農業協同組合新聞 JACOM
   

特集 「安心」と「満足」を提供し愛されるJA共済へ――JA共済3か年計画のめざすもの


3か年計画のポイントを野村会長に聞く その2

藤谷築次氏・野村 弘氏

◆次世代獲得はJAへの根本的な問題提起

藤谷 3か年計画では「組合員・利用者・次世代層とのつながりの強化」を第一施策として提起していますが、その主旨はどういうところにあるのでしょうか。
 野村 いまの若い世代に信頼される共済、仕組みを提供しなければいけないということです。いままでの共済はどちらかといえば貯蓄型が中心でしたが、若い人のニーズに応えた分かりやすくて掛金も安い生存給付型の仕組みを開発し、次世代層である新たな仲間・ニューパートナーの獲得に取組んできています。
 19年度から21年度までの3か年で新たに204万人のニューパートナーを獲得することを目標にしています。

 藤谷 簡保が民営化されると競争が激しくなりますから、新しい世代を獲得していかないといけないですね。

 野村 簡保の民営化は大きな脅威ですね。僻地までありますから最大のライバルになるのではないかと思います。
 ただ私は、簡保の仕組みの勉強はしなければいけないけれども、簡保の仕組みの批判をしてはいけないといっているんです。

 藤谷 それはなぜですか。

 野村 簡保に加入された方にとっては、ご自身で納得して選んだ仕組みですから「誉めろ」といっているんです。人間は自分が選んだものを誉められると悪い気持ちはしませんよね。そうすればJAのも一つ入ろうか、となるわけですよ。

 藤谷 若い世代を獲得することはJAの大事な取組みだと思いますが、この点は広域合併JAがいままで少し疎かにしてきた部分ですね。組織対策・組織運営対策が多くの広域合併JAで充分でないと思いますから、高齢な組合員が亡くなられたときに次世代の人が組合員になってくれるかどうかが分からないんですね。そういう広域合併JAの組織のあり方、組織運営の弱点を根本的に見直さないといけないと思います。
 そういう意味で、共済事業はとても重要な問題提起をしていると思います。ただし、この問題を共済事業だけで解決しようとしても困難だと思います。JA組織・事業のあり方を組合員・利用者本位に徹底することです。

◆3Q訪問活動を全事業で一緒に

 野村 その通りですね。この3か年計画を進める大きな柱である「3Q訪問活動」は全戸(個)を訪問する活動ですが、ある県の中央会は「これは農業協同組合として当然すべきこと」だといって、一緒にやりたいという提案をしてきています。

 藤谷 JAにとって「組織こそ命」ですし、組織をどう大事にしていくか。組織を次世代に着実につないでいくためにはどうしたらいいのかということですね。

 野村 「3Q訪問活動」にはJA共済連として一定の予算も組んで取組むわけですから、他の事業も便乗しなさいよといっているんですよ。

 藤谷 一見、時間も経費もかかる取組みですが、実は違うんですね。農協の基本的な組織力を培養する活動ですから、お金も時間も惜しんではいけないんです。

 野村 訪問したらそのときの意見や要望などを全部メモして欲しいと思います。1戸1戸訪問して生の声を聞いたアンケートですから、これを活かさない手はないと思いますね。

 藤谷 その通りですね。そのことはJAの職員の人たちにとってもいい勉強になると思いますし、全部、活きてくるはずですよ。

◆農業・農村固有のリスクに対応できる仕組みの開発も

 藤谷 3か年計画の第2の施策として「多様化する組合員・利用者ニーズに対応した保障の提供」を提起され、そのなかで「地域農業における担い手の保障ニーズへの対応」を打ち出していますが、これはすごいと思いましたね。

 野村 正直にいって、内容的にはまだ十分ではありません。担い手を中心とする政策がとられるようになり、担い手農家が個人ではなく人を雇って仕事をするようになる。そうした法人経営で事故が起こる可能性があります。それに直接的に対応するような仕組みがまだJA共済としてはありませんので、現在ある仕組みで対応はしています。しかし、国が施策としてやっているのですから、JA共済としても新たな担い手に対応できる仕組みを考えていかなければいけないと考えています。
 例えば、自然災害が発生して農産物が収穫できなくなり、雇用した人たちの給料が払えなくなるということが起きる可能性があります。ところがJA共済ではそういうリスクに対応する共済がありません。共栄火災にはありますがまだ掛金が高額なんです。なぜかというと前例がないのでこうしたリスクをどう見るかが確立されていないからなんですね。これからはそういうことに対応した仕組開発をしていかなければならないと思います。

 藤谷 確かに生損保・簡保との競争がいよいよ本格化し、激化してくるなかで、JAの最大の強みである組合員の親近感・信頼感をどう確保するかという努力ととともに、やはりJA共済の仕組みの魅力をどうつくり上げるかが大事だと思います。
 私たちは以前から、農業・農家・農村には都会にはない固有のリスクがある。そのリスクに対する保障システムの開発にはコストがかかるかもしれないけれど、ぜひやりきって欲しいという問題提起をしてきました。努力はされていると思いますが、その点についての対応が遅いと思いますね。
 しかし、3か年計画で斬新な対応策を提起されたことは、大変に評価されるのではないでしょうか。

