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コラム
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エルサレム

 クリスマスを前にして、キリストゆかりの地、イスラエルの首都エルサレムを中心に、テロや、それに対するミサイルでの応酬など血なまぐさい事件が絶えない。
 アメリカでの多発テロも、遠因はエルサレムにあるといわれている。この地でのユダヤとイスラム両教徒間の抗争の中で、ユダヤ側に肩を持つアメリカ(世界最大のユダヤ人口国)に対してのイスラム側(タリバン)の報復であるという。
 では、そのエルサレムとはどんなところなのだろうか。一口にいって、この地はユダヤ教、キリスト教それにイスラム教にとって、抜きさしならぬ「聖地」である。
 エルサレムは、遠くダビデ王の治世紀元前10世紀から、ローマの攻撃で陥落する紀元後70年まで、ユダヤの政治、宗教の中心地であった。
 ダビデに続くソロモン王は、前王の遺志を継いで神殿を建設し、その中にモーセの十戒を刻んだ石板を納めた。その後、神殿は外敵によって壊されたが、一度は再建されている。
 キリスト教徒にとっても、エルサレムはイエス受難の地であり、復活の地である。
 イスラム教から見ても、始祖マホメット昇天の地である。
 したがって、エルサレムはユダヤ教徒にとって「嘆きの壁」、キリスト教徒には、イエスの墓である「聖母教会」、イスラム教徒としては、マホメット昇天の場に立つ「岩のドーム」の所在地として、決して忘れることはできない。
 ユダヤ人の祖先であるヘブライ人が、イスラエルも含まれる「カナン」(パレスチナの古名)に定住したのが、前20世紀ころ。その後、前述のようにダビデ、ソロモン両王の下で、ヘブライ王国を形成、その都エルサレムは「ダビデの町」と称せられた。
 ソロモンの没後、南北の両国に分裂し、両国とも前8、7世紀に滅亡している。前2、1世紀に一時的に独立しているが、紀元後1、2世紀のローマに対して反乱の結果、完全に滅び、以降ユダヤ人は祖国を失って世界各地に離散した。
 旧約聖書によれば、前18世紀ころ、アブラハムは神からカナンの地を与えるとの啓示を受け、エジプトで生まれたモーセも、シナイ山でカナンの地に戻れとの神の声を聞き、奴隷で苦しんでいたユダヤ人を率いて「出エジプト」を果たし、シナイ山で再度神の啓示を受け、有名な「十戒」を石に刻んでいる。
 国を失って2千年後の19世紀に、世界に散ったユダヤ人(デイアスポラ)は、旧約聖書に記されている神からの約束の地パレスチナ(カナン)に、民族国家を再興しようとシオニズム運動をおこした。
 第1次世界大戦中に、イギリスは外交上の判断から、この運動に加担し、戦後、この地がイギリスの委任統治領になると、大量のユダヤ人の流入をみた。その結果、先住民であるイスラム教徒との間が険悪になった。
 さらに、第2次大戦後の1948年、イギリスの委任統治の終了とともに、「イスラエル共和国」が建国された。2000年ぶりのユダヤ人国家の再来である。
 以降イスラム教徒が太宗を占める近隣アラブ諸国とイスラエルとの紛争が絶えない。一進一退といいながらも、アメリカなどの支援を受けて近代兵器を装備したイスラエルに歩があり、67年の第3次中東戦争では、僅か6日間で、エジプト領の「ガザ地区」、ヨルダン領の「ヨルダン川西岸」、シリア領の「ゴラン高原」などを制圧し、国際的に認められていないまま、現在まで占領状態が続いている。
 これがパレスチナ難民を発生させ、パレスチナ自治政府、アラファト議長率いるパレスチナ解放機構(PLO)の反発を強め、絶えざるテロ事件の温床となり、アメリカでの多発テロの引き金にもなったという。       (MMC)


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