農業協同組合新聞 JACOM
   

特集 「食と農を結ぶ活力あるJAづくりと女性達の役割2008」


JA女性 かわろう かえよう 未来のために

フレッシュミズ大いに語る その1

子ども・高齢者そして女性をつなぐ活動で地域を元気に
ご飯をつくること、子どもと一緒に食べることの大切を

出席者
加川可名子さん・JA北海道女性協議会フレッシュミズ部会長
小林町子さん・JA埼玉県女性協議会フレッシュミズ部会長・JA全国女性組織協議会理事
吉本幸子さん・JA徳島女性組織協議会フレッシュミズ部会長
(司会)米本雅春氏・JA全中地域生活部長


 食料自給率が40%を割り、米価は下落し飼料や生産資材の価格は上がるなど、いま国内農業の現場からは悲鳴が聞こえてくるような状況になっている。そんな厳しい状況の中で、食と農を守るために奮闘しているフレッシュミズのみなさんに、暮らしのこと、農業のこと、そして地域のことなど、食と農を結ぶ活力あるJAづくりと女性たちの役割などを大いに語り合ってもらった。

◆日本型食生活の基本はご飯と味噌汁

加川可名子
かがわ・かなこ
JA北海道女性協議会フレッシュミズ部会長、JA上川地区女性協議会フレッシュミズ部会長、JA北はるか女性部美深支部スズラン会。夫の両親と小学生の子ども2人の6人家族。水田12haのうち8haでモチ米を生産。後はかぼちゃなどを生産。夫の両親がイチゴの高設栽培をしている。モチ米の加工グループを立ち上げ、夏は道の駅でその場で搗いて売る実演販売、冬は切り餅を製造。4年前から小学2年生を対象に田植えと稲刈り体験を学校と連携して実施している。

 米本 「食」の乱れがいわれて久しいなか、改善がすすんでいるように見えませんが、これについてどうお考えですか。
 小林 若い母親にとっては簡単に調理できる食材があふれていて、私たちの母の世代のように素材から調理して家庭の味をつくるようなことがだんだん減ってきていると思います。それはある程度しかたのないことだと思います。ただ、食品の偽装などが起きたことで、消費者が産地表示などに敏感になっています。そして海を超えて来るものは信用ができなくなって、国内のもの地元のものが見直される時期にきていると思います。そういう時期ですから、農家の人たち、とくに若い私たちが力を発揮しなければいけないと考えています。
 私のところは米が主体ですが、悲しいことに、価格も下がっていますが、消費量も減っています。これから高齢者が増え、育ち盛りの子どもが増えないなかで、米の消費は自然と減っていくと思います。そうしたなかでも欧米化した食生活をせめて日本型食生活に見直してもらうために食農教育を進めていきたいと考えています。
 米本 日本型食生活というのは具体的には…。
 小林 ご飯とお味噌汁が基本です。おかずは子どもがハンバーグや肉が好きならそれでもいいと思います。小学生で味噌汁を飲んだことがないという子どもがいると聞いたことがあります。母親が味噌汁をつくっていないということで、そのこと自体が日本食離れだといえます。

◆三世代同居でバランスの取れた食事が

小林町子
こばやし・まちこ
JA全国女性組織協議会理事、JA埼玉県女性協議会フレッシュミズ部会長、JA鴻巣市。夫の両親と今年成人式の長男を頭に子ども3人の7人家族。米18ha、麦20haの専業農家。3番目のお子さんが保育園に入ったころからビニールハウスで花き栽培を行っている。