 野村 これは一つの生命線だと思っています。

 藤谷 以前にも申し上げたことがあるのですが、都会に出ている息子や娘は、農村に残してきている高齢の両親のことを心配しているんですね。そして隣近所の人たちにお世話になり迷惑をかけていることも十分に承知していますし、感謝もしているわけです。
 そういう都会に住んでいる子供たちが、農村で周囲の人たちに支えられている両親を守るための共済システムを考えたらどうでしょうか。都会にいる子どもたちは、自責の念にかられているんですから、そういう共済があれば喜んで加入すると思いますね。
 JA共済ならではの仕組みを開発していけば、仕組みの特性、魅力で、JA共済は永遠の勝利者になれると思います。

 野村 それは検討してみてもいいご提案ですね。

◆いま努力しがんばることが明日につながる

 藤谷 最後に、現場でJA共済を推進している役職員のみなさんへの会長のメッセージをお願いします。

 野村 私たちは目に見えない共済仕組みを提供しているけれど、これはその農家の家庭の幸せを配達して歩いているのだという自負をもってもらいたいと思います。けっして契約していただいた人のマイナスになるものではなく、プラスになることをしているのです。
 JAの職員のみなさんは苦しいことはあると思いますが、一所懸命に推進した暁には、絶対にお客様から非難されることはありません。それは、充分に契約内容を説明し、理解をしていただいた上で契約を結べば、新潟県中越地震のあと小千谷市から感謝状をいただいたように、いずれは喜んでもらえるからです。
 みなさんのご苦労は十分に承知したうえで、そういう気持ちをもって推進していただければと思っております。

 藤谷 長期共済新契約が9年連続で目標を達成しましたが、すべての共済分野で目標が達成できるようにぜひ奮闘していただきたいと思いますね。

 野村 JA共済は「ひと・いえ・くるま」の総合保障をしていますが、3分野の共済種類を利用している人は、18年度で2割強です。そしてどれか1種類しか利用していない人が半分以上もいます。そういう意味でまだまだ余地はいくらでもあるといえますので、来年のいまごろは全分野で目標を達成し、長期共済は10年連続目標達成と胸を張っていえるようになればいいなと思います。

 藤谷 初めに会長がいわれたように「目標は達成してはじめて目標といえる」わけですから、ぜひがんばっていただきたいですね。

 野村 JAの役職員をはじめJA共済連の職員にも大変なご苦労をいただいていることを忘れてはいけないと思いますが、いま努力しがんばることが明日につながりますし、これからのJA共済にとって大事だと思います。

 藤谷 本日は貴重なお話をありがとうございました。

インタビューを終えて
  野村会長は、自分の就職先として地元の農協を選択し、しかも共済担当職員としてスタートを切ったという生粋の農協マンであり、“共済人”である。新入職員として共済事業の取り組みに苦労し、工夫を重ねて実績を挙げた若い時代の経験が、共済事業のトップに立つ野村会長のバックボーンとなり、自信となっていると拝察した次第である。
 気持ちのよいインタビューであった。本物の農協運動者にお出合いできた、という喜びも大きかった。
 何よりも注目したいのは、「3か年計画」の斬新な中身である。「絆の強化と仲間づくり」という標題もよい。県連と全国連との完全統合の成果が、この「計画」によって、正しく花開こうとしているとの印象を強くした。ただし、その実現のためには、中身の一層の具体化と実践態勢の強化に向けて、JAと連合会とが相互信頼を基本に、着実な取り組みを進めることが不可欠である。野村会長のさらなるリーダーシップの発揮を期待したい。(藤谷)


JA共済3か年計画の概要

■多様な保障ニーズに対応した仕組み・サービスの提供など7つの主要施策

 19年度からの3か年計画では、「JA活動への理解、参加・参画を促進するとともに、既契約者に対する生活総合保障の確立と、ニューパートナーの拡大に取組むことにより、常に次世代層の加入があり、幅広い年齢層を対象にした組合員・利用者集団を実現」し、「絆の強化と仲間づくりによる組織・事業基盤の維持・拡大」を図るという中長期展開方向を提示した。
 そのためにこの3か年では、「生存保障ニーズなど時代とともに多様化する保障ニーズに対応するため、従来の万一保障中心の保障提供活動から医療系共済、年金共済および自動車共済も重視した保障提供活動に力を入れていく」こと、「JAの総合事業の一翼を担うJA共済が組合員・利用者に対する責任を全うし『信頼』を獲得し続けるには、コンプライアンスを徹底した事業運営が必須であり、常に組合員・利用者の視点に立った丁寧かつ誠実な対応が必要である」との認識に立ち、
組合員・利用者および地域住民の多様な保障ニーズに対応した仕組み・サービスの提供
コンプライアンスを徹底した丁寧かつ誠実な事業活動を行う
ことを基本方針とし、次の7つを主要施策として掲げた。
1.組合員・利用者、次世代層とのつながりの強化
2.多様化する組合員・利用者のニーズに対応した保障提供
3.組合員・利用者に対するサービス提供力・推進力の強化
4.組織活性化に向けた人材育成等の取組み
5.地域とのつながりの強化に向けた社会貢献活動の展開
6.健全性・信頼性向上への取組み強化
7.「JA・連合会の事業実施体制の再構築」の着実な実践
 この7つの主要施策のうち、いくつかのポイントについて紹介する。

