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コラム
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なぜ牛乳が?


 親戚の子で“メグチャン”の愛称で親しまれているタレントの奥菜恵の大のファンがいる。その子は1月から“メグミルク”が発売されたのを知って、これから大いに愛飲するんだと張り切っていた。
 「雨降って地固まる」というが、「自然からお客様までミルクコミュニティを育み、明るく健やかな暮らしに貢献します」との理念の下に、系統に縁の深い全国農協直販、ジャパンミルクネット(全酪連)、それに雪印乳業の市乳部門が統合してできた新会社日本ミルクコミュニティが発売したメグミルク。その名にふさわしく、今後の恵み多かれと祈る次第だ。
 さて本題に入ると、「なぜ牛乳が?」の第1問。
 人間も含めて全ての哺乳動物は、哺育のために雌は産後一定期間乳を出す。生まれた子(仔)は、乳だけ飲むことで立派に育つので、乳は完全食品と呼ばれている。
 大人ですら、アラビアの砂漠地帯では、半年間もラクダの乳だけで隊商の旅を続ける。
 さて、哺乳動物の乳といっても、彼らの生長速度、生息環境はまちまちなので、それに応じて乳の組成分も異なっている。
 そこで学者の研究を引用してみると、まず生後体重が倍になる日数と、乳組成中のタンパク質の割合は、人180日(1.6%)、牛47日(3.5%)、犬9日(7.4%)と生育速度の速い動物の乳ほど組成中のタンパク質が多い。
 次に生育環境の違いによる組成分中の脂肪の割合を比較してみよう。I型・有袋類のように絶えず授乳ができるカンガルーは3.4%と低い。II 型・子(仔)がかなり成熟した状態で生まれ、親と一緒にいる時間も長く頻繁に授乳できる人間は3.8%、チンパンジー3.7%、牛も3.7%とこのタイプも脂肪分が少ない。
 III 型・仔を隠れ場所に残し、ときたま授乳に戻る動物たち、鹿は19%、インパラは20%と高くなる。それと似たIV 型・未熟な状態で生まれ、長い間巣の中で過ごすが、授乳が親の都合に左右され勝ちな野生の犬は13%、ウサギも18%と高い。
 最後のV 型の水棲動物のイルカは27%、クジラは42%と脂肪分の含有率がクリームチーズ並になっている。
 以上のように哺乳動物の乳といっても、その組成割合が大変異なっているので、人間が自分勝手な都合で、他の動物たちの乳を失敬するにしても、どの動物でも良いとはいかない。
 人間は長い歴史の中で、自分達の住む気候風土に適応した乳牛を始め、水牛、やぎ、ラクダ、馬、ろばなどの草食動物を飼育し、それらの乳を飲んできた。
 それらの乳に共通しているのは、組成分が人間の母乳に近いことのようだ。その中で、大方の文明国では乳牛を育て、その乳を加工し飲みかつ食べている。日本もその国の1つだ。
 次に「なぜ牛乳が?」の第2問。最近の新聞に「牛乳も農薬」との記事が出た。
 昨今、無登録農薬を使用した内外の農産物が市場に出回り問題となったが、それを受けての農薬取締法の改正で、無登録農薬の使用に罰則を設ける一方、無害な資材を「特定農薬」に指定することで罰則なしに使用できることとした。
 その指定作業の過程で政府は防除策として使用されているもの740項目を集めたが、その中に牛乳を始めアイガモや米ぬか、酒、ビールなども入っていた。それが「牛乳も農薬」の見出しにつながった。
 農業資材審議会などが検討の結果を、1月30日に農水相などに答申したが、いま挙げた品目は指定を保留された。そして薬効をうたって販売すると取り締まりの対象になるが、農家が個人的に使用するのは構わないとしている。
 法律は罰則を伴うことが多いので、用語の厳密化が求められるが、農作物の病害虫対策に使われるもの即「農薬」という定義づけは一般人の常識とはかなり離れている。
 そうであるならば、さかんに化学薬品を用い、アブラ虫などを見つけ次第押しつぶす人間こそ、病菌や害虫にとって最大の敵、即農薬となってしまう。 (MMC)  (2003.2.13)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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