 米本 食事についてとくに気をつけていることがありますか。
 加川 三世代が同居していますが、共通の話題はおかずですね。私だけが料理するのではなくお祖母ちゃんが煮魚とか煮物を作ってくれます。そういう料理は私よりも上手ですから、そういう味を子どもたちは知っています。私は私で子どもたちが好きなものを作りますから、いろいろな味を子どもたちが分かっている…
 小林 年寄りと同居すると食事が偏らず肉と野菜のバランスがとれますね。
 吉本 私の家も3世代同居なので、自然と和食中心で娘も好ききらいなく何でも食べますね。食材がすぐにいろいろとあるので手間も愛情もこめられます。
 食の乱れが今の世の中をあらわしているように思います。今月の末に、お米の良さを見直すために食のセミナーを小・中学生の子どもと保護者を対象に行います。今年は、昔から現代まで人気のあるおにぎりをつくり、改めて良さを知ってもらいたいと今、いろいろと計画しています。
 米本 親と子だけでなくお年寄りがいることで、メニューにしても食材にしても豊富になっているわけですね。
 小林 私がつくると肉中心になりますけど、年寄りがつくると魚とか煮物が多くなります。それが一緒に食卓にあがるから自然にバランスがとれるわけですね。

◆親子の気持ちをつなげる手づくり弁当

吉本幸子
よしもと・さちこ
JA徳島女性組織協議会フレッシュミズ部会長、JA板野郡フレッシュミズ部会長、JA板野郡栄支所フレッシュミズ部会部長。夫の両親と高校3年生の娘さんの5人家族。農業は自家用の米を作る程度。JA板野郡栄支所の青果市場(大消費地向けに出荷できない小規模生産者が利用する)で直売所を経営。県の部会長としては2期4年目、改選期。女性部活性化は若いためフレッシュミズの存在はとても大切、5年後の女性部を考え、次世代へつながる若い後継者を探している。

 加川 私の地域は給食がありません。幼稚園から小中高校まですべて弁当です。札幌とか旭川から転勤してきた先生が最初に感じるのは、ここの子どもたちはちゃんと朝ご飯を食べている子が多いということだそうです。なぜかといえば、弁当を作るために毎朝必ずご飯を炊かなければならないからです。
 小林 お弁当というのは気持ちが通じますね。また同じおかずかといわれても、手づくりは手づくりですからね。一番の食育だと思いますね。
 米本 お弁当を作ることは、母親にとっても何か効用がありますか。
 加川 残してくるものから好き嫌いが分かりますし、どうすれば食べるか工夫をしますよね。非農家の子どもの友達が遊びに来たときには、おやつはスナック菓子ではなく手づくりのものを出してあげたいと思うので、簡単な芋を揚げたり焼いたものを出すと、子どもたちは美味しいときれいに食べてくれます。そういうことも農家の役割かなと思います。
 米本 吉本さんの娘さんは高校生ですね。お弁当ですか。
 吉本 私の娘はお弁当ですが、娘の高校は都市型で1学年8クラスあり、部活をしていたり、下宿生が多くそういう子どもはコンビニ弁当か学食で、そうした子どもが3分の2はいますね。親が手をかけていないとコンビニ弁当でも平気になってくると思いますね。コンビニが同じ町内に10軒くらいありますしね。それでも、娘のお弁当を見て羨ましがりおかずを取ったりするようです。そういう子どもたちや保護者の考え方をどうするかが課題だと思いますね。

◆食農教育は子どもではなくまず親から

米本雅春氏
米本雅春氏

 米本 JA女性組織では、食農教育活動への関心が、大変強いように思いますが、どのような活動をしていますか。
 吉本 チャグリンフェスタでJAとかかわりのない子どもや保護者を含めて集まってもらい、米の消費拡大のために米粉パンと米粉を使ったケーキづくりをしています。米粉パンは学校給食で月3回入りました。ネットワークでつながっている子どもは食の大切が分かっているので、それ以外の子どもや保護者の食をどうにかしたいと思っています。難しいけどね。
 小林 食育は子どもに教えるのではなく、親に教えなければだめです。よく学校で子どもと一緒に郷土料理を作ったりしますが、子どもは「ああ、美味しかった」とそこで終わってしまうんです。親が覚えれば、自然に子どもに伝わるんです。
 米本 核家族のなかの親に対する食育ですね。
 小林 核家族だと母親は気にする目がないから、疲れていたりするとついつい手抜きになってしまう。親と同居していると、多少熱があっても台所に立たなければという環境になり、嫁姑の問題はあるかもしれないけれど、子どもはちゃんと食べているんですね。
 米本 いままでのお話を聞いていると、三世代が一緒に生活し一緒に食事をしていること。そして、朝食・昼食を意識して作っている。これはいま世間でいわれていることの対極にある姿だと思います。なぜそういう食生活ができるのですか。それは農業を営んでいることと関係があるのでしょうか。
 吉本 食材が身近にあることは関係がありますね。昨年まではお祖母さんもいて四世代が同居していましたが、自然に何でも食べていましたね。娘が友達からよく「家にお年寄りがいるでしょう」と言われ「どうして?」と聞くと、性格がおだやかだからと言われるのが嬉しいそうです。
 小林 三世代が同居することができない人もいるわけで、核家族の母親たちに食事の大切さとかご飯を作ることが子どもを育てるうえで一番大切なことだということを伝えていくことだと思います。それはメニューを教えるのではなく、一緒に食べることが大事だということを分かってもらうことなんですね。
 米本 家族で一緒に食べることですね。
 小林 いま私たちがやらなければいけない食育は、メニューづくりだけではなく、なぜ食事を作らなければいけないのか。なぜ一緒に食事をしなければいけないのか。それを伝えていくことだと思います。

