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コラム 大宇宙・小宇宙
積小為大

 戦前、戦中に小学校に通った世代は、覚えているひとが多いと思うが、校庭の一隅に、たきぎを背負って、本を読みながら歩く姿の銅像があった。
 家事の手伝いとしてたきぎ拾いをし、寸暇を惜しんで勉学にもいそしんだ二宮金次郎は、模範少年として、格好の教材であった。
 その金次郎は、長じて尊徳となり、数多くの農村の更生に手を貸し、「天地人」3つの徳に報いようという報徳精神に基づく報徳社運動は、明治になっての産業組合運動にも、大きな影響を及ぼしている。
 その尊徳は、常々「積小為大」を説き、自ら実践した。なんだこれしきのこと詰まらないと思うことでも、長く続ければ大変なものになる。「ちりも積もれば山となる」であり、「継続は力なり」だ。
 アメリカの西部」を流れるコロラド川の中流の深く刻まれた峡谷グランドキャニオンは、地球の年齢50億年のほぼ半分といえる20億年前の地層まで見せている。
 絶えず沈泥を押し流す水の勢いは、1000年に7インチ(約21センチ)づつ岩盤を掘り下げているが、長い年月の間に、浸食された最深部は、1830メートルにも達している。まさに「積小為大」の結果にほかならない。
 昨今、地球の環境問題が深刻になっているが、例えば、地球上の森林は毎分29ヘクタール、甲子園球場の20倍ほどが失われている。
 地球上の広大な面積に比べて、とるに足らないと考えるかもしれないが、1年もたつと、15万平方キロ、日本の面積は36万平方キロであるから、ざっと2年半弱で、日本の面積ほどの森林が失われている。
 適切な対策をとることなく、このような状況で推移するならば、50年、100年先にはどんな惨状が待っていることだろうか。
 仮に、人の一生の平均を70年とすると、秒に換算して22億秒ほどになる。日々の生活で、1秒、2秒は瞬時に過ぎ去ってしまうが、1秒1秒が22億秒積み重なって、ひとりの人生を左右している。
 バブル崩壊後の景気回復も思わしくなく、国際的な評価も下落した日本であるが、その責任をともすれば、政治や役所に押しつけ、われ関せずのひとが多い。
 しかしながら、その前に一見とるに足らぬ小さなことであっても、ひとりひとりが良い方向への努力を積み重ねることが、再建への途の本道ではなかろうか。
 環境保全や、省資源の分野では、とくにそのことがいえよう。(MMC)



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