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コラム
大宇宙.小宇宙

私はお米


 私の名前は「米」。米は「アメリカ」とか「メートル」の意にも使われています。アメリカの当て字が亜米利加、メートルの当て字はフランス語のMetre=米突のなかの一字が選ばれて、「米」となりました。
 残念なことに、最近の新聞を見ると、米はもっぱらアメリカの意味で、一昔前、米価問題などで、私が新聞の第1面をしばしば賑わしたことを想い浮べると淋しい気持ちになります。
 私は籾殻を取り去った稲の子実ですが、昔の人は私ども稲や米を神事に欠かせない飾り物、供物として崇めてきました。
 というのも、古代日本を豊葦原之千五百秋(ちいほあき)之瑞穂之地とよびました。高天原にいました天照大神が長田で栽培したイネを天孫に持たせて、この国に遣わせたからに他なりません。
 神話時代のお話はこれくらいにして、もっと身近な20世紀の100年間に私の運命がどう変わってきたか下表を見ていただきながらご説明しましょう。


 20世紀の最初と最後、それに中程を二つばかり、つまり33年間隔での4時点を選んで、私の運命の変転ぶりをご紹介します。
 まず、生産者米価(1)を見てください。1俵(60キロ)当り、3円76銭だったものが、100年後に15,528円と、実に4130倍にも上昇しています。これは敗戦の結果の超インフレによるものです。
 したがって、消費者物価戦前基準(昭9〜11)で、実質値に換算してみると、(2)でお分かりのように最近(D)の米価は8円34銭となり、4時点中もっとも高かった66年(C)の15円38銭に比べると、ほぼ半分の水準で私の評価は大幅に下がっています。
 次に作付け面積(3)を見ると、人口増加に伴って、200万ヘクタールだったものが、中程で300万台に増えています。その後、生産調整で100万台に減り、中程ころに比べて半減しています。
 一方、品種改良や病虫害対策の進歩を反映して、10アール当りの収量(5)は、(A)の225キロが(D)では515キロと倍増しています。その結果、たとえば100年前の作付面積282万ヘクタールに対し、現在は179万ヘクタールと6割台なのに、収穫量は621万トンが917万トンと1.5倍にも増えています。
 このような生産状況と裏腹に、年間一人当りの消費量(6)は、100年前の138キロが、いまでは65キロと半減しています。これを反映して一人一日熱供給量(カロリー)(7)中の米の割合は、33年の76.4%から99年には24.2%となり、戦前には全カロリーの実に4分の3が「ごはん」で支えられていたものが、いまでは4分の1と低落しています。
 「ごはん」は副食やパンやラーメンと同列の選択肢の一つになってしまったのでしょうか。生活スタイルの洋風化や贅沢になった分、ついあれこれと手を出してしまい、結果として私が皆さんの胃袋に入る量も、減ってしまったと言えましょう。
 でも全中さんが各地に展開している「お米ギャラリー」の盛況ぶりを見ると、なんだかほっとします。生産者の皆さんが努力して作っておられる「おいしいお米」や、調理方法の工夫などで、お米も復権の兆しがあります。「米」の字には「母」と言う意味もあります。そうです私こと「米」は日本人にとって、永遠に食べ物の「母」ですものね。(MMC)  (2003.4.4)


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