◆農家の子どもたちは野菜で遊び学ぶ

 米本 田んぼや畑があると季節ごとにいろいろな食材がいただけますね。
 加川 私の場合、夏場だけですがハウスで一通りの野菜を作っています。子どもに「ナスビ3本採ってきて」とか「トマトとキュウリを」とかいって取りにいかせます。農家の子どもですから、野菜の一つひとつがどう育ち、いつが美味しい、どうなったら食べられるのかを知って、家を出て行って欲しいのでそうしています。非農家の子どもが遊びに来たときには、マヨネーズが入ったお皿を持って子どもたちがハウスに入りキュウリをもいで食べたりしています。
 米本 東京のような都会ではちょっとできない体験ですね。
 吉本 畑のある家の子どもでないとできない経験ですね。
 小林 体験学習では育つ過程は分からないから、農家の特権ですよね。
 米本 農家ならではの子育てですね。
 小林 遊びの中に、食育がありますね。

◆JAが行政に働きかけて学校を動かして欲しい

 米本 食農教育はJAグループの重要課題でありますが、JAが親を対象とした食農教育に取組むときに、こういうことをしたらいいというアイデアはありますか。
 小林 学校を利用するのが一番いいですね。同世代の母親がいますからね。それには学校の理解と協力がないとできませんが、地域の人やフレッシュミズだけではなかなか学校を動かすことができません。そこで地元のJAが行政との間に入ってくれるとやりやすいと思うのですが…。
 米本 学校と親とJAが食材提供も含めて、一緒に活動することを考えた方がいいわけですね。
 小林 小学校の総合学習の時間を農業体験に使ってもらうとかですね。
 加川 私のところは、田植えと稲刈り体験に毎年小学2年生がきます。それはうちの子どもが2年生のときに地域の産業を学ぶという単元があるというので、学校に提案して始まったのです。そのときに興味をもって参加する母親もいるので、今後、親子参加型で土曜、日曜日を使ってできればいいなと思っています。
 小林 私のところも農業体験でもち米をつくり、小学校で餅つきの祭りをやり、そこにお年寄りを招いて竹とんぼの作り方とかを子どもに教えてもらったりしていたんですけど、校長が替わったらその場がなくなってしまったんですよ。
 吉本 私は娘が小・中学校の時に役員をしていて、校長先生に理解があり、やはりお米をつくり餅つき大会など、いろんなことにかかわってきました。そんな活動では本当に子どもたちはいきいきと、とてもいい笑顔でした。
 あきらめてはだめ。やめるのは簡単だけど、また一から改めてことをおこすのは大変です。根気よくあきらめない。
 米本 そういう校長など教育関係者の意識を変えるにはどういう働きかけが有効ですか。
 小林 行政が一番ですよ。
 米本 食農教育は地域のあらゆる機関を巻き込んでいかないと難しいですか。
 小林 難しいですね。女性組織だけでは動きませんから、JAが間に入って行政を動かし、先生方を動かしてもらうことだと思います。
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(2008.1.31)

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