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コラム 大宇宙・小宇宙
溢れる涙 枯れる涙

 8月は、甲子園の球児たちや応援団にとって、勝利すれば喜びの涙を流し、片や無念の涙に暮れるシーズンである。
 老人性白内障がすすんでいる筆者は、月に一度ほど眼科医に通い、進行状況をチェックして貰っている。待合室には、患者向けにいくつかのパンフレットが置いてあるが、その中に「涙の話」という小冊子があった。
 甲子園の涙の季節であるし、一般の人にも参考になるので、概要をご紹介してみよう。

 上まぶたの外側あたりに「主涙腺」(しゅるいせん)という涙の生産工場がある。ここから目に出てきた涙は、その表面を一様に潤したあと、10%は外気中に蒸発し、残る90%が、役目を果たして「涙点」を抜け、「涙小管」、「鼻涙管」を経て、鼻水と化する。
 欠伸(あくび)は涙を伴うが、そのあと鼻をかみたくなるのは、そのせいである。

 甲子園で涙を流すのは、涙小管では細すぎて、捌ききれない涙が目の外に溢れ出た現象で、川でいえば、洪水にほかならない。
 まばたきは、涙を循環させるポンプ役で、まばたきをする度に、目の表面に主涙腺から一定量の涙を送り込み、古い涙は涙小管から鼻へ排出される。
 通常1分間に20〜30回、パチリ、クチリとまばたきをして、このような新陳代謝を行っている。

 ところが、長い時間、神経を集中させて、小さい文字や、コンピュータの画面を見たりしていると、まばたきの数が、普段の約4分の1程度、1分間で5回ほどに減ってしまう。その結果、目がしょぼしょぼしたり、痛くなってくる。
 健康な目であるため不可欠な条件は、新鮮な適量の涙が、つねに目(角膜)を覆っていることであるが、その役割は、
   @目の表面を外界から守り、乾燥を防ぐ
   A角膜に酸素や栄養を届ける
   B目が鮮明な像を結べるように、角膜の表面を 滑らかに保つ
   Cバイ菌の進入や感染を防ぐ
   Dゴミやホコリを洗い流す

 涙の幕は、厚さが僅かに7ミクロンしかないが、三層からなり、「油層」と「ムチン層」とが、サンドイッチのパンのように、真中にあって98%を占める「水層」を挟んでいる。
 外側の油層は、涙の蒸発を防ぎ、内側のムチン層は、涙が流れ落ちないように角膜の表面に、糊のように張り着いている。
 涙の出が減ったり蒸発が激しく、いわば渇水状態になると、川底が露出してくるように、角膜の上に「ドライスポット」が生じる。そうなると、外気に直接触れた角膜は、痛みに敏感で、傷つきやすく、感染もしやすい。

 したがって、コンピュータやワープロに接している時間の長い人たちは要注意だ。
 それだけではない、空調で乾燥しすぎた部屋や、睡眠不足も大敵である。「目が疲れた」と感じたときの原因の60%は、以上のことからきた「目の乾き」だという。
 とくに、コンタクトレンズで角膜にフタをした状態になっている人にとっては、まばたきによる涙の交換率は、ハード装用の場合で、通常の20%、ソフトではなんと2〜3%に低下してしまう。

 目が乾き、角膜や結膜に傷害をおこす疾患を、「ドライアイ」と称しているが、日本で約800万人のドライアイ患者がいるそうである。総人口から単純に計算してみると、100人中、7人ほどがこの患者である。
 目が疲れやすい、目が重い、目が充血する、目がゴロゴロする、あるいは目が乾くと感じたら、市販の目薬ですませることなく、一応は「ドライアイ」ではないかと疑って、眼科医に行くことが大切ではないかと思う。 (MMC)



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