■「3Q訪問活動」でコミュニケーションを強化

 普及推進については、本紙インタビューで野村弘会長が強調しているように、計画的な訪問活動を行い、未訪問世帯の解消や訪問頻度を増やすことで、組合員・利用者とのコミュニケーションを強化する「3Q訪問活動〔全戸(個)訪問活動〕」に取組む。
 この「3Q訪問活動」は、
契約者への「ありがとう(サンキュー)の気持ち」を込めた訪問活動行う。
訪問時には「最近、ご家族のみなさまにはおかわりはありませんか?」「最近、ご自身やご家族の保障について気になったことはありませんか?」「現在ご加入の保障内容で、ご不明・ご心配なことはありませんか?」という「3つのQ(質問)」を必ず行うというもの。
 そして、すべての契約世帯・すべての契約者・すべての組合員(未加入者も)の「3つを訪問対象」に実施する。 そのことで、組合員・利用者の意見を聞いたり、ニーズに応えた仕組みの提案機会を増やすことで、コミュニケーションを深め組合員・利用者の満足度の向上をはかっていくとともに、世帯内未加入者の解消・「ひと・いえ・くるま」の総合保障の促進。さらに生命共済や自動車共済などを中心にして次世代・ニューパートナー対策に取組んでいく。
 また、保障性・貯蓄性ニーズに対応した仕組みを組合員・利用者の視点にたって丁寧に説明・提案することで満期到来契約などの継続利用につなげていくことも3Q訪問活動の重要な役割の一つだといえる。

■医療系保障の充実と分かりやすい自動車共済へ

 仕組開発については、「生命保障分野における魅力ある仕組み、『わかりやすい』仕組みをめざすとともに、特に、ニーズの顕在化している生存保障分野への新仕組みの投入を図る。 
 ニューパートナー獲得の柱の一つである自動車共済については、「仕組みのわかりやすさ、すすめやすさ」を追求し、「家庭用自動車共済と一般用自動車共済の位置づけを明確」にし、家庭用の保障力の強化と一般用の保障体系の整理を重点事項として取組むことにしている。
 担い手に向けた仕組開発についても段階的に取組んでいくことにしているが、多用なリスクへの対応を万全なものとするため、あわせて共栄火災の保険商品を活用していく。 また、こうした保障提供とあわせて、地域農業者を取り巻くリスクについてわかりやすく説明した資材の作成・提供など情報提供にも取組んでいく。
 さらに、「仕組開発とあわせて、あらゆる利用者接点(LA、一斉推進、窓口、共済代理店、自動車事故処理、JA共済ホームページ)におけるサービス提供力の強化と事務の簡素化・適正化に」取組んでいく。

■共済事業の次代を担う中核的な職員を育成

 事業を支えるのは「人」であり、人材育成もこの3か年計画を成功させる重要な鍵だといえる。「農業協同組合の理念を踏まえた共済事業の使命の理解や、共済事業における専門的な知識・能力の向上のため、共済部門におけるJA職員育成体系の見直し・強化を図るとともに、今後のJA共済事業を担う中核的な職員の育成に取組む」。具体的には、これからのJA共済事業を担う中核的な職員を育成する共済基幹職員研修「次世代リーダー養成コース」を新設するとともに、JA役職員を対象とするセミナーなどの新たな取組みについても検討していくことにしている。

■ニューパートナー204万人獲得など21年度末にめざす姿

 以上見てきたように▽3Q訪問プロジェクトを基軸とした事業活動などによる複数共済種類利用世帯率の向上▽生存保障(医療系共済、年金共済)、自動車共済を重視した推進活動の確立と実績の伸長、そして▽コンプライアンスを徹底した事業運営の構築による不祥事の撲滅によって、3か年の最終年度である21年度末には、
新たな仲間づくり(ニューパートナー)を19〜21年度累計で204万人獲得(15〜17年度累計138万人)
医療系共済の保有契約件数を188万件に拡大する(17年度末57万件)
年金共済の保有年金額を2兆275億円に拡大する(17年度末1兆8451億円)
自動車共済の新契約件数を902万件に拡大する(17年度856万件)
ことを「めざす姿」として掲げている。

(2007.5.17)


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