞれに特栽米、減減米などがあり、さらに1等2等などの等級区分がある。そして紙袋で入庫するものとフレコンで入庫するものがある。誤出庫を防ぐためにもそれぞれを明確に分かるように管理しなければならないので、多くのスペースが必要となり余裕がなくなっているということだ。
 受注した米と違う米を出庫する誤出庫は、コンタミ問題となる可能性もあり、JAに対する実需者の信用・信頼を損なうことになり、今後の販売に大きな影響を与えかねない。そのため、同JAではパレットやフレコンごとに色紙を使って、生産者・品種・栽培方法・等級などを記入して貼り付け、一目でこのパレットに積まれている米がどういう米なのかが分かるように工夫している。
 そして毎日の作業の終わりに、農業倉庫を管理する営農センターと各倉庫間で各アイテムごとの入出庫数と在庫数を確認し、誤出庫がなかったことを確認する。もし誤出庫があった場合には、即連絡をとりコンタミなどが起こらないような措置をとることにしている。また、月2回程度は本所米穀課と各センターおよび倉庫との確認作業を実施しているという。

◆いつ実需者の視察があっても大丈夫なように

清掃がいきとどき、きれいにはい付けされた倉庫内。
清掃がいきとどき、きれいにはい付けされた倉庫内。

 JAいわて中央のうる米の販売先は、コンビニエンスストア(CVS)、生協・量販店、米卸などだが、最近はそうした実需者から、生産履歴だけではなく保管状況の履歴も求められている。また適切な保管管理が行われていることを確認するためのに実需者の農業倉庫やCEへの視察も増えているという。
 最近は、倉庫(産地)指定をされるケースも多いので、それぞれの倉庫が常に清掃やはい付けに細心の注意をはらった保管管理が必要になっている。
 同JAでは、倉庫における保管管理業務の重要性を考え、17年度から農業倉庫担当者を増員強化するとともに、保管管理業務に対する意識を高め共有化するために、毎年4月と12月前後年2回、担当者研修会を独自に開催している。

◆「保管管理日誌」の重要性や課題を共有化する独自研修会

誤出庫を防ぐためにパレットごとに米の内容が分かるように表示。
誤出庫を防ぐためにパレットごとに米の内容が分かるように表示。

 18年4月に開催した研修会では、最近発生したクレームや事故の事例が報告され、その原因や対処措置など課題を整理し全員で共有すること。保管管理日誌は保管米麦の品質状況の把握事故が発生した場合の倉庫業者としての「善管注意義務」履行の立証資料「保管履歴」の立証資料として、きわめて重要な書類であること。誤出庫を防ぐために、出庫前・出庫作業・出庫後のルールを担当者全員が守る必要があることなどが、確認された。
 この研修会に先立って、本所職員が抜き打ちで全倉庫を巡回し、保管管理日誌の記載と検印状況、温湿度・穀温の記載状況、はい票箋・見取図・台帳整備状況、倉庫・下屋・倉庫外の清掃・整理・はいの安定状況、結露、カビ・異臭・変質・虫・鼠の有無、緊急連絡先・防災班の編成、消火器の設置、鍵の設置・管理について「良好」「普通」「努力必要」の3段階でチェック。研修会で各倉庫ごとの結果が公表され、問題点・課題解決に向けた検討も行われている。
 12月前後に行われる研修会では、改めて実施された倉庫巡回の講評・意見交換を行い、担当者全員の意識の向上と保管管理の徹底をめざしている。

◆火災盗難事故防止でも万全な体制を整備

 火災盗難事故の防止についても、庫内や下屋などでの喫煙、火気の使用を禁止し「禁煙」「火気厳禁」の表示を掲示してあることはもちろん、消火器などを適切に設置して初期消火体制を整備するとともに、消火班を編成してその責任体制を明確にし、消防署とも連携して消火訓練を行い、もしもの場合に備えている。
 盗難防止では、警備会社と契約し無人時の盗難事故に備えるとともに、倉庫の壁、窓、防犯灯など必要な箇所の整備と補強を行いとともに防犯効果の高い錠前を使用するなどの対策を講じている。
 これまで見てきたように、JAいわて中央ではJAの自己責任のもとに適切な保管管理を行う、米麦の品質管理や事故防止に万全を期している。個々の具体的内容は、「自主管理マニュアル」に詳細を記載しその実施の徹底をはかっている。
 同JAでは18年産米についてもほぼ販売先が決まっているというが、それは生産から保管管理までの履歴が分かる体制を整えることで、実需者からの信頼を勝ち得ているからだといえる。

(2006.12.14)


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