農業協同組合新聞 JACOM
   

特集 第53回JA全国青年大会


全国から盟友1200名が結集
青年農業者は農業・地域・JAの担い手


 第53回JA全国青年大会が2月14日〜15日の2日間、日比谷公会堂(東京都千代田区)で開催された。今年のメインスローガンは『甦れ 智と結のこころ』。サブスローガンは『耕そう、盟友たちよ!大地を、心を、日本を~我らがやらねば誰がやる~』で、農業のみならず地域やJAの担い手としての青年部の役割を強く訴えた大会となった。
 大会には全国から約1200名の盟友が集まり消費者との交流が地域の活性化につながっていることや、「安全」「安心」な『食』を生産するという思いを消費者に伝える活動などが発表された。また、日本農業が壊滅的打撃を受ける恐れのある日豪EPAについての特別決議が採択され、大会後は東京都内で消費者へのアピール行動も行った。

第53回JA全国青年大会

食卓の笑顔を守るのは俺たちだ

◆全国の盟友に「結」のこころを

 矢木龍一JA全青協会長は、「われわれ農業者が直面している状況は、“厳しい”という言葉でしか語れないが、将来の農業・地域を担う青年部は、組織活動を通じてこれまでにも大きな困難を幾度となく乗り越えてきた。今年のスローガンにある結(ゆい)とは、人と人の結びつきをなによりも大切にする考え方。品目や地域にとらわれず同じ旗のもとに問題意識を共有して行動する、そんな意味が込められている。全国の盟友と語り合い、交流を深めてほしい」と語り、今年の農政課題で大きな焦点となるとみられるオーストラリアとのEPA交渉などの課題をわれわれの力を結集させて乗り越えようと訴えた。
 来賓のJA全中茂木守副会長は、「昨年10月のJA全国大会で、JAとして青壮年や女性組織の育成・支援を行うことを決議した。全中としても青年組織の未組織JAを解消し組織基盤の強化を図りたい」と述べたうえで「全中では理事をはじめ各委員会に青年部代表にメンバーとして加わってもらっている。地域のJA運営にも参画して若い力と情熱でJAや地域の活性化を図ってほしい」と、青年部への期待を語った。また、青竹豊日本生協連渉外広報本部長は「未来を切りひらくみなさんの活動を、心強く思っています」と共に手を組んで食の安全を守ろうと訴えた。

◆青壮年部が農業と食をつなぐ架け橋に

 JA青年の主張全国大会には、全国各ブロックから選ばれた代表6名が登壇した。
 今年度のブロック代表者は、JA三ヶ日青年連盟・小宮山哲也さん(東海・北陸ブロック)、JAつやま青年部・原田真一さん(中国・四国)、JAグリーン近江青壮年部・田井中龍史さん(近畿)、JAみねのぶ青年部・白石陽一さん(東北・北海道)、JA菊池青壮年部・佐々和宣さん(九州)、JA中野市青年部・芦沢孝幸さん(関東・甲信越)。それぞれ日頃の農作業などを通して考えたことや、めざすべき農業のあり方などを10分間で発表した。
 審査の結果、JA全中会長賞に選ばれたのは佐々和宣さんの『これからの僕達にできる大切なこと』。佐々さんは両親と妻、従業員2名の6名で3800頭の豚を飼っている。「父親となって子どもに安全なものを食べさせることの大切さを痛感するようになり、青年部が実施する“七城ファームスカウト学校”で、地域の子どもたちに食や農の大切さを教えるようになった」と食農教育に関心を持った動機を語り、そのような経験を通して、生産現場で頑張っている青壮年部が農業と食をつなぐ架け橋となるような取組みが必要ではないかと訴えた。

