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コラム
大宇宙・小宇宙

遺伝子

 遺伝子組み換え食品の登場が話題になって何年かたつが、その有効性がある反面、人体に及ぼす危険性や、環境への影響は、片ときも目を離せない重大関心事であろう。
 害虫が食べると死んでしまう「害虫抵抗性」や、除草剤をまいても枯れない「除草剤耐性」の遺伝子を組み込んだ農産物は、農薬の使用量を減らし、収穫量を増やすメリットを備えている。
 一方、様々な遺伝子の組み換え農産物の開発は、人間のアレルギーの原因になるのではないかとの懸念があり、国等での慎重な審査が必要とされている。
 ここで人間社会の話に変るが、法律の改正なり、新法の制定は、農産物でいえば、遺伝子の組み換えなり、新遺伝子の取り込みに相当しよう。
 ヒトの遺伝子情報は、約30億対の塩基配列で構成されているが、農協法等の中に組み込まれた農協等の活動なり、性格等を規定する遺伝子も、30億対にはいかないまでも、数多くある。
 その遺伝子の大きな差し替え作業が、6月29日に行われ、来年1月1日から現実のものとして動き出す。
 いうまでもなく、本紙でも詳しく報じてきた6月29日公布、1月1日施行の農協法一部改正法と農林中金法全部改正法である。
 前者の改正の主なものとしては、法人経営に正組合員資格を付与し、農協の行い得る事業の冒頭に「営農指導」を掲げ、新たに農協間の地区の重複を認めるものなどがある。
 また、「農林中金と信農連との合併等に関する法律」(統合法)の名称を、「農林中金及び特定農協等による信用事業の再編及び強化に関する法律」(再編強化法)と変更し、中身を一新している。
 後者は、いまは極めてまれにしか見当たらない片仮名書き法律を、平仮名書きに改めている。同時に、旧法ではなかった目的規定を、第1条で「農漁協、森林組合、その他の農林水産業者の協同組織を基盤とする金融機関としてこれらの協同組織のために金融の円滑化を図ることにより、農林水産業の発展に寄与し、云々」と掲げている。
 今回の農協改革二法は、時代の変化に即して、新たに多くの良い遺伝子を取り込んで、21世紀での「生き残りと飛躍」に備えている。ただし、ここで忘れてはならないことは、20世紀での協同組織運動の旗印「ひとりは万人のために、万人はひとりのために」という堅持すべき良い遺伝子が、近時、ともすれば競争原理という遺伝子の台頭で、その姿が薄れがちになっていることである。
 改革の名の下で、この旗印が軽じられるようでは、「魂のない協同組織」に化し、その存立意義も失われてしまうに違いない。
 「ひとりは万人のために、万人はひとりのために」は、21世紀も、守り続けねばならない「良い遺伝子」である。(MMC)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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