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コラム
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白書満開

 政府刊行物センターなどに行くと、売場の一画に白書の類が数多く並んでおり、まさに“白書満開”の観がある。
 例えば全国官報販売協同組合発行の「政府刊行物等総合目録」の2002年版を見ると、1年間に刊行された白書の類は、実に145点もあり、そのほか英文白書も14を数える。「IT白書」「医療白書」「株式上場白書」「国会白書」「地球白書」「保育白書」「ボランティア白書」等々と百花繚乱、あらゆる分野に及んでいる。
 さらに、目録外でも「せせらぎ白書」「ベスト青春白書」、映画の「いちご白書」まで、なんでもありだが、「白書」の定義づけは極めて厳しい。
 政府は昭和38年10月24日の事務次官等会議において、「政府刊行物(白書類)の取扱いについて」と題する申合わせをおこない、「白書」とは次のような要件を備えたものであるとした。
(1)中央官庁が編集する政府刊行物であること
  1)官職を付した個人別名で編集したものは含まない
  2)部内資料も含まない
  3)月刊誌、パンフレット類も含まない
(2)内容は政治、経済、社会の実態および政府の施策の現状を国民に周知させることを主眼とし、法令制度の解説書、単なる統計、調査報告書等は含まない
(3)以上の要件を備えたもので2種類ある。
  1)法律の規定(以上傍点)に基づき国会に対して行なう報告書を白書とした刊行書
  2)閣議(以上傍点)への報告書を白書とした刊行物
 平成13年の省庁再編の結果、白書もその名称や数が若干変ったが、再編前には、前者が15種類、後者が20種類あった。
 「農業白書」「土地白書」「地方財政白書」などは前者に属し、「経済白書」「防衛白書」「労働白書」「通商白書」などは後者である。
 したがって、さきに白書の刊行点数が145あるといったが、「正規の白書」はそのうちの4分の1に過ぎず、残りは政府の定義とは無関係に、勝手に「白書」と称しているアウトサイダー物である。
 政府が「白書」と名付けたゆえんは、イギリス政府の公式報告書の表紙が白いため、WhitePaperと呼ばれていたことによる。さらに「白」には「ありのまま」「ガラス張り」の気持が込められている(実際には100%「ありのまま」で「ガラス張り」かは保証の限りではない)。
 なお、例外として「外交青書」(傍点)があるのは、イギリス議会などの表紙が青いのでBlue Bookと呼ばれていることにあやかったものである。
 農林水産業分野の政府白書には、「農業白書」(正確には食料・農業・農村の動向に関する年次報告)、「漁業白書」「林業白書」があり、アウトサイダー物として農林水産貿易白書(アグロトレードハンドブック)(日本貿易振興会編)、食料白書(食糧・農業政策研究センター編)、世界食料農業白書(国際連合編)などがある。
 敗戦の翌々年の昭和22年7月に、当時の経済安定本部が、戦後の経済危機を乗切るために、その実情を国民に訴える目的で「経済実相報告書」を発表したのが、白書刊行の始まりである。
 そして経済白書の31年版が「もはや戦後ではない」と謳ったのは、あまりにも有名である。
 このように白書の副題は、そのときの状況なり課題を端的に表している。因みに平成13年版の白書の副題のいくつかを拾ってみると、「経済財政白書(内閣府編)」(改革なくして成長なし)、「中小企業白書(中小企業庁編)」(目覚めよ!自立した企業へ)、「環境白書(環境省編)」(地球と共生する「環の国」日本を目指して)、「文部科学白書(文部科学省編)」(二一世紀の教育改革)などがある。(MMC)


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