◆都会で稲作を行い、食や農に理解求める―

 JA青年組織活動実績発表全国大会は全国6ブロックの代表が、それぞれの地域の特色を生かした取組みを発表した。今年度のブロック代表に選ばれたのはJA山形おきたま青年部飯豊地区添川支部(東北・北海道、発表者高橋勝さん)、JA東京むさし武蔵野地区青壮年部(関東・甲信越、同田中茂さん)、JA松任青年部松南支部林中地区(東海・北陸、同川本幸進さん)、JAみなべいなみ青年部(近畿、同石橋弘至さん)、JA高知市青壮年部(中国・四国、同隅田憲司さん)、JA菊池肉牛青年部(九州、同安武孝浩さん)。消費者と交流を行いながら地域農産物の消費拡大をめざす活動のほか、「防災農地」など都市近郊農業の大切さを都市住民と一緒になって守っていく取組みなど、青年部の創意工夫や熱意が伝わってくる発表が続いた。
 審査の結果、最優秀賞(千石興太郎記念賞)にJA山形おきたま青年部飯豊地区添川支部が選ばれた。
 同青年部では地元の小中学生を対象に食育活動を行っていたが、活動がマンネリ化、組織の求心力にも低下が見られるようになったという。
 そんな状況を打ち破るために、東京で稲作をすることが仲間から提案され実施することになった。県産主力品種の『はえぬき』を都内で栽培し、食と農業に関心を持ってもらおうと学校探しから始めた。まずは新宿区内の2つの小学校で実現し18年度には4校に広がった。
 「インターネットを使い栽培情報と生育状況を相互に交換し合うなど、遠距離のため管理が行き届かないという問題の解決に努めている。この活動に刺激され脱退した盟友や、Iターン就農者が新たに入部するなど、青年部の活性化が図られている」という。「仲間が一丸となった取組みが評価された。今後の情報発信に期待したい」と野村一正審査委員長は講評した。

◆坂元副会長が次期会長に立候補

1分間スピーチで思いを訴える盟友
1分間スピーチで思いを訴える盟友

 2日目は恒例の1分間スピーチで始まり、19年度の正副会長立候補者が決意を表明した。
 会長には現副会長の坂元芳郎宮崎県農協青年組織協議会委員長、副会長には齋藤隆幸山形県農協青年組織協議会会長が立候補し、それぞれ「地域・県ブロックの活性化なくして全青協の活性化なし、を基本理念に行動する」、「行動なくして成果なし、この言葉を肝に銘じ日々行動していきたい」と決意を述べた。19年度の正副会長の選任は3月13日のJA全青協臨時総会で行われる。
 大会には松岡利勝農水相も駆けつけあいさつ。「農業を21世紀の戦略産業と位置づけ、輸出条件や体制を整え、高品質な日本の農畜産物を大いにアピールしたい。日本農業の未来をみなさんと力を合わせて切り開いていきたい」と青年部への期待を述べた。
 その後、『地域・農業・JA・青年に期待すること』をテーマに、俳優菅原文太氏による記念講演が行われた。農を熱く語る姿に盟友の多くが感銘を受けたようだ。最後に、大会宣言と特別決議(要旨別載)が採択され、2日間の日程が終わった。

◆消費者に思いを伝え都心をパレード

 大会終了後、日比谷公園から、数寄屋橋、東京駅、常磐橋公園までの約2.8kmのコースを「食と農の共生パレード『食卓の笑顔を守るのは俺たちだ』」の横断幕を掲げ行進した。
 矢木会長を先頭に、各ブロックでまとまり青年部ごとに法被やトレーナーなどを着込んで行進する姿は、昼食時の銀座でひときわ目立ち、多くの道行く人が足をとめた。食料自給率の低下に注意を喚起するなど創意工夫を凝らしたスローガンを書き込んだゼッケンを身につけ、消費者に生産者の思いを伝える一団もあった。
 矢木会長、坂元副会長、各ブロック代表などはパレード終了後、港区のオーストラリア大使館を訪れ、同国とのEPA交渉について懸念を表明。米、麦、牛乳など重要品目の関税撤廃を例外として行わないように要請した。

消費者に思いを伝え都心をパレード

大会宣言 -要旨-
 グローバリゼーションがもたらすものは人間性の排除であり、経済優先、効率至上主義により食と農の距離はかけ離れ大きなひずみを生じている。国民の食と農に対する関心は高く、国内農業への期待は大きい。この期待を裏切らず、信頼を勝ち取るために、引き続き食の安全・安心を提供し、農業の魅力を発信しなければならない。
 われわれは、単なる農業者ではなく、国民的命題の解決を任されたリーダーとしての信念を持ち、食料主権の確立に向けて全力で取り組まなければならない。誇り高き青年の情熱と協同の力を持って、全国盟友の叡智と行動力を結集し誇れる日本農業を目指そう。


特別決議 -要旨-
 政府は昨年12月、農家の強い反対を押し切り日豪首脳会談においてEPA交渉の開始を合意。豪州側は、重要品目についても関税撤廃を強く求めて来ることは必至である。関税撤廃を認めれば、我々が訴えてきたWTO農業交渉の提案意義さえも問われ、食料輸入国グループ(G10)からの信頼も失う。他の輸出大国からも関税撤廃を求められ日本農業の崩壊につながる恐れがある。
 日豪EPA交渉は、我が国の食料・農業の将来にも大きく関わる重要課題で、消費者・国民の理解と支持を得るためには、問題意識を共有し、国民に広く訴え全国の盟友一人ひとりの力を結集して運動を展開する。

(2007.2.26)

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